見出し画像

哲学問題私の答え「黒猫」

 

 私が哲学について考えるとき
いつも、どこからともなく黒猫がやってくる。
 それは大抵夜のことで
暗闇に乗じて私の部屋に侵入するのだ。

今晩私がこの記事を読んでいると
同じくPCを覗き込む黒猫が
何やらヒゲをピクピク動かしながら
キーボードの上に座って
いつもの調子でその小さな口を開き始めた。


黒猫「卑怯者はAだが、Bは真の狂人だな。」

私「そうか?AはBを利用し復讐を果たして、逆にBはAに上手いように利用された、単なるお人好しの馬鹿って見えるけど。」

黒猫「ふむ。
確かに一見するとAは利己的で狡猾、幾分か
Bより頭の良い印象を受ける。ただこれはあくまで、部分的な側面に過ぎない。この問題で一番重要なことは、BはDに対して1人で復讐を果たした、という所ではないか?」

私は少し考える真似をした。

黒猫「人間誰かを悪く言うとき、或いは復讐する、なんてとき、不安で誰かの共感を得ようとする。多数決の多い方が正義、というように。つまりAはBに共犯を申し出、数的優位な立場で復讐を果たしている。この事実は、ある意味では人間的な復讐だな。」

私「人間的な復讐。つまり君はAの側面として、小心者だと言いたいんだね。小心者だからこそ、Bの復讐には手を貸さなかった。」

黒猫「そう。誰だって、無関係な人を傷付けたくないもんさ。それに
これはAとB互いの信頼関係とは無縁の話しだ。復讐が悪という前提なら、AとBの関係性はこの問題の初めから、無いのと等しい。所詮復讐の共犯を持ちかける程度の浅い付き合いなんだろう。」

私「信頼関係がないのに、BはAを信用していると言ってるのは何故だ?」

黒猫「それこそ、私がBを狂人と呼んだ理由さ。」

黒猫の目がテーブルランプの灯りに照らされ
鋭く光った。全身の毛が少し逆立っている。

黒猫「さっき言ったAとBの浅薄な関係性上、BがAを信用しているとは考え難いのだよ。つまり嘘をついたってことになる。」

私「何でそんな嘘をつく必要がある?」

黒猫「狂人だからさ。復讐が好きなんだ。現にBは一度Aの復讐の申し出を断った。それは大義名分がなかったからだ。だが、Aの発言により、”Aを信じているB”を演じることで、復讐を手伝う道理を生んだってわけさ。」


私は冬へ向かうこの季節特有の
冷たさが飽和した部屋の中で
震えるように
テーブルの上に座る黒猫の話しを聞き入っていた。


黒猫「こうして、私が初め一番重要だと言った、BがDに対し1人で復讐を果たした、という事実に繋がるわけだ。」

黒猫「BはDを個人で叩きのめす程の力がありながら、Aに共犯を持ちかける。結果的にこれはBの目論み通り、断られてしまったがな。」

私「目論み通り?」

黒猫がニヤリと笑った。

黒猫「勿論、Aへの復讐の大義名分の為さ。」


それだけ言うと、
黒猫は身を翻し
軽快にまた暗闇へと溶けていった。

いいなと思ったら応援しよう!