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大学発・革新的ロボットハンドの可能性――北陸先端科学技術大学院大学・只野さんインタビュー

TENJO KANAZAWAでは、地域に根ざした挑戦をかたちにする人たちに、インタビューをしていきます。今回は、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の博士後期課程に在籍し、未来の可能性を切り拓こうとしている若き研究者、只野 利恩さんをご紹介します。

只野さんが取り組んでいるのは、ユニークな「ソフトロボットハンド」。その社会実装に向けた挑戦に注目しました。



ソフトロボットとは? なぜ注目されているのか

「ソフトロボット」とは、その名の通り、柔らかい素材でできたロボットのことです。金属ではなく、シリコンやゴムなどの柔軟素材を使うことで、人やモノに優しく、安全に動くことができます。

医療・介護・食品加工・農業など、繊細な動作が求められる分野での活用が進んでおり、ソフトロボティクスは近年、世界的に注目を集める分野となっています。市場の拡大も続いており、さまざまな業界で導入の検討が進んでいます。

只野さんの技術も、こうした流れの中で注目を集めています。


柔らかいのに、力持ち。常識を覆すロボットハンド

只野さんが研究しているこのソフトロボットハンドには、「ROSEハンド」という名前がついています。これは、バラの花びらのように重なり合って動く構造から着想を得たもので、自然で有機的な動きが特徴です。

構造としては非常にユニークで、たったひとつのモーターだけで駆動。シリコン素材の柔らかさが、対象物の形に自然にフィットし、やさしく、そしてしっかりと掴むことができます。

実験では30kgの引っ張り荷重に耐え、約40万回の開閉動作にも耐えたとの結果も出ています。実用上は3〜5kgの重さのものを持ち上げるのに適しており、果物のような繊細なものから工業製品まで幅広く対応できます。


他のロボットハンドと何が違うのか?

▶ モーターやセンサーは「たったひとつ」

従来のロボットハンドは、複数のモーターやセンサーでそれぞれの指を動かす仕組みが一般的でした。その分、制御も複雑でコストも高くなります。ROSEハンドは、内部の構造設計によって、1つのモーターで自然に指全体が連動するようになっています。制御も簡単で、故障リスクも低く抑えられています。

▶ 専用設計が不要。“後付け”で使える

ROSEハンドは、既存の産業用ロボットアームに“後付け”でそのまま装着ができるユニット型です。特定の機種に依存せず、多くの設備にスムーズに導入できます。

▶ 柔軟素材で、どんな形にもフィット

シリコン素材を活かし、果物・ガラス・複雑な形状の部品など、従来の硬い素材では難しかった対象物にも柔軟に対応します。


農業・食品分野への応用と実証実験

現在は、農業分野──とくに果樹の収穫作業への応用を目指して実証実験を重ねています。たとえば山形県のリンゴ農家では、人がROSEハンドを手に持って収穫を行うスタイルでの実証が行われました。

完全自動化には資金・技術ともにハードルが高く、まずは人と協働する形での「半自動」スタイルから始めています。新規参入農家向けのツールとしても可能性があり、今後はブドウやナシ、モモなど他作物への展開も視野に入れています。


「高齢化が進む農業の力になりたい」
只野さんがこのロボットハンドに込めた想いの一つが、「高齢化や人手不足に悩む日本の農業を支えたい」という願いです。

大学でロボティクスを研究する中で、「技術を社会の現場に届けたい」という気持ちは次第に強まりました。特に、高齢化が進み担い手の減少が深刻化している農業分野では、作業の一部を補助するロボットのニーズを肌で感じたといいます。

そんな考えのもと、ROSEハンドを設計。技術の高度化や精度を追求するだけでなく、現場で本当に使えるものを目指しています。


事業化への挑戦と課題

只野さんは現在、研究室の教授らと相談しつつ、事業化の方向性を探っています。プロトタイプは完成しており、実証実験を通じて改良を続けている段階です。

一方で、研究を主軸とする大学という環境では、事業化に向けた意思決定や実行に時間がかかる場面も少なくありません。こうした技術はあるが、事業化に踏み出すには人手やノウハウ、推進力が足りないというのは、多くの大学発技術と共通するジレンマでもあります。

2024年には北陸地域の「TeSH(Tech Startup HOKURIKU)」GAPファンド『ステップ1』にも採択され、地域からの後押しも得ていますが、実証実験先や連携パートナーの確保、高機能化、人材の確保など、次のステップにはまだ多くの壁があります。



今後の展望

ROSEハンドは、農業だけでなく、製造業や物流など、繰り返し作業が多く、人の手の代替が求められる現場への応用も期待されています。
また、海外の大規模農場との連携や、国内のアグリテック集積地との協業なども視野に入ります。
さらに、新たな機能の搭載や実証の展開など、さまざまな分野での可能性が広がっています。

今後の展開に、ぜひご注目ください!


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