見出し画像

鉄との戦い 第4話:気づけば孤独の中にいた

誰のための道なのか、見えなくなった世界で


「継ぐ」と言っていないのに、周囲はもう決めていた。
気づけば、俺の意思とは関係なく、道は敷かれていた──。

今回は、そんな“押しつけられる継承”の中で、
誰にも必要とされていないと感じた、ある瞬間の話です。


 継ぐとは言っていなかった。
でも、戻った時点で、周りはそう理解していた。

「あとは頼むよ」「もうお前の代だな」
そういった言葉が、俺の意志とは関係なく押し寄せてくる。

 気づけば、父からも社員からも、俺があとを継ぐ前提で話が進んでいた。

 そんな中で一番苦しかったのは、
協力会社の社長たちの反応だった。
 
 何を話しても聞き入れてもらえず、
話がかみ合わないことが何度もあった。

 あきらかに、裏で父が何かを吹き込んでいる――そんな雰囲気があった。

 あるとき、ある社長に思い切って聞いた。
「親父が、何か言ってるんですか?」

 その人は少し間をおいて、静かにこう言った。
「親の言うことは、すべて正しいんだよ!」

 それ以上、何も話す気がない顔だった。

 父が何を言ったのか、真実は聞けなかったけど、
俺の言葉より、父の言葉が正しいという空気が、そこにあった。

 責任だけを押しつけられて、自由も意志もない。
自分の正義なんて通じない。

「親は子どもを心配している」なんて言葉は、きれいごとにしか思えなかった。
 本当は、自分が助かることだけを考えて、
俺を犠牲にすることに、何のためらいもない人なんだと思った。

 自分が何を言っても意味がない。
 そう思った瞬間、俺はこの場所で、
誰にも必要とされていないような気持ちになった。

 気づけば、孤独の中にいた。


 あとがき

 “言葉が届かない”というのは、本当に辛いものです。

 たとえ相手が善意からの言葉だったとしても、
それが自分の痛みや意志を押しつぶすものであれば、
ただの「支配」に感じてしまうことがあります。

 誰かにとって、この話が「わかる」と感じる一歩になれたなら、嬉しいです。

#鉄との戦い #事業承継 #実話マンガ #町工場

いいなと思ったら応援しよう!

鍛冶川 湊 『鉄との戦い』を読んでくださりありがとうございます。 この物語が少しでも心に残ったなら、応援いただけると次の力になります。