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5分SF|目をつぶる


「今日はどうされます?」

鏡越しに美容師が聞いた。

「少し若く見える感じで。あとはお任せします」

「分かりました」

髪を切り終えると、シャンプー台へ案内された。

仰向けになる。

顔に薄い布がかけられる。

私は目を閉じた。

「お湯加減、大丈夫ですか?」

「はい」

温かいお湯が頭皮を流れる。

美容師の指が髪の間を滑っていく。

気持ちいい。

足元で、

ガシャン。

何かが外れた。

ウィィィン。

低い機械音が続く。

「力加減、大丈夫ですか?」

「はい」

腹のあたりに振動が伝わってきた。

ガガガガガ。

頭皮を揉まれる。

眠くなってきた。

右腕が、ふっと軽くなった。

カチッ。

少しして、左腕も軽くなった。

「かゆいところ、ないですか?」

「大丈夫です」

頬に冷たいものが触れた。

キュイィィン。

顎の奥に振動が響く。

「流しますね」

「お願いします」

お湯が流れる。

足元でもう一度、

ガシャン。

私は完全に眠りかけていた。

「お疲れさまでした」

布が取られた。

私は目を開けた。

身体を起こす。

軽い。

立ち上がると、目線が少し高くなっていた。

鏡の前に座った。

美容師が髪を乾かす。

「だいぶすっきりしましたね」

「そうですね」

鏡の中の私は、少し若くなっていた。

目元の疲れは消え、顎は細くなっている。

肩の形も違う。

腕はすっきりして、脚も少し長い。

注文通りだった。

美容師がワックスで髪を整えた。

「どうですか?」

私は鏡の中の自分を見た。

横を向く。

正面を向く。

もう一度、横を向く。

「あの」

「はい」

前髪をつまんだ。

「ここ、もうちょっとだけ短くできます?」

「もちろんです」

美容師がハサミを持った。

「毛が入るといけないので、目を閉じてください」

本当は肩の形が気にいらないんだけどなと思いながら

わたしは目をつぶった。



5分SF
今日より少し先の未来を、5分以内で。
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