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VPoE対談 part2|衛星データを社会へ届ける。宇宙業界で働くWebエンジニアの仕事

天地人は、2050年にも持続可能な地球環境を目指して活動するJAXA認定ベンチャーです。宇宙ビッグデータをWebGISサービス「天地人コンパス」で解析・可視化することで、まだ誰も気付いていない土地の価値や地球の資源を明らかにするサービスを提供しています。


私たち天地人は、衛星データを活用したサービスを展開する“宇宙ITベンチャー”です。

出典:BUSINESS INSIDER(https://www.businessinsider.jp/article/238751/

事業拡大に伴い、現在各職種での採用を積極的に行っているのですが、応募を検討されている方の多くが宇宙業界未経験者です。特にWebエンジニアにおいては、「宇宙×ITってどういうこと?」「衛星データの知識は必要ないの?」といったことが毎回のように質問されます。

そこで、先日VPoE(Vice President of Engineering)に共同就任した、アプリケーション開発部・フロントエンドエンジニアの白井さんと、バックエンドエンジニアの高瀬さんに、宇宙ITベンチャーで働くリアルについて語っていただきました。

VPoE プロフィール

・白井 康雄 / 福島県出身

小学生でプログラミングを始める。高校生の頃にApple製品の背後にある哲学に感動し、真に使いやすいソフトウェアの探求をキャリアの軸とすることを決意。新卒で入社した株式会社ビービットではWeb広告管理システムの開発や新サービスの立ち上げに従事。弁護士ドットコム株式会社ではUXエンジニアとしてユーザーリサーチやコード品質改善に関わる。医療系企業を経て、2024年7月に天地人に入社。

・高瀬 賢二 / 東京都出身

Jazzギタリスト、ボウリング場社員といった20代を経て、30代で医学系翻訳会社に入社。法人営業を経験後、社内SE(開発 & 情シス)となりエンジニアとしてのキャリアに転向。2019年より株式会社レトリバに入社。「分析AI YOSHINA」の立ち上げから開発メンバーとして参加し、v1.0リリース後はインフラチームを立ち上げ、サービスの成長を支える。地球環境やサステナブルな社会に向けた取り組みに惹かれ、2024年3月に天地人に入社。

※VPoEに就任されたおふたりの対談・第1弾はこちら

越境するエンジニアチーム。WebとAI解析の連携

――天地人では「エンジニア」が属する部署が2つありますよね。どういった組織構成なのでしょうか。

白井:1つは僕らが所属している「アプリケーション開発部」というWebエンジニアのチームです。一応フロントエンドとバックエンドで担当が分かれていますが、お互いに領域を越境して協力しています。

僕がバックエンドのPR(プルリクエスト)を出すこともあるし、高瀬さんがフロントエンドのPRを出してくることもあります。境目はありつつ、柔軟にやっている感じですね。

――もう1つは?

白井:もう1つは「衛星リモートセンシング&AIソリューション部」です。衛星データの解析やGIS(地理情報システム)、AIなどのエンジニアメンバーが在籍していて、通称・SatAIチームと呼ばれています。

高瀬:2チームは職種もスキルも違うし、カルチャーもちょっと違います。でも小さい会社なので、距離はすごく近くやっているのが面白いところです。

――カルチャーの違い、というと?

白井:僕たちのチームはアジャイルでのプロダクト開発をしていて、スプリント単位で、とにかくユーザーのための機能を作るということをインクリメンタルに回しています。

一方でSatAiチームでは、お客様や社会の課題を解決するべく、宇宙ビックデータとAIを活用した分析技術を開発し、サービスへとつなげています。あとは、大学の研究室などアカデミックな機関と連携し、最新技術のキャッチアップを行っていたり、共同研究を行うこともあります。

――開発しているプロダクトについて詳しく教えてください。

白井:プロダクトは複数あります。まず「天地人コンパス」というアプリで、衛星データやオープンデータから得られた気づきやインサイトを視覚的に表示できます。具体的には、地表面温度や地盤変動、夜間光などの情報を、地図と重ね合わせて見ることができます。

そこから派生したプロダクトとして、今の主軸となっているのが「宇宙水道局」です。水道管の老朽化リスクを診断し、「漏水の危険がある水道管はどこか」を見える化します。ユーザーは自治体などの水道事業体で、「宇宙水道局」によって、どの水道管を優先的に調査すべきかや、水道管の更新計画の立案にお役立ていただけます。

また、実際に水道管の調査を行う際、「この水道管を対象に今回は調査しました」「実際に漏水してました」といったことを記録するDXツールとしての側面もあります。

――「宇宙水道局」の開発において、エンジニアチーム間での連携はあるのでしょうか?

高瀬:僕は結構、SatAIチームのデータ処理をするメンバーと関わります。AIのコードリポジトリをきれいにする手伝いをしたり、解析処理の前段階のデータ加工部分の自動化を進めているので、連携することが多いです。

白井:アプリケーション開発部が衛星データの中身や解析アルゴリズムを直接いじることはないんですが、ユーザーが使えるようにするためのアウトプット部分の開発を担っている感じです。

Webエンジニアとしての役割は、SatAIチームが解析したデータを標準化して、プロダクトにつなげていくことだと思っています。

彼らのパスを受け取ってゴールを決める、“ラストワンマイル”のイメージですね。

生成AIもフル活用。デベロッパーエクスペリエンス重視の技術選定

――技術スタックについて教えてください。

白井:フロントエンドではTypeScriptやReact、ビルドツールはViteなど、最近のモダンな技術を使っています。
生成AIはめちゃくちゃ活用していて、いちばん使っているのはClaude Codeですね。これ以外にも、ChatGPT、Devin、GitHub Copilotなどを積極的に使っていて、デベロッパーエクスペリエンスにもかなり力を入れています。

――バックエンドはどうですか?

高瀬:基本的にはPythonがメインストリームです。 Webフレームワークとしてはdjangoを採用しています。データベースがPostgreSQLなので、地理空間データを扱うのにPostGIS拡張とGeoPandasの組み合わせは、レガシーですがやはり扱いやすいですね。

最近はRustを使う機会もあります。解析実務をやりやすいのはPythonなんですが、カリカリに速度を求めたい時はRustを使う、というフローができつつあります。

白井:Rustは結構最近、開発者の人気がすごく高いプログラミング言語で、実際に本番環境で使っているというのは魅力ですよね。

高瀬:プロダクト開発でRustを積極的に使うには、学習コストがかかることもあってまだハードルが高いんです。一般的なWeb APIのやり取りだったら、JavaScriptでもPythonでも十分なんですが、どうしても速度を優先させたい時は、Pythonに拘らずにRustなども使っていきます。

ですのでチームの共通技術として、Rustはもう一段階解像度を上げていこうと思っています。

インフラに関しては、現状はAWSを基盤にし、Kubernetesに載せて運用しています。ただ、今後のグローバル展開を見据えてAzureや他のクラウドにも展開できるようにしています。このために、“Infrastructure as Code”という考え方で環境をコード化し、コアなプロダクトはコードで管理しています。

――グローバル展開についても、開発の初期段階から意識しているんですね。

高瀬:宇宙水道局は、現状日本の水道事業体向けが中心ですが、アジアなどでもPoCが進んでいます。開発している中でも多言語対応についてよく話があがるので、「それって日本特有の機能になっちゃいませんか」「この地域は衛星データが取れないですよね」という議論になることもあります。

白井:「宇宙からは、国境線は見えなかった」という宇宙飛行士の言葉がありますが、まさにそうだなと。普通のビジネスは国内シェアの話になりがちですが、衛星データは地球まるっと見られるので可能性があります。

高瀬:技術的にも国境線はほぼないですよね。AWSで海外のサーバーに展開するのはノーコストでできますし、AIが翻訳をやってくれるので多言語対応も楽になりました。ヨーロッパではAWSを避けたり、国特有の業務に合わせたカスタマイズは発生しますが、本筋は変わりません。Webエンジニアも国境関係ないんだなと、改めて思います。

宇宙の知識は不要。大切なのはワクワク感

――天地人は「宇宙ITベンチャー」を謳っていますが、宇宙や衛星データについての知識はどのくらい必要ですか?

高瀬:宇宙とか衛星に詳しくない人でも全然ウェルカムです。入社時点では全然知らなくても、「アプリケーション開発やりたいです」という意気込みがあれば十分です。

白井:きちんとユーザーリサーチをした上でユーザーに価値のあるものを届けていく、というプロダクトの基本的な作り方がわかっていれば問題ありません。

もし「宇宙」と聞いて少しでもワクワクするなって思ってくれたなら、ぜひその感情は大事にしてほしいですね。

――白井さんは社内でも有数の“宇宙好き”ですよね。

白井:はい、昔から宇宙が好きです。僕にとって天地人は4社目なんですが、最初の転職から宇宙業界で働きたいという思いがずっとありました。でも当時はWebエンジニアができる仕事なんてほぼなかったんです。

最近では、Webエンジニアを採用している宇宙系企業はいくつかあるんですが、社内向けの管理ツールや、人工衛星の運用のための管制画面の開発がメイン業務となっている会社が多いなという印象です。直接お客様に届くものではなかったので、自分のやりたいこととは離れるなというところもありました。

そしたら、天地人では、Web技術を使って衛星データの価値をお客さんに届けることができる。もう完全にバッチリ、Webエンジニアが活躍できるフィールドです。自分の中でベストフィットでしたね。

――高瀬さんはどういった経緯で入社されたんですか?

高瀬:エンジニアリングマネージャーを募集しているタイミングで声をかけてもらいました。宇宙に関しては、自然科学は好きだしワクワクするよねぐらいの、軽い気持ちでしたね。

前職でプロダクトを0→1で作る、1→10にするという両方の経験をして、フロントエンド、バックエンド、インフラすべてに携わったので、その経験値は宇宙だろうがなんだろうが、Webアプリなら同じだろうと思っていました。

開発はチームで動くし、プロダクトの展開に応じてチームも成長していく。そういう移り変わりを見ていくことは、Webサービス開発に関わる人にとって共通の体験です。僕のその感覚が、ちょうど天地人の今のステージにピッタリ重なったんです。

ものづくりの楽しさと、地球規模の社会課題への挑戦

――お二人にとって、この仕事の面白さはどこにありますか?

白井:純粋にものづくり自体が楽しいです。チームでアイデアを出し合ってユーザーの課題に立ち向かうのも、技術的負債を解消するのも楽しい。誰も使ってないものをバッサリ消したり、エラーを1000件から何百件に減らしたり。

あとは新しい技術に移行するとき、「今いちばんイケてる技術は何だろう」「組織の将来を見据えてこの技術を選ぼう」と決めていくプロセスも楽しいですね。最近入社されたフロントエンドエンジニアの菊田さんは「天地人のフロントエンド、めっちゃモダンな構成ですね」って言ってました。

高瀬:僕は生のデータが見られるのも楽しいですね。衛星データや水道管のデータを実際に触って、ドメインを手繰り寄せていく感じで、どんどん知識が広がっていきました。

入る前はGISも衛星データもわからなかったけど、今は専門の人たちと話せるようになっています。実践を通して育ってきたと感じています。

白井:それと、これは会社が掲げるミッションなのですが、「宇宙ビッグデータを使い 人類の文明活動を最適化する」という、とんでもないスケールのミッションに真面目に取り組めるのは大事だと思っています。
しかもそれを社長だけでなく、みんなが「俺たちは地球にいいことをやるんだ」というマインドなのもいいですね。

日本では「湯水のように使う」という慣用句があるように、水は当たり前に使えるものという概念がありますよね。でもそのインフラが今、財政や人手不足の問題で崩壊しようとしています。これはめちゃくちゃ深刻な危機です。

その問題に真正面から立ち向かって、100年先まで当たり前に続くような水道インフラを目指す。これは僕にとっては人生を賭けるに値する話だと思っています。自分の娘に対しても胸を張って言えるし、すごくやりがいを感じています。



宇宙ITベンチャーでのWeb開発は、特別なものではありません。これまで培ってきたWebエンジニアとしてのスキルと経験があれば、衛星データという専門領域と顧客をつなぐ「ラストワンマイル」を担えます。

そして日々のプロダクト開発の先に、地球規模の社会課題がある。“人生をかけるに値する”仕事として、宇宙業界は思っているよりもずっと身近にあるようです。

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