革靴を水洗いする
革靴は汚れている…
靴は家の外で履くからもちろん汚れています。日本の道は諸外国よりもはるかにゴミなども少なくて靴にとっては素晴らしい環境なのだろうけれど、それでもやっぱり汚れます。私はたまに公園や寺社仏閣に暇つぶしに行ったりするので、玉砂利の中を歩いたりすると砂埃などが革の表面だけでなくソールとアッパーの隙間、ウエルトやステッチの隙間に入ったりします。(そんなとこにはスニーカーで行けよ…と思うのですが、革靴のときも結構あるのです。ある程度のおじさんだと日常の基本がスニーカーではなく革靴なのです。だからなおのこと革靴が汚れる。)
しかし…革靴はちょっとしたものでも高額品。だからスニーカーのようにそうそう買い換えるわけにもゆかないのです。
そして今の季節…つまり夏なんて、本当に汗かきますよね。日本は湿度が高くて汗かいたりするので、靴の中はその影響で汚れてしまいます。
どうすればいいのか?
「革靴クリーニング:4000円!」とか、自分で出来ないことだけはわかるからクリーニング屋さんに出せば良い!と思う方もおられます。あれはドライクリーニング気味で靴にとっては良いのか悪いのかわからんものなのです。私も何度も出しましたが。特に靴底がセメント式のやつには結構良くないかもしれません。あまりいうと営業妨害みたいになるから難しいですが。剥がれやすくなる。(そしてクリーニング代、何度も出していると大変ですよね。3足〜5足を一度に出したら何万もなってしまいます。)
他方、ブーツなどを趣味で履いている方は一度は見たことがあると思いますが、ネット検索などで調べると「ブーツはサドルソーブというもので洗えば…」と記載されていたりします。レッドウイングなどのブーツはサドルソープで洗う。これは常識としてあります。サドルソープって馬の鞍(=サドル)を洗うためのものなんですけどね。
現実的な方法
実は革靴もサドルソーブで洗ったりもするのですが、実はとても身近な洗剤で洗うことが出来るのです。それは何を使うかというと…エマールやアクロンです。ビックリされる方もおられますが、実際に洗えるのです。ホントです。
なぜエマールなのか?
まず、そもそもなぜサドルソープで洗うのが安心なのか?という根拠なのですが、それはサドルソープには洗浄に必要な界面活性の成分とともに水洗いで抜けてしまう油分が入っているからなのです。革靴に残った古いワックスや油膜を除去しつつ、革に大事なpHなども考慮されている。革といってもクロム鞣し革とかタンニン鞣し革とか色々で、素人目には難しく感じるからです。
だったらサドルソープで洗えば良いじゃないかと思うのですが、デメリットもあります。それは端的にいうと「強すぎるのよ。」ということ。
エマールで洗うメリットは、「ワックスや古い汚れは、水洗いする前にほとんどの人がステインリムーバーなどで除去している」というのが実態としてあるし、「洗ったあと、ほとんどの人が半乾きの時にデリケートクリームを塗って乾きすぎを防止している」のも実態だから。つまりサドルソープだと過剰洗いみたいになってしまいます。別にそれでも悪くは無いんだが。冷静に考えてみると、「日本の道を歩く程度では外部からの汚れは少なくて、実は自分の汗とかの汚れを優しく落とせることが最重要」というのがポイントです。エマールの洗浄成分の方がサドルソープよりは弱い。見た目汚れても無い靴をきれいにするだけ…と考えたらエマールが都合がよいのです。
(★注意点★:もしもステインリムーバーやデリケートクリームを持っていないという方は、今回の記事よりも先に「日頃のお手入れ」をされるのが最初の一歩になるかと思います。いきなり水洗いするのではなく、まずはそちらの準備を整えることから始められるのが長い目で見ると正解かと思います。)
これとは別の角度からの視点もあって、靴がスエードとかヌバックのときです。これはエマールで洗ったほうが良いです。サドルソープはこれらの革にはちょっと不向きで、毛足がガチガチになったりします。エマールは優しく毛足も揃った感じに仕上がるし、泡切れも良いですから。
実際の手順
今回はスエードの「アルフレッドサージェント」の靴を水洗いしてみます。イギリスのノーザンプトンで製造された本格的な英国靴です。アルフレッドサージェントは数年前に無くなってしまい、今となっては幻のメーカーなので長く大事に履くためにきれいにしておきます。

手順
1.靴紐を外す
2.全体の埃を落とすために豚毛ブラシで軽くブラッシング
3.洗面台などで35〜40℃の湯を溜めてエマールを溶かして準備。
湯4リットルあたり10mlです。
4.溜めた湯に靴を浸け、人間用の洗顔ブラシやスポンジで優しく洗浄
大体10〜15分ほど。
5.洗面台の水を入れ替えて、すすぐ。(1回ではなく、2回を推奨)
各5分程度。
6.靴をタオルドライする。
7.扇風機の弱風を靴にあてる。(1時間ほど)
8.半乾きになるので、デリケートクリームで油分を補い革を保湿する。
9.シューキーパーを入れて靴の形を整えて、引き続き扇風機をあてる。
10.靴の中まで乾燥したら扇風機をやめて靴を休ませ数日自然乾燥。
ポイントは、9の段階でシューキーパーを入れることです。水洗い直後にシューキーパーを入れると靴が濡れていて革が伸びやすい状態のため、シューキーパーのバネのちからで靴のアッパーが伸びちゃったりするから、半乾きになって伸びづらくなってから入れるのが良いです。(逆に小さすぎる靴のときはバネのちからで伸ばすのもアリかもしれませんが、それはあくまで例外。)
洗浄後
これが洗浄後のアルフレッドサージェントの姿です。



どうでしょうか。写真では見た目がスッキリした感じなのは伝わると思いますが、やはり一番変わったのは履いた時に「なんか足が爽やかだな。軽く感じる」ということ。人間の足って結構繊細で、靴下も洗濯直後が一番心地よいじゃないですか。あの感覚です。
まとめ
革靴は、見た目の汚れが少なくても、日常の汗や湿気、細かなホコリや砂が確実に内部へ入り込みます。特にスエードは毛足の奥まで汚れが蓄積しやすく、放置すれば風合いや履き心地の低下につながります。
サドルソープは強力な洗浄力と油分補給力を兼ね備えていますが、スエードに使うと毛足が固くなるリスクもあります。対してエマールは中性でマイルドな洗浄力を持ち、泡切れもよく、毛足を柔らかく保ったまま汚れを落とせます。日本の環境で日常的に履く靴なら、エマールでのケアが十分効果的です。
今回のように、
1. 事前ブラッシングでホコリを落とす
2. 35〜40℃のお湯にエマールを溶かし優しく洗う
3. 半乾きで形を整え、自然乾燥
という基礎の流れさえ押さえれば、靴の見た目も履き心地も見違えるほど改善します。履いた瞬間に感じる「足の爽やかさ」は、見た目の美しさと同じくらい価値のあるメンテナンス効果です。
革靴は消耗品ではなく、手入れ次第で長く付き合える相棒です。日常のケアと定期的な丸洗いで、その魅力を何年も引き出していきましょう。
