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イップス克服に向けて058:頑張るほど結果が出ない理由──ナダルのセンブリ茶が教えてくれたこと

子どもが苦いものを食べられるようになるのは、「命の危険はない」と体が「体験」で学ぶから。頭で納得しても変わらないのはそのためです。ナダル(芸人)がセンブリ茶を克服できなかった実験も同じ構造。イップス克服の核心は「自分を追い込まないこと」にあります。


▶頭で分かっても、体は言うことを聞かない


苦い・酸っぱい食べものは腐っている危険があるから、子どものころは本能的に受け付けないと、『チコちゃんに叱られる』で教えてもらいました。

子どものころは、ピーマン・ニンジンが苦手だったけど、大人になると食べられるようになるのは、少しずつ食べるうちに「命の危険がない」と、体が学習するからなのだそうです。

これが「体験」です。

ピーマンもニンジンも「みんなが食べているのだから美味しいはずだ」「本で調べたら栄養価も高そうだし」などと、食べられるようになるための考え方を頭の中で想像してみても、それは「机上の空論」。

苦手は苦手なままです。

だけど「体験」すると、実際にできるようになる具体例(関連記事「『想像』よりも『体験』で腑に落ちる」)。

▶ナダル、センブリ茶に挑戦


ナダルさん(元テニス選手ではないコロチキのほう)が、非常に苦味が強いことで有名だという「センブリ茶」を90日間飲むと、克服できるのかの実験。

体験により変わるのであれば、飲めるようになるはずです。

先に結論を言うと、ナダルさんはできませんでした。

美味しさ度合いを10でいうと、1 ポイントだけ、飲めるポイントが上がったのみ。

9割は不味いまま(苦笑)

▶頑張りすぎるから、遠回りになる


これは、90日間という短い期間で好きになろうと、「頑張りすぎた」からでしょうね。

さらに専門家のアドバイスとして「ポジティブに飲む」という心理テクニックを利用し、「ギャグをやりながら飲む」「寝起きで喉カラカラの時に飲む」「好物のシューマイに振りかける」ほか、「口角を上げると前向きになって飲みやすくなる」などと、アズイフの法則まで提案されたのだけれど……。

うーん、精いっぱいの工夫なのは伝わりますが、どれもこれも、頑張りすぎです。

▶最後に差がつくのは、残した余力


厳しく追い込みすぎたからかナダルさんは、三日坊主ならず、90日間の「三ヶ月坊主」で挫折というか、挑戦に失敗。

番組の進行を務めるナインティナインの岡村隆史さんは、「1年間かければ飲めるのではないか?」と予想しましたが、私もそうだと思います。

やりすぎない(関連記事「一気に上げない人が、うまくなる」)。

これが、アフリカで独特の音楽文化を持つバカ族の「限界手前最強説」だと、意訳できるのです(関連記事「盛り上がり直前で解散!──アフリカ『バカ族』にならう本能」)。

▶追い込まない人ほど、遠くへ行ける


頑張ると、上手くいきませんでした。

むしろ大切なのは、気力も体力も残す勇気(全力の前の余力に宝がある)

イップスになる人は、真面目に頑張りすぎるのです。

違いますか?

▶──イチローも、そうだった


現役時、自身はそこまで追い込まなかったと、イチローは振り返ります。

「シーズン中は強度を上げたり追い込むことはできなかった」

https://www.nikkansports.com/baseball/mlb/news/202511190000786.html

にも関わらず全力ダッシュ後、ヒザに手を突く追い込んだ人のポーズを批判するのはどうかと思うけれど(いやはや)、裏を返していえば、そこまで追い込まずとも「とんでもないところ」まで行くための能力を引き出せたのは、やっぱりすごい。

いえ、そこまで追い込まなかった(あえてセーブした)からこそ、とんでもないところまで行く能力を引き出せた「限界手前最教説」を踏まえれば、やっぱり現役時代のイチローは、合理的な人だったんだと思います。

倣うべきは、ここ。

▶努力で自分の価値を証明しようとすると、つぶれる


また自己肯定感が低いと、「人一倍頑張りでもしないと自分には価値がない」、という感じ方になる。

すると、追い込むことそのものが目的になり、能力を引き出すどころか、かえってつぶれてしまう。

イチローのすごさは、「追い込まない(あえてセーブする)ほうが伸びる」という合理に身を委ねたクールな姿勢

追い込む人は、「自分の価値」を証明するための努力が、目的化するのかもしれません(関連記事「手段が目的化する」)。

▶「とにかく頑張るっていうことは短くしたい」by福士加代子


「追い込まない」は、中長距離の雄・インゲブリグトセンが証明した陸上競技界でも、科学的根拠が示された筋トレ界でも、新常識となりつつあります。

それらに倣えば、頑張ったらアカンということです。

マラソンの福士加代子も、子どもたちへ向けた指導で言いました。

「とにかく頑張るっていうことは短くしたいので、どれだけ体が楽に動かせるかというところをのばしていきたいな」

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rsk/2332877

楽したほうが、伸びるのです。

▶頑張らなくていい理由は、もう「結果」が示している


今、結果が出ていないのだとしたら、いわんや苦しんでいるのだとしたら、間違った思い込みのせいで、頑張りすぎているのかもしれません。

テニスのフォームをいくら頑張ったって、結果は出ませんよ。

メンタルが弱いわけでもないのです。

ええ、むしろそうして頑張れば頑張るほど、かえって上手くいかない結果が、「見事に出ている」のではないでしょうか。

その事実、現実を、客観的に評価する。

頑張る必要はないのです。

必要なのは、現実に対するイメージのズレをなくす「体験」

ナダルさんはセンブリ茶を克服できなかったけど、イップスは、イッパツで改善する可能性も、確かにあるのです。

▶おまけ:ナダルに「アズイフ」が効かなかった理由


ちなみに「アズイフ」が効かなかった理由はこちらの関連記事「フリをやめると集中力は上がる話 ― イチローとフェデラーが教えてくれた実践編」。

アズイフとフリは、似て非なるものです。

アズイフは、無理やりポジティブな「フリ」をするわけではありません。

それをすると感情が未消化のまま残るから、むしろ苦しむのです。

▶おまけ2:「フランクリン効果」の正体は、自己肯定感のほうだと思う


もうひとつおまけのおまけ。

「ベン・フランクリン効果」は、助けた相手に好意を感じるという心理現象なのだそうです。

つまり助ける「体験」が先、好意の「感情」が後からついてくるというアズイフ的な流れです。

ただし記事の解説では「誠意をもって求める場合にのみ機能する」とされ、相手を操ろうとする「フリ」では効果が出ないと説く。

本音と行動にギャップがあると、心は動かないのです。

ではなぜ、人は助けた相手を好きになるのか?

最後に私の見立て。

助けようとする相手へ払う敬意のリスペクトを通じて、「自己肯定感が上がるから」ではないかと思うのです。

自己肯定感が上がると、「人を好きになる」。

ええ、こっちのほうが個人的には、しっくりきますね。

即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)

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