日影規制とは何か?
はじめに
都市部で建物が高く・大きくなるにつれて、「隣の家に日が当たらない」「冬場、窓から日差しが入らない」といった問題が生じました。
そして、1972年6月27日の最高裁判所判決(いわゆる「日照権・通風権」を確立した判例)は、日照権と通風権が法的に保護されるべき権利であると初めて認め、違法な建築によって日照や通風が著しく妨げられた場合に損害賠償を命じました。この判決以降、建築基準法の改正や条例の強化が進み、日照や通風の確保が図られるようになりました。
こうした背景から、現在において住宅地などでは 建物が落とす影の時間 を一定以内に抑える「日影規制」が建築基準法第56条の2で定められています。
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「4時間日影」とは?
冬至の日(太陽高度が最も低い日)の午前8時〜午後4時を基準に、「ある地点が4時間以上影になる」範囲を指します。
建物設計では、隣地や道路上に4時間以上影を落とさないように検討することが、快適な日照・採光を確保する上で重要です。

出典:国土交通省近畿地方整備局HP
この図では、日影となる時間が2.5時間(青)および4時間(赤)となる範囲のラインがかかれています。
そして、敷地の境界からそれぞれ10m、5mのラインを点線でえがき、この2つのラインが、左図の点線を超えている部分を右図では超えないようにしているのが読み取れます。
なお、この実務での日影規制における測定面は、実際の地盤面にすると厳しいので、地盤面から1.5m(1階の窓の位置くらい)とか、4m(2階の窓の位置くらい)というように現実に即した高さで運用されています。

出典:板橋区HP
建築物の形状が日影に与える影響
ではつぎに建物の形状による影響を考えてみましょう。
建物の「高さ」や「東西方向の幅」「南北方向の奥行き」「配置(敷地内での位置)」によって影の広がりは大きく変わります。
特に重要なポイントは次の2つです:
東西方向の幅が広い建物ほど、朝から夕まで隣地に影が及びやすく、「4時間以上日影」の範囲が広くなります。
建物の高さも影の長さを決める要因ですが、4時間以上影になる面積への影響は、東西幅の方が大きい傾向があります。

配置計画の留意点
建物の配置を工夫することで、日影の影響を軽減できます。
特に重要なのが次の2点です:
1️⃣ 建物を南側に寄せ、北側境界から離隔を確保する
→ 太陽は南から照射するため、北側に影が伸びます。
建物を南に寄せることで、北側隣地に届く影の距離を短くできます。
※「北側に寄せる」は日影規制の観点では誤りとなります。
北側に寄せると北隣地が4時間以上影になる範囲が拡大してしまいます。
2️⃣ 東西幅を抑える(南北方向に長い形状にする)
→ 東西に長い建物ほど、長時間影が重なります。
南北方向に細長い形状のほうが、影が動いても重なりにくくなります。
その他にも、建物の主に北側をセットバック(上階を後退)させる、軒高を低く抑えるなどが有効です。
試験での出題傾向
高頻度の出題項目です。
令和3年(No6-2)・4年(No6-4)の環境設備では、
「4時間以上日影となる領域は、建築物の高さよりも東西方向の幅の影響が大きい」という設問が出ています。
また、「建物を北側に寄せることで日影を軽減できる」といった誤り選択肢が出題されることも考えられますので、影の方向性(太陽は南→北へ影を伸ばす)を理解しておくことが得点の鍵です。
まとめ
4時間日影を減らすには、
✅ 東西方向の幅を抑える
✅ 建物を南側に寄せ、北側隣地への距離を確保する
✅ 高さを抑え・セットバックで影の形を調整する
この3点が最も効果的です。
試験対策でも設計実務でも、影の向きと時間変化をイメージできるようにしておきましょう。
参考・出典:
法令・制度(一次情報)
e-Gov法令「建築基準法」:別表第四(第五十六条の二関係)=日影規制の根拠条文。 laws.e-gov.go.jp
内閣府・規制改革推進会議資料「日影規制の概要(建築基準法第56条の2)」:制度の全体像・対象区域の整理。 内閣府ホームページ
自治体の解説・手引(測定高さ・時間帯・5m/10m帯など)
世田谷区「日影規制のあらまし」:冬至8–16時/測定面高さ(1.5m・4m)の解説付き。 世田谷区公式サイト
神戸市「日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)」:対象建築物・区域の説明。 神戸市公式サイト
公式過去問(出題本文)
(試験実施団体)JAEIC「令和4年 一級建築士 学科Ⅰ・Ⅱ 問題集 PDF」※学科Ⅱに“4時間日影と形状(東西幅)”の記述あり。 jaeic.or.jp
参考書籍の紹介
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