見出し画像

システム開発の謎が全てわかるシリーズ④〜2022年に書いた3本の記事を、AI時代に全部ひっくり返す〜

2022年に「システム開発の謎が全てわかるシリーズ」として3本記事を書いた。費用編、開発手法編、番外編(なぜ開発会社は自社サービスを作らないのか)の3本だ。(3本しか書かなかったんかい)

システム開発の謎が全てわかるシリーズ①〜開発費用編〜
システム開発の謎が全てわかるシリーズ②〜開発手法編〜
システム開発の謎が全てわかるシリーズ番外編1〜なぜシステム開発会社は自社でサービスを作らないの?〜

過去記事

書いた当時はそれなりに自信があった。現場で見てきたことをそのまま書いたし、今でも内容は間違っていないと思っている。

ただ、前提が変わった。AIが来た。それも思ったより早く、思ったより深く。結果として、あの3本で「当たり前」として書いたことが、ことごとくひっくり返りつつある。自分で書いた記事を自分でひっくり返すのはちょっと恥ずかしいが、それくらい状況が変わったということだ。順番にやっていこうと思う。

①費用編へのツッコミ:「エンジニア1人月100万円」はもう自明じゃない

2022年当時、こう書いた。エンジニアの採用費は年俸500〜800万、労務費は給与の1.5〜2倍、利益3割乗せると1人月100万円前後が相場、と。これ自体は今も計算として間違っていない。

ただ、その計算式の意味が変わった。

AIを使っている開発会社では、1人のエンジニアが出せるアウトプットが明らかに増えている。うちの肌感では早い人で3〜5倍くらい。つまり同じ100万円を払っても、受け取れる価値が会社によって全然違う、という時代になってきた。

発注者側から見ると何が変わるか。「安い見積もり=怪しい」という従来の判断基準が使えなくなってきた、ということだ。

以前、安い見積もりが出てくる理由として「新人と抱き合わせ」「二次請けに流すだけ」「完遂するつもりがない」などを挙げた。今はここに「AIで効率化しているから本当に安くできる」が加わった。

つまり安い見積もりを見たとき、それが「ヤバい安さ」なのか「AI活用による本物の安さ」なのかを見極める必要が出てきた。見極め方は後述する新シリーズで書くが、一言で言うと「なぜその価格なのかを聞けばいい」。ちゃんとした会社は説明できる。

②開発手法編へのツッコミ:「ウォーターフォールかアジャイルか」より先に決めることができた

2022年に書いた記事では「作るものが決まっているならウォーターフォール、市場を見ながら育てたいならアジャイル、適材適所で選べ」と結論づけた。これは今も間違っていない。

ただ前提が一個崩れた。「作るものが決まっている」に至るまでのコストだ。

以前は要件定義フェーズだけでそれなりの時間とお金がかかった。だからこそ「しっかり要件を固めてからウォーターフォールで発注」という判断が合理的だった。

AIが入ると、プロトタイプを作るコストが激減した。「こういうものが欲しい」という段階から、動くものを触って確認するまでのスピードが桁違いに速くなった。つまり「まず小さく作って確かめる」のコストが下がったので、ウォーターフォールで要件を固め切る前にアジャイルで動かしてみる、という選択肢が現実的になった。

社長目線で言うと「完成イメージを固めてから発注する」という従来のやり方が、実は遠回りになっているケースが増えてきた。「ざっくりこういうものが欲しい」で動かし始めて、触りながら要件を詰めていく方が結果的に安くて早い、という話がちらほら出てきている。これってつまりアジャイルですよね。えらい方向からアジャイル化の波が来た。

③番外編へのツッコミ:「開発会社はゼロイチが苦手」は半分過去の話になりつつある

これが一番ひっくり返った。

2022年に書いた内容をざっくり言うと「開発会社はシステムは作れるけど、マーケティングや市場調査を伴うゼロイチのサービス立ち上げが苦手。作っても鳴かず飛ばずになりがち」という話だった。これは当時の現実として正直に書いた。今も半分は正しい。

ただ残り半分が変わってきた。

AIによってプロトタイプの制作コストが激減したことで、「作ってみて市場の反応を見る」というサイクルを回すコストが下がった。以前は「マーケティングもろくにせずに作って失敗する」というパターンが多かったが、今は「小さく作って、AIでユーザーの反応を分析して、すぐ直す」というループが現実的になってきた。

うちでやっている実験の一つが、AI50人にペルソナを割り当ててLPの評価をさせるシステムだ。リリース前にターゲット像に近いAIに評価してもらうことで、「刺さると思っていたコピーが実はズレていた」を事前に発見できる。以前なら実際にリリースして数字を見るまでわからなかったことが、開発フェーズで確認できる。

「開発会社はゼロイチが苦手」という話は、「今もマーケティングの素養が必要なのは変わらないが、仮説検証のコストが下がったことで参入しやすくなった」という状況に変わりつつある。

まとめ:前提が変わったなら、発注の仕方も変えた方がいい

3本の記事をひっくり返してきたが、結局何が言いたいかというとこうだ。

2022年当時に「システム開発の常識」として書いたことの多くは、AIによって前提ごと変わりつつある。費用の見方も、手法の選び方も、開発会社との付き合い方も。

これはエンジニア側だけの話ではなく、発注する経営者側にも影響する。「以前と同じ感覚で発注していると損をするケースが増えてきた」というのが正直なところだ。

じゃあどうすれば損しないのか。それを次のシリーズで書く。「AI時代、エンジニアがいない社長がシステム開発会社に騙されないための話」、そういうテーマで経営者目線の記事を書いていこうと思っている。

このシリーズを読んでくれていた人は、次も読んでもらえると嬉しい。


システム開発の謎が全てわかるシリーズ①〜開発費用編〜
システム開発の謎が全てわかるシリーズ②〜開発手法編〜
システム開発の謎が全てわかるシリーズ番外編1〜なぜシステム開発会社は自社でサービスを作らないの?〜

いいなと思ったら応援しよう!