太陽位置図を読み解く
はじめに
建築計画において、太陽の位置を理解することは、採光・日射・日影のすべての出発点です。居室の明るさの具合や、室内の適切な温熱環境を制御したり、隣地など周囲の建物への影の具合を配慮する設計が必要ですが、その大元が日射の具合だからです。
ですから、設計をする上で太陽の位置と日射の具合を正しく把握することが重要になります。
その情報を読み取ることができる便利アイテム、それが「太陽位置図」です。
この図を“読める”ようになると、窓の設計、庇の寸法、敷地の日照環境などが論理的に根拠を持って説明できるようになります。
さらに、一級建築士学科試験では頻繁にこの「太陽位置図」から派生する問題が出題されています。まあ、当然ですよね。
この記事では、太陽位置図の基本から出題傾向までを、実務と試験の両面から解説します。
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太陽位置図とは?

太陽位置図とは、ある地点における太陽の動きを「時刻」「方位角」「高度角」で示した図です。
日本の建築設計では、一般的に北緯35°(東京付近)の図が使われます。
太陽位置図の構成
太陽高度(Altitude):地平線から太陽までの角度
太陽方位角(Azimuth):真南を基準とした太陽の方位
時刻線:真太陽時(Solar Time)で表記
日付線:夏至・春分・秋分・冬至などの軌跡
図の中央下が「南(S)」、左が「東(E)」、右が「西(W)」。
例えば、夏至の日は太陽高度が高く(南中時約78°)、冬至の日は低く(約31°)なります。
つまり、この図一枚で「季節」「時刻」「方位」をすべて把握できます。
建築計画への応用
建築設計では、太陽位置図をもとにたとえば次のような検討を行います。

このように、太陽位置図は“環境設計のマスター”とも言えます。
「どの時刻に・どの方位から・どの高さで」光が来るかを把握することで、光の質・影の長さ・熱取得の設計が可能になります。
また、太陽位置図より直感的に読み取れるようにしたいなど、これらの検討をするのにやりやすくするため、天球に太陽の軌跡を描いてみたり、日影の動きを掴みたいから派生する形で日影曲線を描いてみたりという具合に、工夫された図が色々と出回っています。
過去問題の出題傾向と解説
太陽位置図の知識は、主に学科Ⅱ(環境・設備)で出題されています。ときたま学科Ⅰでの出題もあります。(学科Ⅰは総合科目の位置付けがあるため。)
出題パターン①:太陽位置図の読解
令和5年 学科Ⅱ問6
「北緯35°の地点における太陽位置図である。この地点における太陽の位置に関する記述のうち、最も不適当なものはどれか。」
上記で例示した過去問題は単純に図の読み方がわかっているかどうかだけの問題でしたので、サービス問題に近い出題でした。
この問題の本試験での出題選択肢は過去問題集などを参照していただくとして、ここではもう少し掘り下げた問題とするときの、問題作例を説明したいと思います。
たとえば、季節ごとの特徴を問う問題を考えるとすると・・・
春分の日の太陽は真東から昇り真西に沈む。
→影の軌跡の先端が直線上であることに気がつけるか?夏至の日の太陽は日の出・日の入りとも北寄りである。
→北側壁面にも日射があることに気がつけるか?冬至の日の太陽は日の出・日の入りとも南寄りである。
→北側壁面には日射がないことに気がつけるか?夏至と冬至の南中時の太陽高度は、どちらが高いか?
→暑いときは日射を遮りたい、寒いときは日射を取り入れたいという時
に、庇の計画などで太陽高度を理解して計画できるか?
→季節ごとにおける終日日射量の違い(大小)について、各方位の壁面や
水平面(屋根など)の大小関係が類推できるか。(ちゃんとデータでは
示せるわけですが、このイメージができるかが大切です。)
と、こんな具合です。
➡️ 狙い:$${\underbar{太陽高度と方位角の関係}}$$を理解しているか。
つまり、「図を読めるか」ではなく「太陽の動きを説明できるか」を問う問題です。
太陽高度や時刻などの数値が選択肢で書かれていても、攻略のポイントはこれになります。あとは図の読み方がわかっていればOKとなりますね。
出題パターン②:南中高度の計算
夏至の南中高度を求めよ(北緯35°の地点)
図が用意されていて読み取るパターン or 計算して求めるパターン
では、実際に南中高度はどうなのよ?という問題もあるわけで、太陽位置図があれば読み取れば良いので簡単ですが、計算しないとという場合もあります。計算をしてみたいと思います。
まずは計算式
南中高度=90°−緯度±23.4°
これは地球の地軸が太陽に対して23.4度傾いているからになります。

左の図がJune(6月)、右の図がDecember(12月)で地軸はεで示されていますが、厳密には地軸はぶれているのでこのNASAの図では記号にしているのかと思います。一般的には丸めて「23.4度」で表現されます。
ではこれに基づいて季節ごとに計算してみると・・・
→ 夏至:約78°、春分/秋分:約55°、冬至:約31°
➡️ 狙い:地軸の傾き(23.4°)と緯度の関係を理解しているかということになります。
出題パターン③:日射量と方位面の比較
令和4年 学科Ⅱ問6-2
春分・秋分の日における南中時の直達日射量は、水平面の方が南向き鉛直面より大きい。
正誤:○
この過去問題は、まずは太陽高度がわからないとなのですが、太陽位置図が示されていれば図から読み取りとなります。図が示されていないときは、前述の太陽高度を算出すれば正誤判定できる問題の一例です。
ちなみに、太陽高度がわかったら次のような方法で大小関係を判断します。

春秋分の太陽高度は約55°になりますので、図のように水平面と鉛直面にベクトル分解してあげればよいということになります。
まとめ
太陽位置図は、ある地点における太陽の動きを「時刻」「方位角」「高度角」で示した図です。一級建築士試験では、この理解が「環境・設備」「計画」「設計製図」のすべてに直結します。
この太陽位置図をもとにして、「日影曲線」「終日日影範囲」「日射取得」「日射遮蔽」などへと発展していきます。
理解が積み重なるほど、太陽位置図より派生した図の理解力があがり、図面上でのいわば“太陽を操る”感覚が磨かれ、問題対応力が向上していきますので、太陽の動きをイメージしながら学習していきましょう。
参考書籍の紹介です
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