テニス上達メモ557.イチローも返せない150キロサーブ、主婦なら返せるワケ
ユニクロの「イチローDREAM FIELD」で、錦織圭の時速約150キロサービスに挑戦したイチロー。しかし1球も返せず!野球の神経とテニスの感覚との違い、さらにテニスボール内部加圧の仕組みが、現実とイメージのズレを生む。だからこそ、老若男女が楽しめるテニスの可能性に光明がある。
▶イチローも誰しも、初めは初心者
特別コーチ役としてテニスの錦織圭、元サッカー日本代表の内田篤人を招き、ユニクロが開催したイベント「イチローDREAM FIELD(ドリームフィールド)」プロジェクトでのこと。
私がテニスを専門としているからといって、贔屓するわけではありませんよ。
テニスは、元野球のトップアスリートであっても、(手加減したとて)初心者だと、ラリーは3往復も続きません。
▶ラケットの持ち方を教える錦織圭、あかーん
イチローが、錦織圭の放つ時速約150キロのサービスリターンに挑戦。
結果、ラケットにボールを当てるも、1球たりとも相手コートへ返球できなかった模様です。
錦織も、ラケットの持ち方(フォーム)なんて教えてたらあかーん(笑)。
ですから「常識的なテニス指導だと、テニスを始めた初日からつまずく」のです。
下記「30年続けるテニスの魅力」について語ったインタビューは、示唆に富む内容ばかりなのですけれども、ね。
▶「野球の150キロはそんなに速くないんだけど…」byイチロー
イチローほどのトップアスリートですら、なぜリターンを返せないのか?
「野球の150キロはそんなに速くないんだけど…」とイチローは臍をかみます。
ネットすら越えない原因は?
速さには慣れている。
バットよりも当てやすいラケットも使う。
なのに、なぜ?
もちろんテニスの場合は「現実に対するイメージのズレ」が生じやすいからです。
▶手加減よりも、自分のペースで楽しもう
テニス(イチローが挑戦したリターン)の場合は、錦織が放つサービスの初速が150キロだとしても、サービスボックス内でバウンドするとコートサーフェスからの摩擦抵抗を受け、手元へ到達するころにはその球速は、かなり減速しています。
それでも対応できないからイチローは「マジか」といって「不思議」がる。
繰り返しになりますが、野球の細いバットよりも、大きな網の目のついたテニスのラケットで打ち返すだけです。
狙いは、遠いとも言えない手近な、「家3軒分」などといって広さの形容詞としても用いられるテニスコートです(関連記事「『そこへ』打つのに『どこへ』行く?」)。
しかも、野球のピッチャープレートからホームベースまでの距離が18.44メートルに対し、テニスのベースライン間は23.77 メートルだけど、対角線だからサーバーは、ピッチャーよりもさらに遠くから打つため、余裕もあるはず。
▶運動神経に自信がなくても大丈夫
しかも、イチローがチクリした「手加減」されたボールにもかかわらず……。
これは、社長だから、取引先だから、ランキング772位の地元コーチだからといって手加減するディスリスペクトとなりかねません(関連記事「『最高の物語』byフェデラー」)。
錦織も「よくなかったですね」と反省したといいます。
それはさておき、イチローの運動神経をもってしても1球たりとも返せないのです(関連記事「どうして広い相手コートに入らないのか? 」)。
とはいえ、ここに光明があるのです。
▶運動神経に自信がなくても大丈夫。イチローvs.主婦
テニスの巧拙は、「運動神経」ではありません(関連記事「テニスに運動神経は必要ない! 」)。
そこに、老若男女のだれもが楽しめる可能性がある。
イチローの返せない時速約150キロのサービスに対するリターンですが、たとえば全国レディースレベルの女性なら、主婦も返せるのです。
▶テニスも「ボールはともだち」で上手くいくby『キャプテン翼』
やや専門的な話になりますが、その背景には、テニスボール特有の構造が関わっています。
テニスボールは内部にガスや空気を閉じ込め、圧力を約1.8気圧まで高めた特殊な仕様。
おもに、バスケットボールや軟式野球ボールなどはゴムの反発、卓球はプラスチックの反発で跳びますが、テニスボールは毛色が違います。
高められた内圧によって「見た目以上に飛ぶ&跳ぶ」。
この、ほかのスポーツにはないテニスならではのユニークな「プレッシャーライズドボール(内部にガスを封入して圧力を高めたボール)」の性質こそ、現実とイメージのズレを生み、プレーを見た目以上に難しくしている主犯格です。
▶「プシュッ!」があなたの挑戦の合図(笑)
もう少し続けます。
ニューボールが収められている缶内は、約2気圧に加圧。
これにより、ボール内部の空気やガスが漏れ出ない構造となり、内部は約1.8気圧に保たれています。
ですから、缶を開けるときにはビールの乾杯よろしく「プシュッ!」と弾ける音が、ちょっとワクワク(笑)。
とはいえ缶から出すと、使わなくてもボール内部の圧は徐々に抜け、やがて大気圧(1気圧)に馴染みます。
すると、テニスボールとして定められたバウンド規格を保てなくなるのです。
▶テニスの「種明かし」
ルールでは、100インチ(約254センチ)の高さから硬い平面上に自然落下させた場合、ボールの下端が134・62~147・32センチの間に収まるよう求められています。
そのためプロの試合では基本的に、最初はウォームアップにも使うため7ゲーム終了時に、以降は9ゲーム消化するごとに「ボールチェンジ」が行われるのです。
「試合になるとボールが飛びすぎる」という悩みはド定番ですが、これは何も圧が高くて硬いニューボールだからバックアウトさせてしまう、という単純な理由だけが原因ではありません。
詳しくは、『ベースメソッド』をご参照ください。
『ベースメソッド』は、決して非科学的な「魔法」などではありません。
しかし手品の種が解けるかのような「テニスの種明かし」になっています。
▶フォームは気にしない。自然体だと返せる
これが「ボレー」だったらイチローはもっと、上手く対応できたに違いない。
ただし繰り返しになりますが、「ラケットの持ち方」なんか意識したら、イチローでさえ、返るものも返らなくなります。
さらに、「ボレーは振らない」だとか「ステップイン」だとか、意識すればするほど、それらは「ありがたいアドバイス」ではなく「ありがた迷惑」になる(関連記事「アドバイスをもらってありがたいはずなのに……」)。
打球タイミングを外して、ラケットの真ん中にボールが当たらなくなり、さっぱり返らなくなるのです。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero