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😲 先輩

約40年前。
データ入力の会社に入社して数カ月後、私はNTTの仕事で宝塚局へ行くことになった。


 3人の先輩

キーパンチャーとして8人のグループが編成された。
同期入社から5人、先輩が3人いた。

リーダーとされた先輩は色っぽい人だった。
とにかく目線が色っぽい。
小首を傾げ上目遣いで見つめられると、同性の私でもドキッとする。

もう一人の先輩はいつも笑顔の人だった。
怒ったところを見たことがない。
雑談をしている中で
「こんなことがあってなぁ。ほんまに何でやねんって腹立ってん。ふふふ」
と最後にはいつも笑う。
私より年上ながらその笑顔はとても可愛らしく、その場の空気を和らげる人だった。

もう一人の先輩は、口数は少ないが決して陰気なタイプではなく、雑談にも応じる人だった。
ある時、私はこの先輩と2人だけで休憩時間に話しをしていた。

宝塚局の隣には当時、宝塚ファミリーランドという遊園地があった。
私も子供の頃から大好きで、何度となく訪れた遊園地だ。
その向こうにはタカラヅカ歌劇の大劇場がある。

先輩とタカラヅカの話しになると
「今度行ってみる?」
思いがけず先輩が誘ってくれた。

 タカラヅカ

タカラヅカ歌劇は私が小学生の頃、あの「ベルサイユのばら」ブームの時に行って以来である。
その時はオスカルが汀夏子さん、アンドレが麻実れいさんで、私には永遠のゴールデンコンビだ。

すっかりご無沙汰の私には、今は誰がトップスターなのかも分からないが
「はい!行きたいです!」
と二つ返事で応える。

先輩は慣れた感じで日時を決め
「チケットは◯◯円。当日でいいよ。待ち合わせは△△で」

と言われても私にははっきりと場所が分からない。
「大丈夫。人がいっぱいいるから、駅からみんなと一緒に歩いてたら着くよ」
慣れた感じで先輩は笑顔で言うだけだった。

当日は不安だった待ち合わせ場所も、先輩が言う通り、周りの人と一緒に歩いている間に到着した。
先輩が先に来ていてくれたのもありがたく、無事に合流できた。

私はチケット代をその場で渡し、先輩からチケットを受け取る。

「じゃ、行こうか」
やはり先輩は慣れた感じで歩き始める。

劇場の入り口まで続く道には、所々にヅカファンが開演時間を待っていた。

時々そのファンたちが先輩を見つけ
「おはようございます」
と姿勢を正して挨拶をする。
先輩は軽く片手を上げて会釈する。

___???

 先輩って

見ていると両者には上下関係がありそうな様子だ。
ヅカファンの中でも熱烈な親衛隊には上下関係があると聞く。

先輩に挨拶する人は劇場の入り口に近づくにつれて多くなる。

___そう言えば

この期に及んで、先輩との雑談を思い出す。
先輩が推しのスターさんの東京公演には、スターさんと同じ新幹線に乗車して応援に行くと話していた。
ただのファンではないのだ。

私はモヤモヤしながらも、聞くことをためらった。
また先輩も何も言わなかった。

そのまま何事もなかったかのように劇場に入る。
座席は驚くほど前のほうだった。

宝塚大劇場には、舞台と客席との間の地下にオーケストラボックスがある。
それと客席との間にエプロンステージ、銀橋とも呼ばれる演者さんの為の通路がある。
この銀橋から3列目のど真ん中。

私がベルサイユのばらで以前に訪れた時は2階席だったので、演者さんが小さなお人形のように見えたが。

やがて幕が開き、華やかな舞台が始まる。
まばゆいほどの光の中で、きらびやかなドレスが間近で揺れるのを、私は夢見心地で見入っていた。

そして舞台に組のトップスターが登場した時だった。
隣に座る先輩が、両の手のひらを目いっぱい開いて拍手をする。

パン!パン!パン!

その音は場内に響き渡る。
お芝居の際、有名な役者さんには大きな拍手が送られることを知ってはいるが、その拍手を隣で聞いたのは初めてだった。

周りのお客さんが一斉に私たちを振り返る。

先輩に誘ってもらってチケットまで取ってもらったタカラヅカだが、私は心の中でつぶやいた。

___私は他人です

   つづく

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