隣のすみこ姉さん
隣に住んでいたすみこ姉さんは、
大人のおじさんおばさんたちから、
「すみちゃん、すみちゃん」って呼ばれてて、とても評判が良かった。
いつでも元気な笑顔で「なんね~?」って、応えていたから、
おじさんおばさんたちは、なにかにつけすみこ姉さんを頼りにしていた。
小さい僕たちにもいつも優しくて、顔を会わせる度に、
「女を泣かせる男になったら駄目だよ!」と、
おでこを人差し指で突っつきながら、バター飴を二つ握らせてくれた。
僕たちは飴が欲しくなると、
「すみこ姉さん、すみこ姉さん」と叫びながら、
すみこ姉さんの後をついて歩いた。
どんなに忙しくても、必ず笑顔で振り返り、
「お母さんを大事しなさいよ」と言いながら、
またバター飴を二個握らせてくれた。
僕たちはバター飴を握り締め、「やったー」と叫びながら、
すみこ姉さんの横を走り抜けて行くのが日課だった。
働き者のすみこ姉さんは、いつも身体を動かしているので痩せっぽっち。
気取らず朗らかなすみこ姉さんは、まったく化粧っ気がなかった。
それでも、僕たちにとっては女神様のように眩しい存在で、
その笑顔を見ているだけで、とても幸せな気分になれた。
ある日いつものように、
「すみこ姉さん、すみこ姉さん」とお尻を追っかけていると、
なんだかいつもと違う寂しげな表情で振り向き、
目の前に座りこんで、僕の頭を撫でながら、
「いい男になりなよ!」と、バター飴を袋ごと渡した。
幼心に何かが起こったような気がして、僕は暫く立ちすくんだ。
すると、すみこ姉さんはニコッと笑いながら、
「男の怖がりは駄目だぞ!」と、僕の髪の毛を手でくちゃくちゃにした。
僕は、いつものすみこ姉さんに安心して、
「やったー、全部いただきー」と叫びながら、
すみこ姉さんを置いて駆け出した。
翌日から、二度と僕の前にすみこ姉さんが現れることは無かった。
後から聞いた話では、
20コ上のおじさんと二人で、どこかにいなくなってしまったそうだ。
その20コ上のおじさんは、働きもしないで酒ばっかり飲んでいたから、
大人のおじさんおばさんたちは、
「あんないい娘があんな男にひっかかるなんて、不幸だね~」と、
ずっと嘆いていた。
それから何年も経って、
僕は青春真っ盛り、ロック好きの少年になっていた。
ある日、「小林克也のベストヒットUSA」を見ていると、
派手な化粧をしたレオタード姿のすみこ姉さんが激しくシャウトしていた。
きっと、すみこ姉さんは、
バカな男と別れ、自分の大好きな音楽の道に進んだんだ。
ディストーションの利いたギターに、
ひとつも負けることなくシャウトするすみこ姉さんに、涙が出た。
すんません!
これは・・・
オレのパット・ベネターイメージを長文にしてみただけなので、
フィクション!
