学生時代以来の外国語試験はアンダルシア色に染まる
にゃー!
以下、当日の記録として土曜日の筆記試験を振り返る。
先日、口頭試験を受けた。
今日は筆記試験だ。
できれば行きたくないが、何とかして行かなければならない。
先日のnoteでは、アンダルシア頼みと書いたが、今日は日本の力も借りたい。
彦根デートでもらった豚汁を朝食に頂き、大事にしまっておいたSOYJOYと温かい和紅茶をかばんに入れて試験会場に向かう。
◆
会場では、今日も受付は必要なく、受験生待機室に移動する。
既に数人が着席している。
すごい、時間前行動だ。
さすがにみんな今日はアンダルシア時間ではないのだろう。
なんて思ったが、そもそも受験生はみんな外国人じゃないか。
きゃはははは!!!
あ!あの声は、アラレちゃんだ!
また会える!と思ったが、その後、姿が見えない。
どうやら、アラレちゃんは別の待機室に案内されたらしい。
残念だが、声だけでもアラレちゃんの存在を確認できたことに喜ぶ。
数分後、試験の部屋に案内された。
1人ずつ名前を呼ばれる。
誰がどこに座るかも決まっているようだ。
部屋には6人の受験者、私は左側一番前の席だった。
机の上には、鉛筆とキャップのないボールペンが一本ずつ置いてある。
どちらも新品の感はない。
これを使うのだろうか。
読解とリスニングは鉛筆、ライティングはボールペンを使うと事前に聞いていた。
ものすごく潔癖症、というわけではないが、特にこの時期、誰が使ったかわからない鉛筆を数時間握りしめることに少し抵抗を感じた。
家から持ってきた鉛筆を使ってもいいか聞いてみる。
どうしてもそれ使いたいの?
どうしてもかと言われたらどうだろうかと考えたものの、控えめにうなずく。
〇〇小学校水泳記録会と書いてあるこの鉛筆は、実家でこの前見つけた。小学校の時にもらって、そのまま残しておいたらしい。懐かしくなって持ってきた。
数秒後、試験監督のお許しが出た。

読解の試験がスタートした。
70分はなかなか長い。
水泳記録会の鉛筆を片手に、長文を読んでいく。
私の席の前には、試験監督が横を向いて座っていた。
距離が結構近い。
読解試験が始まって10分程経過した。
前方から強い視線を感じて顔を上げると、試験監督が私の回答する様子をじっと見ていた。
驚く私に、「続けて」と試験監督が言う。
明らかに見過ぎだが、彼女も他にすることがないのだろう。
日本人がどうやって回答するのか興味があるのかもしれない。
しょうがないから、なるべく気にしないようにして問題に集中することにした。
30分ぐらいすると、右隣りから、ぐおぉーと聞こえてきた。
右方向を二度見する。
右隣の机に座っている男性が、高らかにいびきをかいて寝ていた。
試験監督もちょっとびっくりしていたが、起こさないことにしたらしい。
数分後、数人のお腹がリレーのように順番にぐるぐると音を立てる。
朝ご飯を食べていないのだろうか。
まだ暗いうちから始まった試験だものなと思っていたら、試験監督のお腹も鳴った。
しばらくして、私のお腹も鳴った。
やれやれ。
そんなことで、70分はあっという間に過ぎた。
試験終了10分前ぐらいに、試験監督はさっきの男性を起こしていた。
見直しも含め何とか終わったが、改めて振り返ってみると、肝心の試験内容は覚えておらず、あまり集中できていないことがよくわかる。
◆
解答用紙を回収するとき、お茶を飲んでいいか試験監督に聞いた。
いいわよ、でもあなた、そんなとこで飲んでこぼして解答用紙が茶色にならないようにしなさいね。もうちょっとこっち向いて飲みなさい。
はい、ありがとうございますと言い、右方向を向いて和紅茶を飲む。何だか小学生になったような気分だ。

興奮して買ってみたが、
これを日本で春巻きと呼べるのかはわからない。
そのまま休憩なしで、リスニングのパートへと移る。
リスニングは40分。
さすがに疲れたのか、
だんだんくらくらしてきてきた。
ああ、これはいかん。
でも、今ここで退出するのは悔しい。
何とか踏ん張り、くらくらしていたときの数問は勘で回答した。
やっと休憩になった。
今日の私の仙豆SOYJOYを大事に食べ、和紅茶を飲む。
「簡単だったな!」
「合格してると思う」
「僕は直前に過去問いくつかやっただけだけど、まあそんなに難しくないよ」
そんな声が聞こえてきた。
皆さんそんなに余裕なのか!
同じ部屋にいる受験生は、皆このあたりに住んでいる人たちのようだ。これまで試験を受けることはなかったが、今回何らかの必要に迫られてとか、進学や就職で必要だからといった理由で受験しているのかもしれない。流ちょうなアンダルシア弁を聞きながらSOYJOYを食べきった。
あなたはどう?と聞かれ、私?、いやまあ最後までいられれば御の字かな!と答える私に数人が不思議そうな顔をする。確かに、コンテクストなしには意味のわからない回答だった。

いつの間にか抹茶&マカダミア味が発売されていた!
最後はライティングだ。
机の上のボールペンを見て考える。
粗品などでよくもらえるボールペンを10倍ぐらい書きにくそうにした感じが漂っている。
角度によっては色が出ないだろうことが容易に想像できる。
じ、自分のボールペンを使ってもいいですか?
私の質問に、読解試験のとき寝ていた男性が笑う。
あなたのボールペン、青?
黒です。
じゃあだめだわ。私は何色でもいいんだけど、青じゃなきゃだめらしいのよ。
観念して、誰が使ったかわからないキャップのついていないボールペンを握りしめる。
ライティングでは、下書き用の紙が数枚もらえた。
80分で2本書くのは結構大変だ。
下書きに書いてから解答用紙に清書する時間があるだろうか。
時間が足りなくなってはいけないと思い、解答用紙に直接書き始めた。
案の定、書き出しからさっそく間違えた。
ああ、やってしまったと思い、二重線で消した。
私の目の前に座っていた試験監督は、これを見逃さなかったらしい。
あらあなた、それやめたほうがいいわよ。必ず下書きしてから書きなさい。めちゃくちゃじゃないの最初から。
めちゃくちゃ…。
新しい紙をもらえるだろうか。
だめもとで聞いてみたら、やっぱりだめだった。
すると、右後ろの席から、ぎゃー!と叫び声が聞こえた。
どうやら、右後ろの彼女も私と同じことをやったらしい。
ねえねえ、私も同じことやっちゃったわ!
彼女が私に話しかける。
しゃーないね!
彼女が私に言う。
そうね、しゃーない!
しゃーないパワーで、そのまま書き続ける。
ほらね、こういうことがあるから、必ず下書きよ、下書き。
試験監督が諭す。
ところで、試験というのは、こんな風に自由に話してもいいのだろうか。
昔、学生時代に受けたそろばんや英語の試験や入試や新卒時の入社試験を思い出す。
あの緊張感といったら。
今日のこの試験では、会場にも受験者にものんびりした空気が流れている。
それがいいかどうかは別として。
私が今日もまだぼーっとしているからだろうか。
何だかよくわからなくなってきた。
途中、別の試験監督が何度か部屋に来て、私たちの試験監督と何やらひそひそ話している。ひそひそ声だが、地声が大きいので、当たり前だがひそひそも大きい。小学生の聴力を持つらしい私は、どうしたってそっちに意識がいってしまった。
ライティングは12時20分までだった。
ライティングの試験が始まって少しして、部屋の時計を見る。
12時10分だった。
めちゃくちゃびっくりして、あと10分しかないじゃないかと一人でパニックに陥る。
慌てて自分の腕時計を確認する。
11時10分だった。
もう一度部屋の時計を見る。
12時10分だった。
そこで気づいた。
いつの間にか部屋の時計がどうかしたのか先に進んで1時間ずれているということに。
ああ、私としたことが、アンダルシアマジックに一本取られた。
誰も何も言わない。
時計なんぞ見ていないのかもしれない。
あせっていたのは私だけだった。
やれやれ。
誰かがくしゃみをした。
すかさず、!Jesús!(ヘスース!)と試験監督が言う。
後ろの方の席からは携帯の着信音が聞こえる。
通りからは、先日と同じようになかなかの大音量のロック音楽が聞こえる。
手書きの大変さにか、ふー!!とため息をつく受験生がいる。
読解試験で寝ていた男性は、試験開始から40分ぐらいすると立ち上がって、帰っていった。
他にも帰る人がいて、あーこんな手書きなんかさ久しぶりだからね、大変だったよ!と試験監督に話していた。
受験生も会場もアンダルシアに染まっている。みんなマイペースだ。
その後、試験監督は私の解答用紙を見て、できるだけきれいに書こうね、と言った。
やっぱり私のアルファベットは汚いのか。
しゃーない。
既定の文字数におさまっているかを数える時間がなかった。
これも、しゃーない。

そんなこんなで、気がついたら試験が終わっていた。
何とか最後までできたことに自分でも驚く。
ロシア人の女性と帰りが一緒になった。
スペイン人のご主人と今日まで一緒に勉強してきたそうだ。
ライティングは大変だったよねと話しながら歩く。
手書きというのがね!
そんなに速く手が動かないわよ!
お互いに幸運をね。
そう言って別れる。
試験会場を出ると、すっきりとしたアンダルシア晴れの空がまぶしかった。
◆
結果は3カ月ぐらいかかるらしい。
帰り道、学生の時以来の試験を受けたことに静かに興奮していた。
病み上がりとはいえ、できはともかく最後までできたじゃないか。
やるときはやるのだ私も。
今日はケーキ!!!
そう決めて、半ばよろよろになりながら石畳をゆく。
筆記試験当日、出発前にnoteを見た。
にゃー!でつながる皆さまからのメッセージを見つけ、なんとありがたいことかと思う。
そうだ、にゃー!で行くのだ!
会場では皆さまの温かさに包まれ、何とか最後まで座っていることができた。改めて、にゃー!をありがとうございました。
結果はともあれ、これを機会にもうちょっと真面目にスペイン語に向き合ってみよう。そんな風に思えたことがこの日一番の収穫だった。
何事も始めるのに遅すぎるなんてことはない。
7年目にしてスペイン語を「勉強」しようと思う自分にも呆れるが、まあそれも私らしい。
その前に、今日は今からたっぷり寝てやる!!
そう思っていた私に一通のテキストメッセージが届いた。
メッセージを読み、翌日日曜日の休息は月曜日までお預けになるだろうことが判明した。
でも、それはまた別の話。
にゃー!
