選挙公報の視覚障害者向けアクセシビリティの現状─読みにくさを乗り越える労力は僕らが乗り越えなければならないものなのか
目が見えない僕にとって、選挙公報は「情報」ではなく、「壁」になることがある。
候補者の訴えや考えに耳を傾けようとしても、まずその内容にたどり着けない。
スクリーンリーダーで選挙公報のPDFを開いたとき、その行為は、内容を読むというより、「読めるかどうか」を確かめる作業になってしまっている。
今回の参議院選挙に向けて、いくつかの自治体の選挙公報を確認した。その結果を、ひとりの視覚障害当事者として、ここに記しておきたいと思う。
選挙公報とは
選挙公報とは、候補者の氏名や政見、経歴などを記載した公的文書であり、選挙の際に各家庭に配布される。
有権者が候補者の情報を比較検討するための重要な情報源であり、視覚障害者にとっても、自らの意思で投票先を選ぶうえで不可欠な資料だ。
近年では、紙媒体だけでなく、自治体のウェブサイト上でPDF形式などによるデジタル公開も進められているが、視覚障害者にとって「閲覧可能」と「実際に読める」には大きな隔たりがある。
音声読み上げ対応PDFの検証結果
選挙公報のPDFは、各選挙管理委員会のウェブサイトに掲載されている。
今回の参議院選挙にあたって、いろいろな自治体の選挙管理委員会のウェブサイトを見てみた。
どの自治体の選挙管理委員会のウェブサイトにも、音声読み上げ対応のPDFが用意されている。
WindowsのChromeでそれらPDFを開いてスクリーンリーダーで見てみた結果、次のようなことがわかった。
基本的にHTMLタグによる構造化はされていない。すべて「見出し」になっているPDFもあった。
見える人のためのポスター仕様のPDFをテキストにしただけのものが多く、読み上げの順序がちぐはぐになり意味をとるのがむずかしいものが多かった。
そもそも音声読み上げ対応のPDFを見つけるのが難しいウェブサイトもあった。
音声読み上げ対応は「対応」とは言い切れない
現状のPDFは決して読みやすいとは言えない。
完全に読めないわけではないが、読みにくかった。
この読みにくさを乗り越えて内容を把握する負担は、目の見えない僕らが乗り越えなければならないものなのだろうか。
しかし、世界は前進している。
音声読み上げ対応のPDFは、以前は存在しなかった。
そのうち、スクリーンリーダーで読みやすい選挙公報が掲載される時代がやってくるだろう。
今はその過程の途中にある。
僕が何もしなくても、きっと世界は前進するだろう。
しかし、何も声を発しなければ、現状でうまくいっているということになりかねない。
だからこうして書いている。
せめてテキスト形式でも構わない
では、どうなると読みやすいのか。
まずは、スクリーンリーダーでの検証をしてほしい。読んでみて、検証されていないことがすぐにわかった。検証されていないことが感じられてがっかりした。
また、選挙管理委員会から要求される音声読み上げ対応PDFの様式が不十分だと思われる。様式を見直してほしい。この点は特に今の状態でうまくいっていると思われている気がしてならない。
そして、そもそもPDFでなくても構わない。テキスト形式でもいいので、そのままウェブサイトに掲載してほしい。そこにさらにHTMLタグがつけられでもしたら、さらにいい感じになるだろう。
最後に個人的なこと
ところで、いつからこんな風に自分の意見を公にするようになったのだろう。
自分のためだけでなく、より良い未来のためになにかできればと思う気持ちが出てきたからだろうか。
いや、自己評価はそうではない。
単純に年を取っただけのことだろう。
