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本雑綱目 25 小長谷正明 医学探偵の歴史事件簿

 これは乱数メーカーを用いて手元にある約4000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

今回は小長谷正明著『医学探偵の歴史事件簿』です。
岩波新書の978-4004314745。
NDC分類では歴史>世界史. 文化史に分類しています。

1.読前印象
 医学も探偵も歴史も大好物なので、結構期待。日本史じゃなくて世界史・文化史に分類しているので、歴史的な死人について実はヒ素中毒で死んだみたいな話だったりするんだろうか。ラスプーチンの死体が腐らない理由とかそういうの。
 はりきって開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック
 著者はシャーロキアンっぽい。歴史上のエピソードを医者の目で通して見た事件簿と書いてあるので、方向性としては珍しく予想通りな気はする。
 1章は『二十世紀世界史の舞台裏』として近代の事件、2章は『近代日本史の曲がり角』として明治から現代の日本の歴史に関する医学事件、3章は『医学を変えた人々』として医学の発展の貢献した人物紹介、4章は『王と医師たち』として王家の医療について、5章は『いにしえの病を推理する』として古代の事件について記載されているもよう。どれも興味深い。
 2章から『三島由紀夫の筋肉』、4章から『皇女アナスタシアの青い血』、5章から『鈴鹿に逝きし人倭健命』を読んでみようかと。

3.中身
『三島由紀夫の筋肉』について。
 ……これは近代日本史で著名な医学事件というよりは著者に印象深かった事件では。
 ボディービルによって三島由紀夫は筋肉をつけたけれど、彼が切腹した理由はわからない、という内容。思ってたんと違う。ボディービルによってつく筋肉が白筋だとか三島由紀夫は若い頃の兵役検査に落ちたのを気にしていたとか、ぱらぱらと様々なことが書いてあるけれど、テーマが不明瞭で散らばっている散文感。
『皇女アナスタシアの青い血』について。
 アナスタシアの血が青いわけではなくて高貴な血をブルーブラッドと呼ぶわけだが、ロマノフ家の血友病の話とか後に出てきたアナスタシア皇女がDNA鑑定の結果的にどうかとかそういう話で、新規性は特にはないな?
『鈴鹿に逝きし人倭健命』について。
 古事記には色々バージョンがあるものだが、ともあれ伊吹山で雷を受けた倭健命が熊煩野で死んだのはギラン・バレ症候群ではないかというのだけれど、これも外形的に当てはまりうる症状があるという程度にすぎなくて、確定診断(まあ神話だから無理だけど)が可能なほど情報を煮詰めた帰結だとも思えない。今から考えれば単純に想定しうる範囲内なので探偵というには些か調査実態がないような。
 この本は総じて、おおよその部分が◯◯の秘密!やら検証◯◯!とかでよくテーマになりそうなものを取り上げ、医学検証といってもざっくりとしたもので新規性がないため、これ系の胡乱な情報が好きな輩はだいたい既知の範囲に留まる気がする。医学情報といってもそれほど新しい知見でも検証でもなく、当然考えられそうなものにとどまるので探偵的な驚きもない。でもこういう話に縁がない人にとってはネタとして面白いのかもしれない(そしてそれがきっと大部分の読者層だ)。
 小説に使えるかだけど、これをベースに歴史ミステリを組み上げるとしたらちょっと浅すぎるので、独自検証と一捻りは必要と思う。ネタ探しとしてはアリかもしれないけれど、どれもそれなりに有名な話なような気がしなくもない。

4.結び
 期待値が大きすぎた気がする。こういう好物の塊みたいなのに期待をしすぎてはいけない。でもやっぱり探偵というほど探偵してないと思うけど。
 次回は山田慶兒著『中国医学はいかにつくられたか』です。
 ではまた明日! 多分!

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