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出光美術館ファイナルはトプカプ宮殿との美の共演でした。

出光美術館、終わるってよ。

終わらないよ!

ただし今の建物(帝劇ビル)は建て替えのため、同じ景色を見ることは二度と出来なくなります。
最終日は12月25日。クリスマスの見納めなのでした。

工事は2025~2030年の予定か…スケジュール通りに建つといいな。

さて出光美術館はファイナルイヤーたる2024年、四期に分けて収蔵品ベストコレクション展『出光美術館の軌跡 ここから、さきへ』を開催してきたわけですが、有終の美を飾った展覧会はというと『トプカプ宮殿博物館・出光美術館所蔵 名宝の競演』
何でさ?
今年は日本・トルコ外交関係樹立100周年記念なのは分かりますが、栄えあるフィナーレがトプカピ宮殿の宝物というのは少しふしぎ。タイミング的な問題ですかねぇ
展示自体は面白かったので、つらつら感想書いていきます。


展覧会の概要

トプカプ宮殿博物館の収蔵品とは世界の宝物コレクションなのですが、今回は特に出光美術館の収蔵品と共通のスタイルを持つ陶芸品の出展が多く、全体の7割を占めていました。基本的には東洋の陶磁器の展覧会だと思って差し支えないレベル。ちなみにトータルの展示数は約100点。

展示は四章構成――『第1章 華やぐ宮殿の宝物』『第2章 中国陶磁の名品 東西交流の証I』『第3章 日本陶磁の名品 東西交流の証II』『第4章 色彩鮮やかなトルコのタイル・陶器』
第1章はトプカプ宮殿博物館とトルコ・イスラーム美術博物館からの品が大半。逆に第4章はすべて出光美術館の収蔵品です。第2・3章はトプカプ宮殿博物館と出光美術館の双方に収蔵されている東洋の陶磁器を比較展示しています。

ところで、トプカプ宮殿はオスマン・トルコ帝国の宮殿として名高いですが、トルコ・イスラーム美術博物館とは?

調べてみたらこの建物、元はオスマン帝国最盛期の皇帝スレイマン1世の忠臣であるイブラヒム・パシャの住居だったとのこと。スレイマン大帝の大宰相として仕えたものの、後に処刑されたイブラヒム・パシャ。一説にはスレイマン大帝に自身が献上した女奴隷ヒュッレム・スルタンとの権力闘争に敗れたのが原因だったとか。
ちなみに、このあたりの人物ドラマのドロドロは漫画『夢の雫、黄金の鳥籠』によく描かれていてえげつな オモロイ。


第1章 華やぐ宮殿の宝物

入ってすぐのエリアは宮殿の華やかな宝物ということで、イスタンブールのトプカプ宮殿博物館とトルコイスラーム美術博物館が収蔵しているオスマン帝国時代の豪華な宝飾品や工芸品が並びます。七宝細工小物や香炉、水晶のマグカップなどですね。

まずはこちら、16世紀の『バラ水入れ』をどうぞ。

『バラ水入れ』トルコ・イスラーム美術博物館収蔵
画像は撮影者Dick OssemanさんのHPより

バラ水とは薔薇の花びらを蒸して水分と油分に分ける(水蒸気蒸留)ことで得られる水分の方のこと。ちなみに油分は香水の原料となるローズオイルになります。
イスラム文化圏では古くからバラ水が上流階級の生活全体にエレガンスを添えてきました。このバラ水入れは金とトルコ石、ルビーでチューリップなどの花模様を描いたゴージャスな品。超高級バラ水筒というわけですね。

美しすぎてびっくりしたのは『水晶製蓋付カップ』などの水晶製食器シリーズ。大きな透明水晶をくり抜いて作った食器にルビーやダイヤモンド、大粒のエメラルドを配置。ゴージャス…!
出展物の良い画像が見つからなかったので、こちらのnoteを参考にどうぞ。贅を尽くした宝物は見ごたえがあります。


第2章 中国陶磁の名品 東西交流の証I

第2章では東西交流の証として中国陶磁の名品を紹介。特に14世紀頃の元時代の龍泉窯景徳鎮窯で作られた青磁の皿や壺がたくさん見れます。オスマン帝国の人は中国の陶磁器を愛好したらしく、そのコレクションは大変充実。もっとも、陶磁器に金銀ルビー、エメラルドを後付けでデコるオスマントルコ人のセンスはたまにどうかと思います。

参考画像:Chinese, reign of Emperor Hongshi (1488-1505) with Ottoman attachments, 16世紀
ルビーびっしりで魔改造された白磁。どうしてこうしようと思った…!?
画像は撮影者Dick OssemanさんのHPより

さて、この章で面白いのはトプカプ美術館と出光美術館両方の収蔵品の比較でしょうか。隣に並べてもほぼ同じデザインで、一揃いの器にしか見えない陶磁器が何組も並んでいます。かつて中国で焼かれた陶器の1つはトルコの宮殿に、もう1つは流れ流れて東京の博物館に入っているかと思うと歴史の変遷を感じますね。こうして兄弟陶器が横に並ぶのは奇跡の邂逅なのかも。

元時代の龍泉窯で作られた青磁の壺。右がトプカプ宮殿博物館所蔵品(15/672)、左が出光美術館所蔵品。画像は美術展ナビより

青磁の平皿の中には直径50cmを超えるような巨大なものもあり、いくら中国といえどもこのサイズの皿を作るのは相当なレベルだったようです。運ぶのも大変そう。
ところで、中国の陶磁器デザインには白地に藍色の線で唐草模様などを描いたものが存在しますが、解説によるとこのデザイン、14世紀ごろ突然現れたものとのこと。多分トルコなど西アジアから発注があって、向こうの好みに合わせて作られたデザインが定着したのではないかとのことですが、そうだとしたら面白いですね。

参考画像:陶磁器。このデザインはどこから来たのか…
画像は撮影者Dick OssemanさんのHPより


第3章 日本陶磁の名品 東西交流の証II

中国があれば日本もあるよ、ということで第3章は日本の陶磁器@トプカプ宮殿博物館所蔵品が並びます。2章の中国陶磁は14世紀ごろの品でしたが、日本の海外輸出用陶磁器は江戸時代に入ってからの生産が盛ん。東インド会社経由で購入されたと思しき古伊万里の色絵付け磁器がトルコの宮殿に置かれている写真がありましたが、見慣れた品が異国情緒たっぷりの室内に鎮座していて、なんだか不思議な感じ。

色絵蓋付瓶(古伊万里) 18世紀 トプカプ宮殿博物館、イスタンブル 15j/253
画像は出光美術館HPより

展示品は色絵付けの大皿が多く、前の章で見た中国の陶器に劣らぬ50cmを超える大皿が並びます。濃い藍色と朱色と透き通るような白の地がビューティフル。柿右衛門様式や古伊万里といった日本を代表するデザインがトルコのハレムで賞翫されていたと思うと、文化交流って面白いですねぇ。


第4章 色彩鮮やかなトルコのタイル・陶器

イスラーム文化圏といえば華やかな絵付きタイル! 高温乾燥地帯に面したイスラームの国々では、モスクや宮殿を飾るために鮮やかな色彩のタイルを昔から作り続けてきました。その精華はイスタンブールのブルー・モスク、イスファハンのイマーム・モスクなど、うっとりするような美しさ。

参考画像:イスファハンのイマーム・モスク内部
Photo by Phillip Maiwald (Nikopol) - CC 3.0, リンク

そんなイスラーム陶器のうち、第4章では出光美術館収蔵のトルコ・イズニク窯のタイル・陶器が展示されていました。年代的には16~17世紀のオスマン様式だそうです。トルコ陶器といえばこれ! 水色の鮮やかさは日本の陶磁器ではあまり見ない色彩で見入ってしまう。まさに人工の宝石です。

参考画像:典型的なイズニク焼きのタイル。水色が鮮やか!
Photo by Dosseman, CC BY-SA 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由


まとめ

東西の美術工芸の交流を実感できる、面白い展覧会でした。現在の建物での「出光美術館」はこれが最後と思うと名残惜しいですね。窓から皇居の方を見れば、都会の中心区と緑が共存する不思議な空間が広がっています。新しく立つ建物でもこの景色がまた見れますように。


参考記事


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