呼吸の調律 ―― 横隔膜の分離と無呼吸ラリーの打破
人間という生き物は、たとえ一日二日ほど眠らなくとも、あるいは食事を摂らなくとも、即座に命を落とすことはありません。しかし、
「呼吸を完全に止めてしまえば、数分と経たずに死に至る」
わざわざそんな当たり前の事実をコートの上で語り出す私に対して、コーチは何を今さら当たり前のことを言っているのだ、と疑問に思うかもしれませんね。
ですが、私はこれまでの指導の現場で、息を詰まらせながらコートを走り回る無数のプレイヤーを見つめながら、心の中でいつもこう静かに感じていました。
「君、ラリーをしている間、完全に呼吸が止まっているよ」と。
私たち人間は、精神的に余裕を完全に奪われたり、肉体的に力みに支配されたりすると、自覚のないまま「呼吸のシステムを完全に停止させてしまう」という極めて不都合な自衛反応を発揮することがあります。
テニスのラリーという運動量は、外側から見れば物凄く激しく、酸素を大量に消費しているように感じるかもしれません。しかし本来、正しく呼吸のインフラが機能してさえいれば、激しいポイントが終わったその瞬さに、肩を大きく上下させてハァハァと激しく息を切らすような事態には絶対にならないのです。
私たちが肺に新鮮な空気を入れるためには、肉体の奥深くにある横隔膜を動かさなければなりません。
しかし多くのプレイヤーは、ダッシュをしたりハードヒットを放ったりするために体幹の深層筋(腹横筋など)を稼働させた瞬間、その出力に引きずられるようにして、本来は独立して動くべき横隔膜までを「一緒にガチガチに力ませて固めてしまう」のです。
高度な動きをし続けるためには、これまでの技術論を遥かにレべルを超えた「高度な呼吸技術」が必要不可欠となります。
もちろん、特別な呼吸法を身に付ける必要などどこにもありません。
私たちがやるべきことは極めてシンプルです。日頃のフィジカルトレーニングを行う時から「呼吸の有無を自覚的に意識する」こと。そして、コート上で球出しのボールを打ち、激しいラリーを交わす時にも「呼吸を止めない意識」を強く持ち続けること。
これに尽きるのですが、
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