ドル安からユーロ独歩高へ!
トランプ関税発動による米景気悪化懸念から、米長期金利が急低下、ドル全面安相場が続いてきた。ここに来て、2/24ドイツ総選挙を受けた政権交代により、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)がこれまでの緊縮財政を改め、3/5積極財政への具体的な方針転換を発表した。これにより、独長期金利が上昇、ドル安からユーロ独歩高相場への移行が明確となってきた。今後のユーロ円相場の行方を解説する。
1.歴史的な財政政策転換を図る新政権
トランプ政権から、欧州の安全保障は欧州で賄うよう、NATOの防衛費負担の大幅増を要請されていたことに加え、2/28米国・ウクライナの鉱物資源契約合意決裂を受け、米国がウクライナへの軍事支援の一時停止を発表するに至り、欧州の安全保障強化の気運が急速に高まった。3/5ドイツの次期首相候補であるキリスト教民主同盟(CDU)メルツ党首は、連立政権の発足に向け協議を続けてきたドイツ社会民主党(SPD)との間で、国防費増強に向けて、今までの厳格な債務抑制策を緩和することで合意した。
具体的には、「債務ブレーキ」の改革である。ドイツでは野放図の債務膨張を抑えるため憲法に相当する基本法で、財政赤字を国内総生産(GDP)の0.35%までに抑える必要がある。これについてメルツ氏は、GDP比1%を超える国防費について、債務ブレーキの対象から外す方針を表明した。これにより、大規模な財政改革の一環として、5,000億ユーロ(約80兆円)の特別基金の創設を発表した。
これを受け、ドイツの長期金利は、図表1の通り、1日で0.30%上昇し、ベルリンの壁が崩壊しドイツ統一の準備が進められた1990年以来、過去35年で最大の上昇率を記録した。今後、ドイツの戦後で最大の財政拡大が実現するとの見方も台頭しており、メルツ氏の提案をドイツの主要株式指数であるDAX指数も好感し、一日で3.4%と3年ぶりの上昇を記録した。

2.ドイツの国防費増に同調するEU
3/6のEU首脳会議において、加盟国に課せられている財政赤字をGDP比3%以内、債務残高を60%以内に収めるEUの財政ルール変更の可能性を議論し、今後数兆ユーロ規模の防衛費拡大を目指す可能性が報じられている。
3.日独の長期金利の動きとユーロ円の関係
3/5独長期金利0.3%上昇し、3/6日本の長期金利が0.07%上昇した結果、日独金利差は、1.3%まで拡大したことで、ユーロ円相場は、図表2の通り、先週の安値154円台から6円以上、ユーロ高に振れている。

4.覚醒したドイツ・覚醒しない日本
トランプ政権誕生以降、欧州の安全保障から米国が離脱する兆候が出てきたことで、これまで財政規律に厳しかったドイツが覚醒し、積極財政に前向きなCDU・CSUが政権奪取したことの衝撃が金融市場にも広がっている。
一方、米国の核の傘に安住する日本は、米国から防衛費3%増への要請にも、石破総理は防衛費は自国で決めるとのスタンスを示し、自国第一主義を貫くトランプ政権以降の米国にも、従前と変わらず依存する姿勢を変えていない。何よりも緊縮財政に固執する石破政権が続く限り、日本の長期金利上昇の余地は乏しく、今後、積極財政による国防支出増により3年ぶりのプラス成長への転換が見込まれる、ドイツとの景況感格差は開くことが予想される。これまで、景気低迷により金融緩和を堅持してきたECBも、本日の理事会において、ドイツの歴史的な財政政策の転換を考慮し、今後の利下げ打ち止めを示唆する可能性がある。これは、日独金利差の更なる拡大を意味し、ユーロ円相場は、再度170円方向に水準を切り上げることが想定される。
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2025年3月6日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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