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田沢湖から十文字へ


── みちのく一人旅・秋田編



わらび座を後にして、車を田沢湖へ向けた。


遠くの山々はうっすらと雪をかぶり、まるで冬の入口を知らせているようだった。


到着した田沢湖は、息をのむほどに澄んでいた。


湖というのは流れがないぶん淀む、と聞いたことがある。


けれど田沢湖は違った。


金色のたつこ像がきらめき、

水面の下では魚が群れをなして泳いでいる。


風も水も光も、生きているように見えた。


「深さ日本一」と聞けば納得の、静かな迫力があった。


そこからさらに山道を進み、乳頭温泉へ。


まさかあの雪のかかった山々の中へ入っていくとは思ってもみなかった。


ゆうべは雪が降ったらしく、

道の端にはところどころ白く残っている。


車のタイヤがすべらないよう、

慎重にハンドルを握った。


温泉では、静岡から来たという女性と意気投合した。


お湯につかりながら話すこと約1時間。


気づけば顔が真っ赤になり、

まるで“ゆでだこ”状態。


そのままの勢いで稲庭うどんを食べた。


つるりとした喉ごしに、秋田の優しさがしみわたった。


そこから角館へ下る。


外国人観光客の多さに驚きつつも、

私は屋敷よりグルメ派。


黒ごまソフトクリーム、メンチカツ、そしてプリン。


どれも「秋田に来てよかった」と思わせてくれる味だった。


夕方、十文字の道の駅に到着。


そこは、夜の静けさと安心感が同居する場所だった。


長い一日が終わり、

エンジンを切ると、車の中は小さな安らぎの巣になる。


ヘイホーのランタンが淡く灯り、

ピカポンがダッシュボードの上で見守っている。


今夜は風も穏やかで、心も温かい。


旅はまだ続くけれど、

この瞬間に「来てよかった」と思えた。





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