イップス克服に向けて031:イップスのときはミニラリーもできなかった
質問
吉田様
ご丁寧にご返信くださいまして
ありがとうございました。
『ベースメソッド(基準法)』を使って
いろんなボールを打ってみて、現実とイメージのズレを埋めていこうと改めて思いました。
それにしても、吉田様の具体例には感心させられます。
東京タワーのガラス床の例えを聞いて、
なるほど!と思いました。
私は極度の高所恐怖症。
そんなところに立たされたら、腰が抜けて一歩も歩けません。冗談抜きで。(笑)
いやいや、ホントそうですね。頭では落ちないとわかっていても、恐怖心で支配されますよね。
浅い緩いボールの時も同じで、スピンで打ちたくても、ネットかアウトしかイメージできなくて、
その場で立ちすくみ、恐怖心で腕が固まるのです。
状況を思い返すと、
恐怖心からバウンドするかしないかあたりから、
ボールがどのように飛んできたか記憶にないのです。
おそらく、もうダメ。失敗するって勝手に思って途中でボールを見れなくなってるんでしょうね。
でも、『ベースメソッド(基準法)』を試した時は、
バウンド後も見えてましたので、改善していくと思います。
まずは、失敗してもいい状況から、振りたいように振るところから始めてみます。そうやって勝手なイメージを書き換えていきます。
イップスのときはミニラリーもできませんでしたが、
吉田様の教材に出会って、
今ではできるようになりました。
これも、ボールに集中しつつ、振りたいように振ることで、思い描いていた弾道とイメージが合うようになって、怖さが急に和らいで行きましたので…
また、経過報告させていただきます。
今後ともよろしくお願い致します。
※※
回答
▶恐怖心が体を支配する仕組み
具体例といっても、身近な例に置き換えているだけです(笑)。
人が脅威に遭遇すると、「逃げる」か「戦う」かの反応を取ります。
いわゆる「ファイトorフライト理論」ですね。
ある日、森の中、クマさんに出会ったとしましょう。
「ファイトorフライト理論」に則って私たちは、クマさんと戦うか、クマさんから逃げるか、します。
▶第3の反応「フリーズ」
そして実は第3の反応があって、「固まる」のです。
つまり、「フリーズ」する。
クマと遭遇したとしても、茂みに隠れて身をひそめ、息を殺し、固まってしまえば、見過ごされて助かる可能性がある。
イップスの「金縛り状態」というのは、この「フリーズ」なのかもしれません。
▶イップスには「金縛り系」と「大蛇系」がある
ちなみにイップスにはこの「金縛り系」と、もうひとつ、「大蛇系」とがあります。
前者はご経験いただいたように、体が思うように「動かない系」。
後者は腕の中に大蛇がいて、勝手に「暴れる系」です。
▶難しい動作のほうが症状が出にくい不思議
ミニテニスもそうですが、より単純な動作のたとえば「球出し」などで、「大蛇系」は発症しやすいと思います。
だけど大蛇系イップスでも、ボールをコートに落として跳ね上がってきたところを、「トトン」のリズムで打つライジング処理すれば、そっちのほうが技術的には難しいはずなのに、球出しイップスの症状が出なかったりします(関連記事「誰にも明かせないから『重く』なる」)。
▶記憶が消える理由
また「ボールがどのように飛んできたか記憶にない」のは、まだイメージがズレているからです。
ツーバウンド手前が取れない多くのプレーヤーは、追うのを意識的に「諦める」というよりも、そのせいで見えていないから記憶にも残らず、必死で頑張ろうとしても無意識レベルで「体が動いてくれない」のです。
▶「スイカ割り」のたとえ
さて私のたとえ話のテッパンは、「スイカ割り」です(笑)。
これはサービスを上手くコントロールできない悩みにお応えするときによく用います。
「フォーム後づけ理論」も同時にご説明できるものです。
基本的にサービスは(サービスに限らず、テニスのすべてのショットが該当)、打つときには、狙うターゲットを見ません。
なぜなら狙うターゲットを見てしまうと、空振りするからです。
ですから、「打つときにしっかりターゲットを意識しましょう」という指導は、上手くいかない。
打つときに見るのは、「ボール」です。
回転や毛羽を見て取るくらい、ボールに集中するのです。
▶ターゲットのイメージは準備しておく
だとしたら、狙うターゲットは目で見なくても分かるように、事前に頭の中で「イメージ」として備えておかなければなりませんよね。
このイメージが現実(実際のターゲット)とズレていると、誤った結果が出るというのは、お分かりいただけると思います。
スイカ割りでは目隠しするから、狙うターゲットであるスイカを、目で見ません。
事前に確認して(このとき目でよく見ます)、頭の中に備えておいたイメージに基づき、アプローチするのです。
▶フォームは結果として現れる
では本番。
イメージするスイカの位置と、実際に置かれてあるスイカの位置とがズレていなければ、「的中」します。
あとはもう、ただ棒を振り下ろすだけです。
棒を持つグリップが、厚かろうと薄かろうと、どちらでも当たります。
また力強くたたき割ろうとすれば、自然にヒザが曲がり、腰も落ちるでしょう。
「テイクバック」(?)も、自然に大きくなるかもしれません。
ですからフォームは「後づけ」なのです(関連記事「すべての技術的アドバイスは『後づけ』である(自分の宝の見つけ方)」)。
意識して、そうするものではありません。
フォームや動作を意識すると上手くいかなくなる理由は、『ベースメソッド』をさらっていただければと思います。
▶空間認知能力を育てる
ちなみに目隠ししてターゲットを正確にイメージできる力を、「空間認知能力」といいます。
今回お求めいただきました『あなたのテニスセンスを引き出す“ZERO式”30メニュー』には、この力を培う練習メニューが、豊富に取り揃えられています。
『ベースメソッド』は、イップスからフォアが一発で返ってきたとおり、練習した末に身につくトレーニングというよりも、試せばすぐ結果が出る「メソッド」です。
今すぐ助かりたい「藁をもつかむ系」の人に、もってこいです(ただしイップス専用テキストというわけではなく、ストロークやリターンが不安定なあらゆるプレーヤーに対応)。
『“ZERO式”30メニュー』はトレーニング的な側面があり、腰を据えて日々の練習や生活に溶け込ませていただければと思います。
▶追記1:『“ZERO式”30メニュー』の処方
『“ZERO式”30メニュー』は現在「廃刊」となっています。
『ベースメソッド』をご一読後、ご希望の方にはご質問いただければ、その症状に適したメニューを、必要に応じて処方します。
『ベースメソッド』は、テニスプレーの「土台」。
いちばん大事です。
▶追記2:「自分ひとり」で伸びていける
ベースさえ整えば、「集中力」も高めやすく、打ち合う相手は必要ですが、あとは「自分ひとり」で伸びていけます
逆に言えば、どんなに集中力が高くても「ベース」が不安定だと、テニスも不安定です。
打ち合う相手のレベルは問いません。
相手がたとえ未熟であっても、かえってばらつくボールにアジャストする対応力を高める練習が、『ベースメソッド』を使ってできます。
誰かに教えてもらったり、特別な機器「ウィンブルドン養成ギブス」は、必要ありません(笑)(『テニス・ベースメソッド』P.36)
▼『テニス・ベースメソッド――フォームを直さない上達論』
■紙版
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テニスゼロ代表 吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero