【薬局との疑義照会】そう、あなたです。── ここまで読んでくださる、稀有なドクターへ
皆さん、こんばんは。 東京ビジョンアイクリニック阿佐ヶ谷の井手です。NYAUWというプロジェクトで、疑義照会アプリを運営している現役の眼科開業医です。
今日は、いつもとは少し違うトーンで書かせてください。 営業ではありません。 むしろ、ある特別な先生方への、ささやかなラブレターのつもりで書いています。
Appleの"Think Different"を、ふと思い出した
アップルの古いCMをご存知の先生も多いと思います。
1997年、ジョブズが復帰した直後に出したあの伝説のキャンペーンです。
"Here's to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square holes. The ones who see things differently."
「クレイジーな人たちがいる。 不適合者、反逆者、厄介者。 四角い穴に、丸い杭。 物事を違うふうに見る人たち。」
ガンジー、アインシュタイン、キング牧師、ジョン・レノン、ピカソが映って、「世界を本当に変えるのは、自分が世界を変えられると本気で信じている、そういうクレイジーな人たちだ」と続く、あのCMです。
最近、医療現場のことを考えていて、ふとこのCMを思い出したのです。

営業の世界は「いくらかかるの?」が一番の質問
新しいサービスやツールの導入を提案するとき、私はこれまで何百回と同じやり取りを経験してきました。
「井手先生、結局これっていくらかかるの?」
「で、ぶっちゃけROIあるの?」
「うちにとって意味あるの?」
これ、別に悪いことではないのです。
経営者として、医療従事者として、当然のリスク管理です。 ほとんどの先生はそう聞かれます。それがマジョリティです。
でも、世の中にはまれに、まったく違う質問をする先生がいます。
「これって、誰のためになるんですか?」
「もし広がったら、医療現場はどう変わりますか?」
「協力できることはありますか?」
この質問が出るかどうか。 たった一言で、その先生がマジョリティ側か、マイノリティ側か、はっきり分かれるのです。

正直に告白します。NYAUWは、全員には使ってほしくないのです
普通、サービス提供者は「もっと広めたい」「もっと使ってほしい」と願うものです。 私だってビジネスの常識は分かっているつもりです。
でも、NYAUW疑義照会アプリだけは、全員に入ってきてほしくないのです。
特に意外に思われるかもしれないのが──。
「井手先生、ご自身の知り合いの先生に頭下げて頼めばいいじゃないですか?」というアドバイス。
これ、本当によく言われます。 普通に考えれば、知り合いに頼むほうが導入のハードルは下がるはずですから。
しかし、ここに疑義照会アプリ特有の落とし穴があります。

「義理で入る」が一番危険なのです
たとえば、こんなケースを想像してみてください。
私が知り合いの先生に「お願い、入って」と頭を下げる
先生は「井手先生の頼みだから断れないなぁ」と義理で入る
中途半端に、ぎりぎりのモチベーションで参加する
通知が来ても、見ようとするモチベーションが低い
結果、薬剤師さんからの問い合わせが未読のまま放置される
これは、最悪のシナリオです。
なぜ最悪かというと、薬剤師さん側の体験が決定的に下がってしまうからです。
薬剤師さんから見ると、こうなります:
せっかくアプリで送ったのに返信が来ない
「やっぱり電話のほうが早いな」と感じる
一度そう感じると、アプリそのものへの信頼が失われる
「結局このアプリ、使えないじゃん」という評価が定着する
結局、薬剤師さんは電話をかけ直す二度手間を強いられる
つまり、やる気のない医師が一人入っているだけで、薬剤師さん側のアプリ体験全体が"コンタミネーション(汚染)"されるのです。
これは、ほかのSaaSとは少し違う、疑義照会アプリならではの構造的な特性だと私は思っています。
普通のアプリなら、「使わない人は使わなければいい」で済みます。 しかし疑義照会アプリは、ユーザーが片方だけ存在しても価値が成立しないペアワーク型サービスなので、片側のモチベーションが低いだけで、もう片側の体験が崩壊するのです。
これ、本当に深刻なんです。 薬局の現場で「あのアプリ、結局電話より遅いね」と一度言われてしまうと、その評価を覆すのに何ヶ月もかかります。 善意の義理参加が、結果的に薬剤師さんの業務を悪化させる──こんな悲しい構図はありません。


だから、入口で守る
だからこそ、私は明確な方針を貫いています。
「全員に入ってほしくない」
「義理で入ってほしくない」
「知り合いだから入る、ではなく、納得して入ってほしい」
これは選り好みでも、上から目線でもありません。 薬剤師さん側のUXを守るために、入口でフィルタリングしているのです。
普通のサービスなら、入口は広いほどいい。 NYAUWは、入口を意図的に狭くしているサービスです。 広告も最小限。営業も控えめ。封書やNoteで、自分で気づいて、自分で動いてくださる先生だけにお声をかけています。

結果として、フィルターになる
このスタンスを貫いていると、結果として疑義照会アプリは、
「マクロ視点のある、いい先生」を自然に抽出するフィルター
として機能します。
自分から「これ良さそうだな」と興味を持って入ってくる先生
通知の意味を理解して、すぐ確認しようと思える先生
薬剤師さんの体験まで気にできる先生
自分のクリニックだけでなく、地域全体の医療を考えられる先生
そういう先生だけが、自然に残っていく構造になっています。
そして、こういう先生が地域に増えると、地域の医療文化そのものが変わり始めるのです。 電話の摩擦が消える。 薬剤師さんが胃を痛めなくなる。 医師が診察に集中できる。 患者さんが余計に待たされない。
たった一人の「マクロ視点のある先生」の参加が、その地域に小さな波紋を作り、徐々にマジョリティ側にまで広がっていく。 これがNYAUWの普及戦略です。 急がない。むしろ、慌てない。最初に動いてくださる稀有な先生方を、何よりも大事にする。

これからの時代に、本当に必要な情報
正直に言って、これからの開業医にとって、厳しい時代がやってきます。
保険点数の引き下げ
人口減少
AI診療の浸透
患者さんの選択眼の高度化
経営の二極化
こういった環境の中で、「マクロ視点を持っているクリニック院長は誰か」という情報自体が、極めて価値の高いものになると、私は考えています。
なぜなら、マクロ視点を持っている先生は、
患者紹介の信頼先になる
地域連携の中核になれる
新しい医療文化のキードクターになる
自分のクリニックを"単なる店舗"以上にできる
そういった力を、構造的に持っているからです。 そして、こういう先生方は、自分一人で活動するより、ネットワークでつながった方が、桁違いに価値を生み出せるのです。
私はNYAUWで、そういった情報のハブになれる立ち位置を作りたいのです。 疑義照会アプリは、その入口の一つに過ぎません。 本当に作りたいのは、マクロ視点を持つドクターのネットワークそのものです。

この記事を最後まで読んでくださっているあなたへ
ここまでお読みくださって、本当にありがとうございます。
そして、これを書いている私から見て、あなたはもう、マジョリティではありません。ココマ読んでいる時点で超マイノリティー 変人です。これは褒め言葉です
理由は単純です。 日々の診察と経営で本当に多忙な開業医の先生が、こんなニッチで、マネタイズもされていない、毛色の変わった営業活動のNoteを、ここまで読んでくださっている時点で、もう普通じゃないのです。
大半の先生は、最初の3段落で離脱しています。 それが普通です。それが正しい時間配分です。 でも、あなたは違った。
「井手って、なんかおもしろいこと言ってるな」
「で、義理で入ってほしくないって、どういうこと?」
「Think Different ね、ふーん」
そう思いながらスクロールを止めずに、ここまで来てくださっている。 それ自体が、稀有なドクターの証なのです。
そう、あなたです。 これに気付いてくださったあなたに、私は今日、本当に書きたかったのです。

過去にも、同じ"稀有な先生方"に支えられてきました
私はNYAUWを通じて、いくつかのプロジェクトを動かしてきました。
「1%のクリニック院長へ」(2021年)── 10万人いる開業医のうち、たった1%、1,000人の先生にご協力いただければ、地域・専門を超えた紹介先情報のネットワークができる、という構想。
「もう一回開業するならこうします」── 現役開業医の先生方の知恵を集めて、これから開業する先生たちに渡すプロジェクト。
そして「NYAUW疑義照会アプリ」── 第二弾までに47都道府県・2,850薬局でご活用いただき、今、第三弾バージョンへと進化しました。
これら全部の共通点。 「マジョリティではない先生方」に支えられてきたということです。 全員に届けようとしたら成立しなかったプロジェクトばかり。 だからこそ、届いた先生方とは深いところで繋がれる。
最後に、稀有なドクターの皆さまへ
長文、最後までお読みいただきありがとうございました。
もし、心の片隅に「ちょっと話してみたいな」「ビデオを見てみたいな」と思っていただけたら、メールを一本ください。 医師会の名前も、薬剤師会の名前も、後ろ盾も、紹介者も、何も要りません。 あなた個人として、私個人と話していただければ十分です。
私は商売っ気のあるベンダーではないので、強引な営業もありません(笑)。 オンラインでビデオを一緒に見て、感想を聞かせていただくだけでも嬉しいです。 そして、もし「義理で入ろうか迷っているだけ」なら、どうか入らないでください。 薬剤師さんのために、それは申し上げておきたいのです。
でも、もし「自分で考えて、納得して、入ってみたい」と思っていただけたら。 その瞬間、あなたは、あなたの地域の医療を変える最初の一人になります。
"The ones who see things differently." 物事を違うふうに見る人たち。
それは、たぶん、あなたのことだと、私は本気で思っています。
📩 連絡先:tokyoeyeasagaya@hotmail.com 井手 武(東京ビジョンアイクリニック阿佐ヶ谷 院長 / NYAUW代表)
今日はここまで
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