【短編小説(大喜利ホラー)】呪われた橋 1200字
[HL:丑三つ時、街アプリで見つけたホラースポット、硯橋を訪れ、ようとしていた]
突然現れた亀裂のような谷間から、ビョォウと強く冷たい風が吹き上がって俺の前髪を揺らし、思わず後ずさりした。
目の前には心もとない蔦製の幅1メートル弱の橋が風に煽られ、ギシギシ不規則に揺れている。ゴクリと喉が鳴る。震える足を踏み出そうにも蔦の隙から垣間見えるその断崖の闇に一歩が決断ができない。
背後でがさりと音。一瞬忘れていた恐怖が再燃し、背中が硬直する。まずい、早く渡らないと。けれども、目の前に横たわる橋の恐怖。
籠屋山山中の硯橋。
街アプリのホラーちゃんねるでもこの橋は3つの理由でヤバいと有名だ。
1つ目は物理的にボロくて渡れば崩れ落ちそうなこと。
2つ目は橋の先はヤクザの私有地で、ヤバい目的で使われているという噂が実しやかに流れていること。渡れば何をされても文句を言えない。どころか橋の先に監視カメラがついてて、立ち入れば拉致られるという噂まである。
けれども背後からはもっと直截的な恐怖が近づいてくる。
俺は肝試しで硯橋に行く途中でソレに引っかかったんだ。カンと乾いた音に思わず茂みを振り返れば、頭に蝋燭をさした女と目が合った。一瞬互いにぽかんとして、俺は脱兎のごとく逃げ出した。
こんな道からすぐの所でまさか藁人形打ってるとは思わないだろ。藁人形は途中で見られれば効果が自分に帰ってくるのは常識だ。だから人に見つかれば殺さないといけない。けどだって、普通はもっと奥で打つだろ、常識的に! 確かに丑三つ時だけど、ここはホラースポットだぞ! 一番人が集まる時間じゃないか!
酷く動転して思わず進行方向、つまり橋の方向に駆け出したのがついさっきだ。
そして今も確かに、背後の道から走り寄ってくる足音が聞こえる。男女差で距離を取ったと思っても止まれば追いつかれるのは自明の理。まずい。逃げるには先に進むしか無い。背中に滝のような汗が垂れる。
どうしたらいいんだ! まさに前門の虎、後門の狼。
けれどももう、選択肢は既にない。藁人形の女は当然ハンマーを持っているだろう。俺は武器なんて何もない。足元を見渡してもヤクザが掃除でもしているのか、木の枝すら落ちてない。
……渡るしかない。乾いた笑いが口から漏れた。
ヤクザでも何でも、他に道はない。ヤクザの前に、女に殺される。
震える膝に命令し何とか一歩を踏み出せば、蔦はギィとしなりつつ、思いの外しっかりしていた。勢いに任せてオタオタと慌てて真ん中ほどまで進んで渡り振り返る。女は橋の袂で足を止めた。ヤクザの噂を知っているのかもしれない。
このまま朝まで膠着できれば渡らずにすむ。
胸をなでおろした瞬間、足首に違和感。
見下ろせば、足首を掴む腕。
忘れてた、この橋の3つ目の呪い。橋の途中で足を止めてはならない。何故なら橋を渡ろうとする者を谷底に引きずり降ろそうとする女がいる。
どないせいいうねん!
Fin
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ホラーコメディな感じ。
神津地図。
駕籠屋山は新夜坂町にありますう。

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