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企業の3割が「完全出社」へ回帰──アクセンチュアの週5出社に見る働き方の地殻変動

ResumeBuilder.comが2025年10月に公表した調査によると、企業経営者の約30%が2026年までに週5日の完全オフィス出社を義務化する方針であることが明らかになりました。

パンデミック以降に定着したかに見えたリモートワークは、いま明確な揺り戻しの局面に入っています。

https://www.fairplaytalks.com/2025/10/16/three-in-ten-companies-plan-to-end-remote-work-enforce-return-to-office-by-2026-survey-finds/

この動きはテック業界や製造業に限った話ではなく、コンサルティング・監査・税務といったプロフェッショナルサービス領域にも確実に波及しています。

本稿では、このRTO(Return to Office)トレンドがキャリア市場にもたらす構造的な変化を、中堅プロフェッショナルの視点から読み解きます。


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「生産性」と「文化」を旗印にした出社義務化──その裏にある経営の本音

今回の調査では、出社日数を増やす理由として「企業文化の強化」を挙げた企業が64%、「生産性の向上」が62%、「オフィススペースの有効活用」が45%という結果でした。

一方で注目すべきは、8%の企業が出社義務化の目的として「従業員に自主退職を促すため」と率直に回答している点です。

Newsweekの報道でも、ResumeBuilder.comのチーフキャリアアドバイザーは、RTO方針を間接的な人員削減手段として活用する企業の存在を指摘しています。

https://www.newsweek.com/list-of-companies-calling-workers-back-to-office-in-2026-11242468

興味深いのは、経営者自身の理想と実際の施策が乖離していることです。 同調査によれば、経営者のうち週5日出社が理想だと考えている人はわずか16%にとどまり、大多数は週3日程度のハイブリッド勤務が最適と認識しています。

それにもかかわらず出社を強化している背景には、「可視性=生産性」という旧来の管理思想が根強く残っていることがうかがえます。

日本国内でもこの傾向は顕著です。 Job総研が2025年1月に実施した調査では、51.9%の企業で「出社回帰」が進んでいると回答されています。

アクセンチュアは2025年6月から週5日出社を義務化し、アマゾンジャパンも米国本社に追従する形でフルオフィス勤務へ移行しました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC0713T0X00C25A5000000/

コンサルティング業界に特化した動向を見ても、クライアント企業が対面でのコミュニケーションを重視する姿勢を強めたことで、フルリモート案件やリモート前提の掛け持ち案件は2024年と比較して明らかに減少しています。


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ハイブリッドの「質」が問われる時代──プロフェッショナル人材への直接的影響

この出社回帰の波は、コンサル・監査・税務分野の中堅プロフェッショナルにとって、働き方だけでなくキャリアの構造そのものに影響を与えます。

まず、プロジェクトへのアサインメント基準が変わりつつあります。 クライアント常駐を前提とする案件が増え、「どこからでも働ける」ことが差別化要因だった時代は終わりを迎えようとしています。

特にBig4を中心とした大手ファームでは、対面でのクライアントリレーション構築力が再び重要な評価軸として浮上しています。

次に、ワークライフバランスへの影響は無視できません。 Job総研の調査では、従業員の70.9%が「週3日以下の出社」を希望しており、55.2%が「リモート寄りの働き方」を理想としています。

通勤時間の負担を出社における最大のハードルと感じる人は74.8%に達しており、企業方針と従業員の希望との間に大きなギャップが存在しています。

育児や介護といったライフステージを抱える層にとって、完全出社の義務化は深刻なキャリア継続の障壁になり得ます。

さらに、コンサルティング業界特有の構造変化も重なっています。 パソナの2025年度調査によると、コンサルティング・監査法人・士業系の求人倍率は前年の2.10倍から1.90倍へと低下し、全業界で唯一のマイナスを記録しました。

AIによる従来型業務の代替が進み、「とりあえずポテンシャル層を大量採用する」モデルが見直された結果です。

出社義務の強化と採用の厳選化が同時に進行するこの局面は、キャリアの選択肢が狭まるリスクと、専門性が正当に評価される可能性の両面を孕んでいます。

働き方の再編が生み出す新たなキャリア価値

出社回帰の潮流は、リスクばかりではありません。 むしろ、この変化を構造的に捉えれば、プロフェッショナル人材にとっての新たな機会が見えてきます。

第一に、「意図的な対面」をデザインできる人材の価値が上昇しています。 ResumeBuilder.comの調査でも専門家が強調しているように、今後成功するハイブリッドモデルの鍵は「目的のある出社」であり、単なる出勤日数の管理ではありません。

クライアントとの関係構築、チームのファシリテーション、経営層への提案といった対面でしか生み出せない付加価値を言語化し、実践できるプロフェッショナルは、出社回帰の時代においてこそ希少性を持ちます。

第二に、AI時代のコンサルティング業界で求められる人材像が明確になりつつあります。

Deloitteが2026年6月から全米18万人超の職位体系を刷新するという発表は、コンサルティング業界がAI時代に向けて抜本的な変革期にあることを象徴しています。

McKinseyではAIエージェントが18ヶ月で500%以上増加し、約2万体に達したとCEOが公言しています。 こうした環境下では、AIに代替されない「泥臭い調整力」「ステークホルダーを動かす推進力」「クライアントの意思決定を支える対面での信頼構築」が、従来以上に価値を持つスキルセットとなります。

第三に、出社回帰に伴う人材流動が、市場における交渉力の非対称性を生む可能性があります。 ResumeBuilder.comの調査でも、厳格なRTO方針が採用市場の回復局面と衝突した場合、企業側が人材確保に苦戦するリスクが指摘されています。

柔軟な働き方を維持する企業とそうでない企業の間で、優秀な人材の偏在が進む可能性があり、この構造変化を読み解ける人材ほど、自身のキャリアポジションを有利に設計できるでしょう。


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「どこで働くか」から「なぜ集まるか」へ──キャリア戦略の視座を転換する

出社か在宅かという二項対立は、キャリア市場の本質を見誤らせる問いです。

ResumeBuilder.comの調査は、企業の約3割がフル出社に回帰し、一方で経営者の84%がそれを理想と考えていないという矛盾を浮き彫りにしました。

この矛盾は、働き方のルールがまだ流動的であり、確定的な均衡に至っていないことを意味しています。

コンサルティング・監査・税務領域の中堅プロフェッショナルにとって重要なのは、出社日数そのものではなく、「対面の場で不可替な価値を生み出せるかどうか」という問いに正面から向き合うことです。

AI導入と出社回帰という二つのメガトレンドが同時に進行する2026年は、「人でなければできない仕事とは何か」が改めて問い直される年になるでしょう。

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの約2万人を対象とした調査が示すように、テレワークと出社を組み合わせた働き方のほうが、毎日出社よりもエンゲージメントとパフォーマンス実感が高いという知見もあります。

働き方の最適解はまだ誰も手にしていません。 だからこそ、この不確実な局面において自分のキャリアの軸を明確に持つことが、市場における最大の差別化要因になるのです。

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