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【Stable Diffusion】LoRA商品を7週間で3チャネル同時ローンチした全記録【2026年】

2月22日、3つの販売チャネルで商品が並んでいた。

7週間で何が起きたのか。

美大で日本画を学び、英国で博物館学を修めた人間が、AI画像生成の世界に飛び込み、「金箔の質感をAIに刻む」という商品を作り、LP・SEO記事・販売チャネル・導線設計まで構築した全記録。




この記事の内容


  1. なぜ「質感LoRA」だったのか

  2. LoRA学習 —— 数百回の試行錯誤

  3. LP設計 —— 1,006行のセールスページができるまで

  4. SEO記事 —— 集客の種を蒔く

  5. 販売チャネル構築 —— 1日で3チャネル開通

  6. AIとの協業 —— 4つのツールの使い分け

  7. 数字で振り返る7週間

  8. 次にやるならこうする




こんな人に読んでほしい


  • AI画像生成でデジタル商品を作って販売したい人

  • LoRAに興味があるが、何から始めればいいか分からない人

  • 一人でプロジェクトを回すためにAIツールを活用したい人

  • LP・SEO記事・販売チャネルの構築プロセスを知りたい人




第1章: なぜ「質感LoRA」だったのか(一部無料公開)


高校の美術科で日本画を学んでいた頃、岩絵の具や水干絵の具で描く時間が好きだった。

鉱物を砕いた粒子を膠で溶いて、一筆ずつ重ねていく。完成までに何日もかかる。でも、その「遅さ」が僕にはもどかしかった。アイデアは絶えず湧いてくるのに、手が追いつかない。

日本画が嫌いだったわけじゃない。むしろ好きだからこそ、もっと速く、もっとたくさん試したかった。

公立芸大で芸術学を学んだ後、イギリスの大学院で博物館学の修士課程に進んだ。そこで目にしたのは、日本とはまるで違うデジタルアーカイブの世界だった。肌感覚で、日本より5年は進んでいると感じた。

帰国後、AI画像生成の世界に触れた。技術的にはすごい。でも、美術を学んできた目には一発で分かる違和感があった。

のっぺりしている。

高校の美術科で最初に叩き込まれたこと──1つの絵に、見せたいポイントは1つ。そしてもう一つ、決定的に足りないもの。質感だ。

この先の内容は有料エリアとなります。

全部が繋がった瞬間


日本画の実技経験。芸術学の理論。英国で見たデジタルアーカイブ。そしてAI画像生成の技術。

バラバラだった経歴が、LoRAという仕組みを知った時に一本の線になった。

CC0ライセンスで公開されている美術館のコレクション画像を学習データに使えば、著作権の問題をクリアしながら、本物の質感をAIに教えることができる。自分が日本画で培った「質感の目」が、何を学習させるべきかの判断基準になる。博物館学で学んだアーカイブの知識が、学習データの選定に活きる。

これまでの経験がAIを介して統合されていく。

そのプロセスを体験したのが、プロジェクト開始から1ヶ月目くらいの頃だった。「これはビジネスになる」ではなく、「これは自分にしかできない」という確信に近かった。

第2章: LoRA学習 —— 数百回の試行錯誤

LoRA学習初期の違和感 — 質感の不自然さとの格闘


最初のLoRAは、控えめに言ってひどかった。

金箔の質感を再現しようとして学習を回したが、出てきた画像には質感どころか意味の分からないノイズが混じっている。関係ない場所に手が生えたり、唐突に建物が出現したり。質感以前の問題で、異物が混入した気持ち悪い画像が量産された。

しかも当時はClipDrop(画像の不要部分を消すツール)の存在を知らなかったので、生成後の加工にも苦慮した。出てきた画像のどこが学習データの影響で、どこがノイズなのかを切り分けること自体が手探りだった。

胡粉の白100色問題 — 微妙な色差をLoRAに学習させる方法


金箔の色味は、想像以上に複雑だった。

「金色」と一口に言っても、新しい金箔と経年変化した金箔では色が全く違う。光の当たり方で赤みが強くなったり、青みが差したりする。アンミカさんが言っていた「白って100色あんねん」の世界が、金箔にもそのまま当てはまる。

特に難しかったのが「貫入」の表現だった。金箔の表面に入る細かなひび割れのパターン。これを再現するプロンプトは、「crack」とか「fissure」とか、ひび割れを意味する単語だけでは出ない。まったく別次元のプロンプトの組み合わせでしか近い結果が出ず、しかもかなりアバウトでランダム。同じプロンプトでも生成するたびに結果が変わる。

金箔の光り方をAIに「教える」というより、AIが偶然それらしいものを出した瞬間を「捕まえる」作業に近かった。

金箔LoRAの過学習問題 — 全てが金色に侵食される現象


過学習という問題にも直面した。

LoRA学習でパラメータを詰めすぎると、モデルが「金箔」という概念に引きずられすぎて、何を生成しても金箔まみれになる。人物を描こうとしても、背景を描こうとしても、全てが金色に侵食される。

ひどい時には、美女が金箔に取り込まれたような画像が出てくる。人物の肌が金箔のテクスチャに置き換わり、髪が金箔の粒子に溶けていく。

正直に言えば、アート表現としては面白いと感じる瞬間もあった。「金に呑まれる人間」というコンセプトで作品にできるかもしれないとも思った。でも、商品として世に出せるクオリティではない。LoRAの目的は「質感を纏わせる」ことであって、「全てを質感で塗りつぶす」ことではない。

LoRA学習パラメータの引き算 — 過学習を防ぐ調整術


突破口は、意外なところから来た。

高校の美術科で習った、どさ回りの彫刻の話。素材から形を彫り出していく「マイナスの仕事」。足すのではなく、削ぎ落とすことで本質にたどり着く。

この原則が、LoRA学習にそのまま当てはまった。

それまでの自分は、学習データを増やし、プロンプトを複雑にし、パラメータを足していた。もっと良くなるはずだと思って、足し算を続けていた。

逆だった。

学習データから無駄なものを削ぎ落とす。ノイズの原因になる画像を一枚ずつ取り除く。プロンプトもむしろ弄らないほうがいい。最小限の、しかし質の高い学習データから、シンプルなプロンプトで生成する。

そうしたら、精度の良い画像ができるようになった。

金箔の乱反射が自然に出る。螺鈿の虹色が角度に応じて変わる。岩絵の具の粒子の凹凸が感じられる。「足りない」と思って足していたものを全部取り除いた先に、本物の質感があった。

第1章で書いた「1つの絵に主役は1つ」と同じことだった。学習データにも、主役は1つでいい。




Civitaiに金箔LoRAを無料公開した。宣伝は一切していない。

4日で29ダウンロード。レビューが5件ついて、全てポジティブだった。

宣伝ゼロでこの数字が出るということは、需要が本物だということだ。「金箔の質感をAIで再現したい」と思っている人が、世界のどこかに確かにいる。

数百回の試行錯誤は、無駄ではなかった。

第3章: LP設計 —— 1,006行のセールスページができるまで

LP構成19セクションの設計 — セールスページの情報設計


LP(ランディングページ)を書き始めた時、最初に決めたのは構成だった。

商品2(LoRA学習マスターコース)のLPは最終的に1,006行のHTMLになった。商品1(質感LoRAパック)のLPも669行。合わせて1,675行。個人の商品ページとしては異常なボリュームだと思う。

ただし、長いから良いわけではない。19のセクションにはそれぞれ役割がある。

Hero(ファーストビュー)で世界観を伝え、問題提起で「AI画像に足りないもの」を突きつけ、解決策として質感LoRAを提示する。Before/Afterで効果を見せ、作例で実力を証明し、技術説明で信頼を得る。カリキュラムで中身を見せ、価格で納得してもらい、FAQで不安を消し、CTAで行動を促す。

この流れは、Claudeと何度もやり取りしながら組み上げた。「ここで離脱されるから、この位置にもう1回CTAを入れよう」「技術説明が長すぎるから、図解で圧縮しよう」。そういう調整を繰り返した結果の19セクションだった。

墨黒×金箔×Shippori Mincho


デザインシステムは、LPを書き始める前に決めた。

背景は墨黒。アクセントに金箔のゴールド。フォントはShippori Mincho(しっぽり明朝)。和の世界観をデジタル上で表現するためのルールだ。

このルールは、LP、ブログ記事、商品ページ、全てに統一した。ページを遷移しても「同じブランドのサイトだ」と感じられるようにするため。色コードもフォントサイズも余白の取り方も、全部ドキュメントに書いて固定した。

これが後になって効いてくる。新しいページを作るたびにデザインを考え直す必要がない。Claude in Chromeに「デザインシステムに従って作って」と指示すれば、統一されたページが出来上がる。

「刻む」と「纏う」 — セールスコピーの動詞選定

セールスコピーで一番時間をかけたのは、動詞の選定だった。

最初は「AIで日本画の質感を再現する」と書いていた。間違ってはいないが、弱い。「再現する」は受動的で、読者の心に引っかからない。

Claudeとの壁打ちの中で「刻む」という動詞が出てきた。「質感をAIに刻む」。LoRA学習が、モデルの重みに質感のパターンを刻み込む行為であるという技術的な正確さと、金属に模様を彫り込む工芸的なイメージが重なる。

商品1のLPでは「纏う」を使った。「質感を纏わせる」。LoRAを適用することで、生成画像が質感を身に纏うというイメージ。

動詞を1つ変えるだけで、ページ全体のトーンが変わる。「刻む」と「纏う」が決まった時点で、世界観の骨格が固まった。

チェックリスト44項目


LPの品質を担保するために、44項目のチェックリストを作った。

LP構造・コピー、ビジュアル、コンバージョン、UI/UX、SEO、法的要件、スライド、デプロイ、分析。9つのカテゴリに分類して、1項目ずつ潰していく。

このチェックリストは、最初からあったわけではない。作業を進める中で「あ、これも確認しないとダメだ」と気づくたびに項目を追加していった。特定商取引法のページは忘れがちだし、OGP画像(SNSでシェアした時に表示される画像)の設定も漏れやすい。

最終的に44項目になったこのリストは、そのまま商品4-B(テンプレートパック)の一部として販売する予定だ。7週間の試行錯誤が詰まっている。

表現の強度調整


もう1つ、LPで重要だったのが「表現の強度調整」だった。

Claudeに「もっと強い表現で」と指示すると、「完全再現」「唯一無二」「他では手に入らない」といった言葉が出てくる。マーケティング的には正しいかもしれない。でも、事実に基づかない強い表現は信頼を失う。

「完全再現」は「高精度で再現」に直した。LoRAが物理的な金箔を100%再現できるわけではない。「唯一無二」は削除した。将来、同じアプローチで質感LoRAを作る人が出てくるかもしれない。

この調整は、AIに任せきりにできない部分だった。表現の強さと誠実さのバランスは、自分の責任で決めなければならない。

第4章: SEO記事 —— 集客の種を蒔く

二刀流


SEO記事は、noteと自ドメインの二刀流で展開した。

noteに3本。自ドメイン(texture-lora-lab.com/blog/)に3本。合計6本。

noteの利点は、プラットフォーム自体のドメインパワーが強いこと。noteに書いた記事は、個人サイトに書くよりもGoogle検索で上位に表示されやすい。既存のnoteユーザーの目にも触れる。

自ドメインの利点は、ブランドの統一とデータの所有。GA4で訪問者の行動を追える。デザインシステムを適用して、LPと同じ世界観の中に記事を置ける。長期的な資産になる。

同じテーマを両方に書くわけではない。それぞれに役割を持たせた。

note記事: RunPodの使い方(LoRA学習の環境構築ガイド)、オープンソース素材で再現する日本画質感、LoRA学習のコスト比較

自ドメインブログ: RunPodガイド(より詳細な技術解説版)、オープンソース日本画素材の活用法、LoRA学習コスト比較(RunPod vs ローカル vs Colab)

noteで興味を持った読者が、自ドメインに来てLPにたどり着く。その導線を意図的に作った。

「何ができるかは見せる。どうやるかは見せない」


SEO記事を書く上で、最も重要だったルールがある。

情報公開ガイドライン。「何ができるかは見せる。どうやるかは見せない」。

LoRAで金箔の質感がこれだけ再現できる、ということはSEO記事で見せる。実際の生成画像も載せる。でも、学習パラメータの具体値やプロンプトの中身は書かない。それは有料コンテンツの領域だから。

このガイドラインは最初から明確に決めていたわけではない。記事を書き進める中で「あ、これは出しすぎだ」と気づいて線引きした部分もある。第8章でも書くが、情報公開ガイドラインは最初に決めておくべきだった。後から線引きを変えると、既に公開した記事との整合性が崩れる。

16箇所の矛盾


整合性チェックは、このプロジェクトで最も痛い教訓の1つだった。

SEO記事3本、LP 2本、商品ページ、スライドテキスト──これらの間で、情報の矛盾が16箇所見つかった。

価格が違う箇所。サポート条件が古いまま残っている箇所。「全6セクション」と書いてあるのに実際は7セクションになっている箇所。販売先が「Brain」のままで「BOOTH」に更新されていない箇所。

原因は明確で、プロジェクトが進むにつれて判断が更新されたが、過去に作ったコンテンツへの反映が追いついていなかった。サポート期間が60日から30日に変わった。連絡手段がDiscordからX DMに変わった。販売先がBrainから独自サイト(Stripe決済)に変わった。

これらの変更は正しい判断だったが、変更のたびに全コンテンツを横断的に更新する仕組みがなかった。

Claudeに全ファイルを読み込ませて整合性チェックを依頼し、16箇所の修正指示書を作成。Claude in Chromeに渡して一括修正した。人間が手作業でやっていたら、見落としが確実に出ていたと思う。

第5章: 販売チャネル構築 —— 1日で3チャネル開通

Civitaiで需要を確かめる


販売チャネルの構築は、実はプロジェクトの後半に集中している。

最初にやったのは、Civitaiでの無料公開だった。金箔LoRAを無料でダウンロードできるようにして、需要があるかどうかを確かめる。

結果は第2章で書いた通り、4日で29ダウンロード、レビュー5件。全てポジティブ。宣伝は一切していない。

この数字を見て「有料で売れる」と判断した。無料で29人がダウンロードするということは、有料でも一定数の購入者がいるはずだ。しかもレビューが全部ポジティブということは、品質に問題がないことが第三者によって証明されている。

Civitaiは販売チャネルではなく、需要検証チャネルとして使った。これは結果的に正しい順序だったと思う。

$89とBOOTHのAI規制


Gumroadでの価格は$89に設定した。

この価格は、Civitaiや他のマーケットプレイスで販売されているLoRAパックの相場を調査した上で決めた。安すぎると品質を疑われるし、高すぎると手が出ない。3種のLoRA+プロンプト100個+使い方ガイドというパッケージの内容を考えると、$89は妥当なラインだと判断した。

BOOTH(国内向け)では¥9,800に設定。日本のデジタルコンテンツ市場では、1万円を切る価格帯が購入の心理的ハードルを下げる。

BOOTHへの出品では、1つ調査が必要だった。AI生成作品への規制だ。

pixivが運営するBOOTHは、2023年5月以降、AI生成作品への対応を段階的に強化している。特定の作家を模倣した学習モデルを使った作品や、類似性の高い作品の大量出品に対して、検索結果からの除外やアカウント停止の措置を取るとしている。

TextureLoRALabの場合、学習データは全てCC0ライセンスの美術館コレクション画像。特定の作家への依拠性はゼロ。出品も1商品のみ。BOOTHの規制対象には該当しないと判断して出品した。

ただ、この調査にはそれなりの時間を使った。規約を読み込み、関連記事を調べ、リスク評価をまとめた。AIで商品を作って販売する以上、プラットフォームの規制は常に意識しておく必要がある。

pixivの400エラー


BOOTHのアカウント作成では、pixivとの連携で400エラーが出るという障害にも遭遇した。

技術的にはたいした問題ではなかったが、「販売チャネルを開通させよう」と勢いがついている時にエラーで止まるのは地味にストレスだった。こういう予期しない障害は、プロジェクトには必ず発生する。

対処法はシンプルで、ブラウザを変える、キャッシュを消す、時間を置いてやり直す。派手な解決策はない。

導線設計


3つのチャネルが開通した後、最も重要だったのは導線設計だった。

Civitai → Gumroad。Civitaiで無料の金箔LoRAを使って気に入った人が、3種パックを買うためにGumroadに来る。Civitaiの説明文にGumroadへのリンクを入れた。

自サイト → BOOTH。日本語で検索して自ドメインのブログ記事にたどり着いた人が、BOOTHで購入する。ブログ記事のCTAにBOOTHのリンクを入れた。

LP → BOOTH/Gumroad。LPの購入ボタンから直接決済ページに飛ぶ。日本語ユーザーはBOOTH、英語ユーザーはGumroad。

この導線を繋ぐ作業は地味だが、繋がっていないと売上がゼロになる。どれだけ良い商品を作っても、購入ボタンが機能していなければ意味がない。

導線接続の指示書を作り、Claude in Chromeに全箇所のリンク差し替えを実行させた。ブログ記事3本×CTA複数箇所、note記事3本、LP 2本──合計で数十箇所のリンクを一括で更新した。

納品パッケージ


購入者に渡すファイルの準備も、見落としがちだが重要な工程だった。

shifuku-full.zip(22ファイル、179KB)。中身はLoRA 3種、プロンプト100個(各質感ごとに分類)、インストールガイド(PDF)、README(日英)。

プロンプト100個は、学習過程で使ったプロンプトの中から厳選したもの。強度別(0.4 / 0.6 / 0.8 / 1.0)の使い分けガイドも含めた。READMEは日本語と英語の両方を用意した。Gumroadで買う海外ユーザーのことを考えると、英語READMEは必須だった。

LoRAのファイル名も途中で修正した。最初は技術的な命名だったが、ユーザーが見た時にどのLoRAか分かるように「kinpaku_v1」「raden_v1」「iwa_enogu_v1」と統一した。

こういう地味な作業の積み重ねが、購入者の体験を左右する。

# 第6章: AIとの協業 —— 4つのツールの使い分け

不労所得感


Claudeとのセッションは、気づけば18回を超えていた。

一番嬉しかったのは、「休める」ことだった。

疲れたら「一旦ここまで。自走できるところを先に進めておいて」と伝えて、自分は休憩に入る。出かけている間も、Claude in Chromeが指示書に沿って作業を続けてくれている。帰ってきたら成果物が出来上がっている。

この感覚を、僕は「不労所得感」と呼んでいた。

もちろん実際には指示を出すのは自分だし、最終チェックも自分がやる。でも、自分以外の誰かが作業を進めてくれているという安心感は、一人でプロジェクトを回している人間にとって想像以上に大きい。

Claude AIの3つの使い方 — 後輩・アドバイザー・コンバージョン最適化


Claudeの使い方は、セッションによって全く変えていた。

ある時は後輩。「このスライドのテキスト112枚、全部書き出して」と作業を振る。ある時はアドバイザー。「BOOTH のAI規制、調べてリスク評価して」と相談する。ある時はコンバージョン大臣。「このLPのCTA、もっとクリック率上がる構成にして」と最適化を任せる。ある時はバズらせ責任者。「X投稿の文案、3パターン出して」と企画を頼む。

時には壁打ち相手にもなる。「この価格設定、高すぎるかな」「商品4のコンセプト、どっちがいいと思う」。選択肢を提示してくれて、それぞれのメリット・デメリットを整理してくれる。一人で悩んでいたら堂々巡りになることが、壁打ちで30分で結論が出る。

この「顔の使い分け」ができる相談相手が24時間いるということの価値は、やってみないと分からない。

デザインは自分でやる


ただし、全てをAIに任せたわけではない。

特にデザイン面は、最後は自分の手でやらないとダメだと感じた。Claudeはとても綺麗なものを作る。整っている。でも「整っている」と「面白い」は違う。アイデアの部分は、僕の方が面白いものを出せていると感じた。

これは不思議な体験だった。AIと並走することで、自分の「ここは人間がやるべき領域」が見えてくる。そしてそれは、美大で鍛えた感性やセンスの領域だった。AIとの協業が、逆に「美大で学んだことの価値」を再確認させてくれた。

指示書が一番大変


4つのツールの中で、最も労力がかかったのは意外にも「指示書を書くこと」だった。

Claude in Chromeに作業を任せるには、指示書が必要になる。サポート条件の反映指示書、BOOTH商品ページ作成指示書、導線接続指示書、GA4設定指示書──プロジェクトを通じて5種類の指示書を作った。

指示書は、自分が思っていることを正確に伝えないと、全く意図しない成果物が出来上がる。

これはエンジニアの現場でよく見る光景でもある。仕様書が曖昧だと、実装者は自分の解釈で作るしかない。AI相手でも同じことが起きる。「いい感じにやって」では「いい感じ」にならない。

この問題を解決したのが、ナレッジベースの構築だった。

100資料の崩壊と再建


プロジェクトが進むにつれて、資料が膨大になっていった。

LP、スライドテキスト、台本、セールスコピー、チェックリスト、指示書、引き継ぎ書、進捗管理表──気づけば100ファイルを超えていた。バージョン管理が追いつかなくなり、どれが最新なのか分からない。修正したはずの箇所が古いバージョンに戻っている。

人間が手作業で整理したら1ヶ月はかかる量だった。

これをClaudeにまとめてもらった。全ファイルの内容を読み込ませ、重複を排除し、最新版を特定し、ナレッジベースとして再構築する。証拠として残っている資料を見れば、あの混沌がどれだけのものだったか分かると思う。

途中でCoworkの仕様が変わって、ローカルフォルダを直接操作できなくなるという問題も起きた。Outputフォルダの中でしか作業できない制約の中で、Terminalを使ってフォルダ整理の長いコードを書いてもらって対応した。ツールの仕様変更にAIで対応するという、なかなかシュールな状況だ。

ナレッジベースで変わったこと


ナレッジベースを立てるアイデアが生まれる前は、Claudeのセッション読み込みが明らかに苦しくなっていた。

18セッション分の文脈を毎回読み込ませようとすると、重要な情報が抜け落ちる。同じ質問に違う回答が返ってくる。整合性が取れなくなる。AIにも限界がある。

ナレッジベースと引き継ぎ書を導入してからは、新しいセッションでも一発で文脈が伝わるようになった。「前回までの経緯はこのファイルを読んで」で済む。AIの性能を引き出すのは、結局のところ人間の設計次第だった。

Geminiの役割


Claudeだけでは足りない場面もあった。

Geminiは、イメージが湧かない時に使っていた。頭の中にぼんやりとしたアイデアはあるが、形にできない。そういう時にGeminiに画像を何枚か生成してもらう。出てきた画像をヒントにして、自分でアイデアを膨らませる。

Claudeが「論理」の壁打ち相手なら、Geminiは「ビジュアル」の壁打ち相手だった。

4つのツールの使い分け


まとめると、こうなる。

Claude(チャット): 戦略立案、文章生成、構成設計、壁打ち、分析。プロジェクトの「頭脳」。

Claude in Chrome: ブラウザ上の作業実行。指示書に基づいてGitHub commit、商品ページ作成、設定変更など。プロジェクトの「手」。

Cowork: ファイル管理、フォルダ整理、定型作業。プロジェクトの「事務局」。

Gemini: ビジュアルイメージの生成。アイデアが詰まった時の「発想の起点」。

人間がやるべきこと: 最終的なデザイン判断、感性に基づく品質チェック、「面白いかどうか」の判定。そしてプロジェクト全体の方向性を決めること。




ペースが速すぎて、もはや趣味というより仕事以上のペースになっていた。でも基本的に自分のペースでやれるから、楽しかった。

Netlifyから警告メールが止まらなくなった日、自分のやっていることが普通じゃないと気づいた。Claude in Chromeが高速でGitHub commitを量産した結果、無料枠の月300クレジットを1日で使い切ってサイトが停止された。

AIの速度で動くと、人間のペースを前提に設計されたインフラが追いつかない。Netlifyも、BOOTHのAI規制も、Civitaiの出品ルールも──全部「人間が手作業でやる」前提のペースで設計されている。

これはAIと協業する上で、誰もあまり語っていない現実だと思う。

第7章: 数字で振り返る7週間

タイムライン


2026年1月初旬、プロジェクト開始。LoRAの存在すら知らない状態からのスタートだった。

2月22日、3つの販売チャネルで商品が並んだ。7週間。

この間に何が起きたのか、数字で振り返る。

成果物の量


コード・コンテンツ: LP(商品2用)1,006行のHTML、LP(商品1用)669行のHTML、スライドテキスト112枚分、SEO記事6本(note 3本 + 自ドメイン 3本)、プロンプト100個(3種の質感×強度別)、指示書5種(Claude in Chrome用)、チェックリスト44項目

インフラ: 独自ドメイン取得・設定、GitHubリポジトリ構築、Netlifyデプロイ(自動ビルド)、GA4設定、Search Console登録準備

販売チャネル: Civitai(金箔LoRA無料公開)、Gumroad(3種パック $89)、BOOTH(3種パック ¥9,800)

進捗率の推移


このプロジェクトでは、途中から進捗率をタスクベースで管理するようにした。

当初は「だいたい78%くらいかな」という感覚値で管理していた。しかし、実際に全タスクを洗い出してみると42.5%だった。感覚と実態のギャップが約36ポイント。LPやコピーの「質」は高かったが、動画制作やプラットフォーム設定など未着手の工程が大量に残っていた。

タスクベースに切り替えてからの推移:

  • Session 18開始: 42.5%(17/40タスク)

  • Session 18終了: 53.2%(25/47タスク)※7タスク追加

  • Session 19: 59.6%(28/47タスク)

感覚値で管理していると、「もうすぐ終わる」と錯覚する。タスクベースにすると「まだこれだけ残っている」が見える。これは精神的にはきついが、正確な現状把握ができるようになった。

外部指標


広告費ゼロ、宣伝ほぼゼロの状態での数値。

  • Civitai: 29ダウンロード / レビュー5件(全ポジティブ)──公開から4日間

  • Xフォロワー: 146

  • BOOTH: 公開済み(シークレットウィンドウで外部からのアクセス確認済み)

  • Gumroad: 公開済み

Civitaiの29ダウンロードは、LoRAの世界では「最初の4日」としては悪くない数字だ。しかも金箔・螺鈿・岩絵の具というニッチなジャンルで。レビューが全件ポジティブだったことは、品質の裏付けになる。

コスト


固定費: ドメイン取得(年間約1,500円)、Netlify(無料プラン・月300クレジット。使い切って停止された)

変動費: RunPod GPU代(LoRA学習で使用)、AIツール(Claude Pro、その他)

実質ゼロに近いもの: Civitai(無料)、Gumroad(販売手数料のみ)、BOOTH(販売手数料のみ)、GitHub(無料)、note(無料)

初期投資として必要なのはドメイン代とGPU代、AIツールの月額費用程度。販売チャネルは全て初期費用ゼロで始められる。これはデジタル商品ビジネスの大きな利点だ。

時間


7週間のうち、毎日作業していたわけではないと思う。集中して長時間やった日もあれば、30分で終わりにした日もあるはず。

Claudeとのセッションは18回以上。1セッションあたり平均2〜3時間とすると、Claudeとの作業だけで40〜60時間。それ以外にLoRA学習の試行錯誤、Canvaでのスライド制作、各種アカウント設定などの自走作業がある。

ざっくりとした見積もりでは、総投下時間は100〜150時間程度。7週間(49日)で割ると、1日あたり2〜3時間。フルタイムの仕事をしながらでも捻出できる時間だ。

第8章: 次にやるならこうする

もう一度やるならこの順番


7週間を振り返って、もしゼロからやり直すなら、この順番でやる。

Week 1: 設計。ナレッジベースを最初から構築する。これが一番の教訓。資料が10個の段階で整理を始めていれば、100個になった時に崩壊しなかった。AIツールの棲み分けを決める。Claude Opus(指示系統・アイデア出し)、Cowork(ローカル情報の整理)、Claude in Chrome(ブラウザ上の作業)、Gemini(画像情報処理)。この4つの役割を最初に明確にしておくだけで、後の効率が全然違う。情報公開ガイドラインを決める。「何を無料で出すか、何を有料にするか」の線引き。

Week 2-3: コンテンツ制作。LoRA学習(これは省略できない)、学習データのキュレーション、プロンプトの最適化。

Week 4: LP・セールスコピー。デザインシステムを先に決めてからLPを書く。チェックリストも同時に作る。

Week 5: SEO記事。note + 自ドメインの二刀流。整合性チェックをこのタイミングで1回やる。

Week 6: 販売チャネル構築。Civitaiで需要検証(無料公開)。結果を見てからGumroad/BOOTHに出品。

Week 7: テスト・分析基盤・微調整。GA4 / Search Console設定、購入導線テスト、最終整合性チェック。

実際の7週間はこんなにきれいには進まなかった。行ったり来たりして、やり直して、順番が入れ替わって、予定外のタスクが割り込んできた。でも理想形を知っているのと知らないのでは、迷った時の判断速度が違う。

ぶっちゃけ辛かったこと


一番辛かったのは、計画がどんどん書き変わっていくことだった。

AIと一緒に進めるとペースが速い。速いこと自体はいい。でも速すぎると、昨日決めたことが今日には変わっている。サポート条件が変わる。販売先が変わる。価格が変わる。LPのコピーが変わる。スライドのテキストが変わる。

全部が連動しているから、1つ変わると波及する。note記事にはまだ古い情報が載っている。ブログ記事のCTAリンクが違う。スライドのサポート条件が旧版のまま。

整合性チェックで16箇所の矛盾が見つかった時は、正直げんなりした。

一貫性を保つことの難しさ。これはAIが速く仕事をしてくれることの裏返しでもある。人間のペースなら1週間かけて変更を反映するから矛盾は起きにくい。AIのペースだと1日で5つの判断が変わるから、全体の整合性が追いつかない。

だからこそ、ナレッジベースと引き継ぎ書が必要だった。「今の正しい情報はここにある」という一元管理の場所がないと、AIの速度に人間が振り回される。

7週間でできる。ただし毎日やれ


このプロジェクトは7週間で販売開始までたどり着いた。一般的なデジタル商品のローンチは2〜3ヶ月と言われている中で、かなり速いペースだと思う。

「ただし毎日やれ」というのは、根性論ではない。

むしろ逆だ。無理はだめ。

毎日やるというのは、毎日10時間やるという意味じゃない。疲れた日は30分でいい。Claude in Chromeに指示書を渡して、自分は寝る。翌朝起きたら成果物ができている。その確認だけで30分。それでも「毎日やった」ことになる。

大事なのは、間を空けないこと。3日空くと文脈が切れる。1週間空くと「あれ、どこまでやったっけ」から始まる。ナレッジベースがあっても、自分の頭の中の文脈は引き継げない。

だから毎日少しでもいいから触る。AIが重い作業を引き受けてくれるからこそ、人間は「毎日触る」だけで前に進める。

読者へのメッセージ


最後に、同じ道を歩もうとしている人へ。

楽しんでやりましょう。

趣味は仕事じゃないから。

僕のプロジェクトは途中から「仕事以上のペース」になっていた。Netlifyに怒られるくらいのペースで。でも辛かったかと言われると、楽しかった。自分のペースでやれるから。誰にも急かされない。締め切りもない。Claudeは24時間待っていてくれるし、文句も言わない。

LoRAの学習が失敗しても、LPの構成をやり直しても、BOOTHでエラーが出ても、「まあいいか、明日直そう」で終わる。これが仕事だったら胃が痛くなるが、趣味だから笑える。

「美女が金箔に取り込まれた」画像が出てきた時、僕は笑っていた。仕事だったら笑えない。

7週間でローンチできた理由を1つだけ挙げるなら、楽しかったから。楽しいから毎日やれた。毎日やったから7週間で終わった。それだけのことだと思う。

この記事が、あなたの「楽しいプロジェクト」のきっかけになれば嬉しい。




この記事で紹介したプロセスを、自分でも再現したい方へ


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  • LP HTMLテンプレート(19セクション穴埋め式)

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  • - チェックリスト44項目

  • - Claude指示書テンプレート5種

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本記事は、TextureLoRALabプロジェクトの実体験に基づいています。記載されている数値・事実は執筆時点のものです。




著者について


TextureLoRALab|美大卒エンジニア

高校で日本画、公立芸大で芸術学、英国大学院で博物館学(Merit)を修了。AI画像生成のLoRA学習で日本伝統質感(金箔・螺鈿・岩絵の具)のデジタル化に取り組んでいる。

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✍️ この記事を書いた人
シツカン|質感LoRAラボ
日本画→芸術学→英国博物館学修士→AIエンジニア。
キャンバスの質感をAIに刻む研究をしています。

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