【短編小説(短編連作)】辻切区のどこか奇妙なXmas 8 リースを鰯の頭に刺す 1000字
[HL:類感呪術の逆張りだ]
「よし。仕方がない。クリスマスを排除する。俺は引きこもるぞ」
そう呟けば、奈美子はムンクの叫びみたいに頬を両手で覆った。大げさな。この常駐してるクウェスの奥まった席に引きこもるだけだ。幸いにもこの喫茶店は繁華街のどん詰まりで、それほどクリスマスは押し寄せてこない、だろう。去年は入口にトナカイやツリーをディスプレイしていたが、あれはただのオブジェで光る木だ。
そう認識しようとすればそれはそれでつまらなく、酷く不毛な気分になってくるが、実際そうなのだ。あのトナカイが動いたりツリーめがけてサンタが降って来ることもない。そして俺はそれを信じない。
「それじゃクリスマスじゃないじゃないですか!」
「ブッシュドノエルをお前が一人で食うならいい」
「嫌です! 一人で食べられるわけないし」
いずれほとんど一人で食うくせに。今もチーズスフレを2つとも食っている。そのこと自体は構いやしないが、どうも相矛盾する言葉を無自覚で吐くという行為自体が気持ちが悪い。
「じゃあ少しずつ意味をずらそう」
「意味を?」
「ああ。ひいらぎでリースを作る」
「いいですね!」
「それを鰯の頭に刺す」
「節分じゃないですか!」
クリスマスじゃなく節分だと思えばいい。幸いにも使うのは同じヒイラギでも、赤い実をつけるセイヨウヒイラギではなく葉が尖った普通のヒイラギだ。同じ名前のもので上書きすれば、呪術的には区別が明確になる。
「まさかツリーの代わりに門松を出すなんていわないですよね!」
「お、それいいな。時期も近いしばっちりじゃないか」
「嫌です! 絶対嫌です! もう一声! 環さんはクリスマス拒否なのは諦めますけど、私はやりたいんです、クリスマス!」
飾る、木、うーん。ああ。
「じゃあ左義長はどうだ」
「左義長? なんですかそれ」
奈美子は目を丸くする。都会では見なくなって久しいからなぁ。
「どんと焼きともいう。神社の山で拾ってきた木や門松とかを小正月に燃やすんだよ。それっぽくごまかしてツリーっぽくディスプレイしよう。お前の目にはごまかせるように」
「……それ、焼くんですよね」
「厄除けだから当たり前だろ。ユールは年明けの公現祭、1月6日までログを燃やし続けるから時期的にも丁度良く意味を有耶無耶にできる」
奈美子は頭を抱えた。仕方がないだろ、始めたのはお前なんだから。そして奈美子には何の悪意も影響もないことに思い至る。
to be Continued
説明が足りないなぁと思いつつ字数だしなぁという問題。後でなおそう。

★次の話
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ひいらぎ
おじゃましますー。なるべく毎日、智ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
★似た系列の話
これもともちゃんが幽霊に絡まれる話。幽霊に絡まれ続ける。
