小説の資料+10 生物毒、特にヘビ毒とヘビの生態
[HL:よく毒が使われるけどさ、毒っつってもいろいろあるわけ]
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1.お品書き
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
本話は主に別所で書いている学園ホラーの関連資料です。そっちは主に蛇怪異なので今回は主に蛇。そのうち児童向けに書き換えて持ってくる予定、多分。それから科博の鳥展で鴆が来てるっていう話でさ。中国の歴史の話関連で鴆毒を少し。でも僕の話では明確に書いたのは商業BL版の方かも。リンクは末尾に貼りますので、もしご興味ありましたらお読みください。
そういえば今アルファのキャラ文で展開しているデスゲの主人公の一人も毒使いだな。そっちは生物毒じゃないけど。旧日本軍ベースできい剤とかみどり剤とか使う。わりと毒は好きかもしれない、というか卑怯戦がすき。
このエッセイは小説を書くのにあたって、色々調べたところをブッパするお気楽エッセイです。にわかなので間違いが見込めますので、発見された方はお気軽にご指摘くださいませ。
2.生物毒とは
とりあえず、生物由来の毒は生物毒という。
そもそも毒とは何かといえば『生命活動に芳しくない影響を与える物質』と定義されるけれど、コペルニクスが「すべての物質は有害である。有害でない物質はなく、用量に依って毒であるか薬であるかが決まる」と述べる通り、その分類は素人では困難だ。
ところで毒物及び劇物取締法で「毒物」とは別表に載っている物のなかで医薬品等以外のものを指す。その別表では水銀やヒ素をはじめとした主に鉱物等に由来するもので、基本的に生物毒は含まれない。だから保管の問題はさておき、法律的に生物毒を持ち歩いても大丈夫なのかが気になっている(凶器として)。今回のメインは蛇なので、植物系と鉱物系の毒は除くことにする。
さて、生物毒といえば蛇ではマムシとかハブが有名だけど、あとはハチやフグ、カエル、貝等。毒を持ってる奴らは多い。
生物毒には主に二種類あり、身を守るための毒と、狩りをするための毒だ。
基本的には毒はpoison、つまりポイズンと呼ばれるけど、そのなかでも生物由来のものはtoxinトキシン、その中でもハチ、ヘビが典型の毒腺で作られるようなものは特にvenomヴェノムと呼ばれる。Wikiを見ると少し違う書き方がされているので、分類方法は色々あるのかもしれないが、ともかくポイズンの中にトキシンが含まれ、トキシンのなかにヴェノムが含まれると考えるとシンプル。
トキシンというとふぐ毒のテトロドトキシンが一番有名だ。では最初はトキシンとヴェノムの違いの話。
3.トキシンとヴェノムの違い
フグ、ヤドクガエルや貝毒など、自分の身を守るための毒を持つパターンの生き物のだいたいは、自分で毒を生成しているのではない。
自然界の有毒なバクテリアやプランクトンを食べて自己の体内で生物濃縮させるパターンが圧倒的に多い。フグ毒は体内で発生はしているんだけど、これも体内のバクテリアが二次生成してるだけだから、フグ自体が毒を作ってるわけじゃない。だから養殖の無菌のフグは毒を持たない。
フグはなんで自分の毒で死なないの? という疑問をたまに見るけれど、フグは毒の影響を受ける受容体を変質させて対処している。たとえばテトロドトキシンは神経や筋肉を動かすナトリウムチャネルに結合し、本来流れるべき信号を阻害して動けなくする。そこをフグはこの受容体がテトロドトキシンに反応しにくいように進化した。
でも反応しにくくしてるだけで、フグでも高濃度のテトロドトキシンに漬けると死ぬけど。基本的にトキシン系列の毒を持つ生物は、その毒性が他人の受容体には効果はあるけど自分には反応しないようにする、という進化を遂げる。
これに対してヴェノムは簡単に言えば狩をするための毒で、ヘビ、ハチ、クモ等が自分で作ってる毒。生殖器や消化腺から発達したタンパク毒や、自分の機能を発達させて毒を作ることが多い。
さて今回のメインの蛇毒の話をする。
蛇が持つ毒は、主に神経毒、出血毒(筋肉毒、溶結毒含)に分けられる。
神経毒はイオンチャネルに作用し、神経伝達を遮断する。そうすると筋肉が動かなくなり、呼吸や心臓の拍動が止まるから死ぬ。致死性は結構高い。速やかに体内に浸透するため、速攻救急車呼ぶしかない。コブラとかは神経毒がメイン。
一方、出血毒は痛い。簡単に言えば分解酵素で獲物の血中タンパク質を分解し、細胞を破壊して壊死を引き起こす。血が止まらなくなる場合もあるけど、蛇によって毒の性質はかなり異なるので、一概には言えない。全体的には組織を溶かすというイメージが適切か。死ぬ確率は神経毒より低いけれど、筋肉が壊死するし高度障害が残ることが多い。日本にいるマムシとかハブ、ガラガラヘビの毒が出血毒傾向だ。
蛇の中にはピット器官というものを持つ種類がある。これは鼻っぽいところにくぼみがあって、そこに赤外線を感知する機構がついている。蛇なら必ず持っているものではなくて、ボア亜科、ニシキヘビ科、マムシヘビ亜科だけ持っている。
それでピット器官を持っている奴は強い出血毒を持っていることが多い。といっても強い毒を持つものほど複数の毒を持つから、神経毒も持っていて、得意な割合が違うという話だ。
4.ヘビ毒を使ってみよう。小説で。
最初に考えるのは毒の種類だ。
出血毒と神経毒、どちらを使うかは悩ましいけれど、適当に毒を使ってみたことにする。ぎゃー。
そんなわけで目の前に人が倒れています。次にどうするべきか。
そういえば昔の映画で蛇にかまれたところに口をつけて吸い出すシーンがあるけれど、あれは今はやっちゃだめです。絶対ダメ。
ヘビは毒を噴射するんじゃなく、牙から毒を体に深く注入する。かまれた時点で毒はすでに体内に回ってるから吸いきれるものではないし、吸った人にも毒が回る可能性がある。
対処としてはきれいに洗って、かまれた部位を心臓より低く位置して毒が回るのを防ぐ。他に手立てがないのでじっと救急車が来るのを待つしかないな。
ドラマで「血清だ」とかいってその辺のおっちゃんが謎の薬を持ち出すことがあるけど、蛇毒は蛇によって中身がかなり違うから怪しいものは摂取してはならない。
縛るべきかどうかについては最近では縛らない方向な気はする。
神経毒はまわりが早く呼吸困難になる可能性があるから心臓近くで縛ったほうがよいかもしれないが、出血毒は毒が傷口に留まることによって壊死が早まる。どのみち適当に血流を保持しなければ壊死するけれど。どっちの毒、という以前に蛇の区別が素人判断では難しいからとりあえずサバイバルのプロでもいなければ救急車を呼ぼう。
そういえばヤマカガシという蛇は昔は毒がないといわれていたけど、現在は毒があることがわかっている。動物というものは例えばキタキツネのエキノコックスのようにそれ自体に毒がなくてもヤバい菌や虫を有していることも多いので、野生のものには触れない方が無難です。
クモ毒やサソリ毒は別の機会で使うかもしれないから、とりあえず今回は蛇特化。
ついでに蛇について補足。蛇毒を使うのに蛇を捕まえに行くかもしれないし(お前は何を言っている。
蛇に特徴的な器官というとヤコプソン器官か。蛇の舌は二股にわかれ、チョロチョロと動かしている。あれは舌で臭いを嗅いでいる。二股にわかれてるのは、目が2つあるのと同じように、方向を時間差で確認するためらしい。それで大気中の化学物質を舌で捕獲して口の中にある鋤鼻器にくっつけて臭いの種類や方向を判断する。厳密には複嗅覚といって嗅覚とは違うようだけれど、蛇の主嗅覚はフェロモン受容体のようだから、ヤコプソン器官が嗅覚っていってもいいような気はする。ヤコプソン器官は進化の過程で哺乳類ではフェロモン受容体になったようだ。
ちなみにい蛇は基本的に視覚はない。ただ聴覚が優れている。鼓膜はないんだけど、体表面の振動でかなり敏感に察知してるっぽい。骨伝導みたいなかんじかな。
5.その他の特徴的な毒
ヘビ毒についてはそんな感じなのだが、他の毒と毒の小説による扱い方について少々。
昨年『毒矢の文化』という本を読んだんだけれど、毒を武器として使用するにはその毒を採取できる環境を整えなければならない。たとえばアジアの毒矢は北緯20度を教会として北はトリカブト、南はイボーに分かれるそうだ。
とはいえ僕はさほど毒の地域性に詳しい訳では無いので書くなら調べないといけない。場所によって温度や湿度、植生が違うから生息する動物も異なるよね。
最後に鴆毒について。
鴆毒は中国や日本で古来より皇帝や貴族を殺していた伝説の毒で、無味無臭で水溶し、鴆の羽を酒に浸して用いる。銀にも反応せず防ぎようのないものとされる。和漢三才図会によると鷲ほどの大きさで緑の毛、銅色の嘴を持ち毒蛇を主食とするので体内に猛毒を持つとする。色はバリエーションがある。
中国の南北朝ごろまでは禁令(長江以南にいた鴆を長江より北に持ち込ませない等)が出ていて実存したようだが唐以降絶滅したとされていた。しかしほんの二十年ほど前にニューギニアのピトフーイのうちズグロモリモズの筋肉と羽毛からステロイドアルカロイドのホモバトラコトキシンが発見された。真っ黄色のモウドクフキヤガエルと同種の毒で、神経毒である。色味は史書に記された鴆とは異なるが、この羽を酒に浸せば無味無臭で人が殺せる。羽一枚で成人男性を殺せる毒性は有しているそうだ(出典は忘れたのでいまいち自信はありませんが)。
鴆が見られなくなった唐代(日本では室町)では地球は寒冷化していて温度が下がっていた。それに長江以南に生息していたとされる鴆は絶滅し、よりあたたかい地方にいたピトフーイの類が残っているのではないか(推測の域はでないけど。
6.おわり
毒というのはなかなか興味深いものだけれど、ただ『毒』とという表現だけでは『バールのようなもの』なんかよりも更に情報が薄いのだ。このへんの毒の性質を全面に出したミステリなんかを書きたいなとは思うのだけど、なにせ人体に応じて毒の効きようが違うものだから、あまりに詳細にするとドツボにはまる気がしてて実は難しい。
これをマジでやったのがトリカブト保険金殺人事件で、アコニチン(トリカブト)はNa+チャネルを活性化させテトロドトキシン(フグ毒)は不活性化させるという相反する作用をもち、同時に服用すると片方はバク上げして片方はバク下げするから拮抗作用がおこり、一見毒が効いていないようにみえる、ことがあるらしい。半減期の違い(テトロドトキシンのほうが早く消える)で拮抗作用が崩れたタイミングで死ぬというアリバイトリックをはかったのだけど、この人はどうやってそのタイミングが正しいと信じられたのか……強い。でも大量のトリカブトとクサフグを買うとかそれ以前に気を配れよと思った。ぽんこつにすぎる。
単純に致死量の毒を盛るか、矢ででも射殺したほうが楽だよなと思ってそんなデスゲをかいてるわけで。
年末年始はちょっといろいろあったり体調崩れたりしていて本が読めなかったので本雑綱目のストックが全然ありません。こまったね
ではまた。
宣伝も兼ねてリンクを張っておきます。鴆毒使った気がする?
全部で28000字Ver.
