テニス上達メモ170.速度×強度=スピードボールの正体
▶「スピード」vs.「スピード感」
ボールスピードは、速いに越したことはないとはいえ、同じようなスピードボールばかりを打ち込んでいては、相手に慣れられてしまいます。
実際のスピードそのものよりも、相手に「速っ!」「うわっ!」と感じさせるスピード感について綴ってみたいと思います。
そのためによく使われるのが、チェンジオブペースですね。
野球で言うチェンジアップ。
たまにゆっくりなボールを混ぜると、速いボールを、「より速く」感じさせる効果が期待できます。
あるいは速いボールを連発するなかで、たまにゆっくりなボールを混ぜると、速い対応に慣れた相手の打球タイミングを外して打ち損じを誘うことも可能。
https://www.youtube.com/watch?v=ZExbHvzBERs
▶この世に「速いボール」などない
いえ、絶対的に「速いボール」などこの世にないし、「遅いボール」もないのでしたね(関連記事「テレビで見るプロのラリーは速くない?」)。
「相対性の世界」ですから、いくら草大会で対戦した相手のサービスが「速い」からといって、ジョン・イズナーのそれに比べれば、「とても遅い」のです。
単に比較の問題です(ですから他人との比較をやめれば苦しまないという話は別稿に譲ります)。
いくら東京の夏が「暑い」といっても、アスワンの人からすれば「どこ吹く風」(関連記事「相対化により『基準』が定まる」)。
300グラムのラケットが「重い」か「軽い」かは、決めつけられないのです。
実用的なのは時速200キロメートルという「スピード」そのものよりも、速く感じさせる「スピード感」。
特にフィジカルが10代、20代の年齢的ピークを越えて下り坂にあるプレーヤー、あるいは握力が12キログラムといって驚かせるような、筋力には頼りにくい女性にとっても、緩急のギャップで勝負するのは上手いやり方でしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=Dk-GoIJIB1k
▶ボールスピードを決める時間と位置の精度
もちろんボールスピードはフィジカルだけに依拠しているわけではないご説明についても付言しておくと、同じスイング速度、同じラケット強度であれば、打球タイミングと打球エリアの両精度が高いほど、ボールスピードはアップします。
つまり自分が「今!」と感じる時間の精度と、スイートスポットで捕らえる位置の精度(関連記事「『今・ここ!』の『打時』を感じる」)。
ラケットを速く振れたからといってそのぶんスイートエリアを外して打ったら、当然ボールスピードは上がらず、ボールコントロールもままならないのは、テニス初中級者によくある症例。
そうなるくらいなら速く振ろうとするよりも、ゆっくり振るのに飛び出すボールが速いショットを目指すと、無理がありません(関連記事「テニスは『自適スイングスピード』でプレーする」)。
▶「退屈な授業」が俺たちのすべてなのか?
時速100キロメートルのボールだからといって、いつも100キロメートルの速さを感じるわけではないのです。
より速く感じたり、もっと遅く感じたりする可能性があります。
「スピード」と「スピード感」の違いに納得いかなければ、「退屈な授業」を思い出してみてはいかがでしょうか?
同じ60分の授業でも、面白ければ「あっという間」。
退屈だと「まだ終わらないのか」と、しびれを切らします。
「1秒や1メートルの長さは、立場や状況によって変わる」と説くのが、アルベルト・アインシュタインの発見した「相対性理論」なのでした。
▶厚ラケが証明した「強度」のすごみ
90年代に登場してきたいわゆる厚ラケによるスピード&パワーが強烈な印象だったのは、フレームを分厚くデザインしたぶん、「強度」を高められたから。
分厚いだけでフレーム強度が低かったら、スピード&パワーは出ません。
端的に言えば、フレームが「スポンジ」のように弱いと、どんなにハードヒットしてもボールスピードは上がりませんよね。
厚ラケがパワフルなのは、「強度」が高いからです。
なおかつカーボン素材の進化により、従来に比べて驚異的な軽量化も達成できたので(USL=ウルトラ・スーパー・ライトなどの“どんだけ表記”もこの頃から登場)、分厚くしても操作性を損なわないメリットをプレーヤーは享受できたのでした。
▶形状と強度と重量と
とはいえテニスのプレーは、スピード&パワーだけでは不十分です。
強度を高めた厚ラケはフレームがしなりにくいから球持ち感を損ね、コントロールしにくくなるデメリットが懸念されました。
逆にしなるフレームであっても、粘り強い強度があれば、その形状復元力を以てボールを跳ね返す反発性として利用できる。
このあたりの形状と強度と重量のさじ加減こそ、ラケットメーカーの腕の見せ所と言えるでしょう。
▶サンプラスとセレスのテンション事情
ストリングにも目を向けると、硬く張れば弾きはよくなるけれど、球持ち感を損ねる。
一方、緩く張るとホールド性が高まる反面、弾く感じは鈍る相関。
ピート・サンプラスやモニカ・セレスなどは「70ポンド超」とささやかれる、メーカーが定めた推奨テンションを破りかねないハイテンションだったのも、話題となりました。
▶ボールスピードを上げる「強度」
いずれにしてもボールスピードを決める要素としてスイング「速度」ばかりが注目されがちですけれども、「強度」も関わります。
ラケットやストリングだけではなく、体も強い状態でインパクトできる「強度」が求められます。
一般的に「打点を前にせよ」と言われるのは、ボールに対して後ろから支える形を強く取れるからであり、打点が後ろになるとその支えが弱くなるから、どんなにスイングスピードを上げて打ってもスピードボールにはなりにくいのですね。
▶プレーを劇的に楽にするには?
ボールの「スピード」と「スピード感」に関する話を、スイングの速度や、ギア、フィジカルの強度面から考察してきました。
この世に「速いボールはない」のだから、無理して速いボールを打とうとするよりも、速く感じさせる工夫で勝負するのも一考。
さて視座を180度ひっくり返し、相手の速いボールを「遅く感じる」ことができれば、ご自身のプレーは劇的に楽になると思われないでしょうか?
そのためにはどうすればいいかを、ここから検討してみます。
▶ボールをゆっくりに感じる方法
ボールの縫い目(回転)を見るのでしたね(関連記事「ボールに集中する方法は?」)。
※「縫い目」は便宜上の表現で、実際はフェルトの「合わせ目」。縫い目があるボールはテニスのルールに抵触する。
ボール全体を大雑把に見るのではなく、ゆっくりに感じられる可能性もあるから「縫い目」を見ます。
なぜなら私たちは、よく見える、しっかり見える、細部まで見えるものは「ゆっくり動いているものだ」と、経験的に学んでいるからです。
逆によく見えない、かすれて見える、細部を見にくいものは、経験的に「速く動いているものだ」と感じやすいでしょう。
本稿の文脈に即して言えば、その「感じ方」が、スピードそのものよりも影響大。
▶「ボールが止まって見えた」は枚挙に暇がない
ですから縫い目を見ると、ボール全体を大雑把に見るよりも、ゆっくりに感じられる可能性があると言えるのです。
野球のバッターでも、「ボールが止まって見えた」というエピソードは、プロアマ問わず枚挙に暇がありません。
打撃の神様・元読売ジャイアンツの川上哲治はこのことについて「我を忘れた」「疲労も感じず、楽しくてしょうがなかった」と、エピソードを振り返ったのでしたね(関連記事「『スピード』と『スピード感』の違い」)。
ボールが止まって見えたのだから、縫い目も見えていた可能性が高い。
逆に、縫い目まで見えていたから、ボールが止まって見えたとも言えるのです。
▶ボールがゆっくり見えたら、テニスはもっと簡単
いずれにしても、全体を大雑把に見ていては、ボールが止まって見える可能性はほぼノーチャンス。
そして縫い目が見えるかどうかは「視力の強弱」ももちろんありますけれども、それ以上に影響するのが「意識の使い方」。
飛んてくるボールがゆっくりに見えたら、フォームや打ち方の改造に腐心するよりも、テニスは今よりもっと簡単だと思いませんか?
いえ止まって見えたら、あとはもう目の前にあるボールを「引っぱたく」のみ。
フォームや打ち方なんて、どうでもよくなります。
そしてフォームや打ち方を意識していると、ボール(縫い目)はよく見えないからますます速く感じてしまうため、余計にテニスが難しくなってしまう相関。
ですから意識の使い方しだいで、テニスはもっと簡単になるのです!(参考文献「『新・ボールの見方~『怖れのメガネ』を外して、ありのままに見る技術~』」。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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