「ビデオ、作りました。」── 疑義照会アプリの実際の流れ
皆さん、こんにちは。 東京ビジョンアイクリニック阿佐ヶ谷の井手です。NYAUWというプロジェクトで、疑義照会アプリを運営している眼科開業医です。
今回は、疑義照会アプリの紹介ビデオを作りました。
(音声もないシンプルなものです)
なぜ今、ビデオを作ろうと思ったか
ここ数年、医師会、薬剤師会、地域連携の中核となる先生方、そして個性的な薬局グループに向けて、封書やNote記事でアプリのご紹介をしてきました。 おかげさまで、第二弾までに47都道府県・約2,850薬局の皆さまにご採用いただきました。本当にありがたいことです。
でも、活動を進めるなかで、いつも同じ場面に出会うのです。
「いいですね、興味あります」
「うちの薬剤師たちも電話のストレス、感じてますし」
「でも……実際の画面を見ないと、最終的には判断できないですよね」
私自身は趣味で毎日何らかのサービスのアカウントを作って試します。
このリンクを参考にしています
しかし、多くの先生は何かツールを導入するときに、僕のように文字情報やチラシだけでGOを出すことはまずありません。
「で、実際の画面はどうなってるの?」
「うちのスタッフが触ったときに本当に楽になるの?」
これがわからないと、決められない。
だから、ビデオなのです。
文章は「説明する」ことはできるけれど、「実感していただく」ことはできない。 ビデオは、たった1〜2分で、薬局側の画面とクリニック側の画面、そして両者のやりとりが、目の前で動いてくれる。 これがどれほど決定的に違うか、ようやく自分でも本気で理解しました。
実は「百聞は一見にしかず」って、医療現場でこそ通用する言葉
考えてみると、医療の世界って現場の流れを見ないと判断できないことだらけなのですよね。
手術の見学。 カンファレンスでの実症例の検討。 新しい医療機器のデモンストレーション。
私たちは、文章を読むより、現場の流れを見て理解する人種なのです。 疑義照会アプリも同じです。
「薬剤師さんがスマホでこう入力する」
「医師の手元のスマホがこう光る」
「医師が指でタップして、こう返信する」
この一連の流れを動画で見せられた瞬間に、「あ、これは本当にうちの現場でも使える」と腹落ちするのです。
逆に言うと、ここまでやらないと「導入してみよう」とはなかなか思えない。 これまでチラシと封書で頑張ってきましたが、ビデオがあるかないかで反応が変わるかもということでビデオを作成しました。
編集は得意でないので今回は
を使いました
電話の摩擦は、皆さん思っているより、ずっと大きい
ビデオを作りながら、改めて自分でも整理してみました。 電話の疑義照会って、本当に両者にとって過剰にストレスフルなコミュニケーションなのですよね。
そして、ここが今日いちばん言いたいところです。
よく語られる「電話のストレス」って、実は"うまく繋がった場合"の話なのです。 現実は、もっと厳しい。
薬剤師さん側のリアル:
まず、頭の中で何度も内容をリハーサル
意を決して電話 → 「ただいま診察中ですので、後ほどおかけ直しください」
仕方なく折り返し時間を待つ……でも、いつ折り返せるか読めない
別の患者さんが来局して、そっちの調剤を進める
30分後にもう一度かける → 「まだ診察中です」
患者さんに「もう少々お待ちください」と何度も声をかける
やっと繋がる → 「お忙しいところ、本当に本当に申し訳ありません」
質問する → メモを取る
電話を切って、お待たせした患者さんに改めて謝罪
心の中の独り言:「私、何を謝ってるんだろう」
医師側のリアル:
診察中に受付から「○○薬局からお電話です」と声がかかる
「いま出られない」と伝える → 心の中で(本当は出てあげたいのに……)
診察を続けながら、頭の片隅で「あの電話、何の疑義だっただろう」と気になっている
区切りがついて受付に確認 → 薬局はすでに別件で電話を切っている
折り返し電話をかける → 今度は薬局側が他の患者対応中で繋がらない
お互い「すみません」「申し訳ありません」のメッセージが何度も往復
やっと話せたときには、最初に電話があってから1時間以上経過
患者さんはとっくに薬局を出てしまっている
この「電話のかけ違い地獄」こそが、現場の本当の苦しみです。

そして、もっと深刻なのが「時間帯の壁」
ここから先は、実は薬剤師さんが声を上げにくいけれど、本当に困っている問題の話です。
昼休みの13時から15時。 クリニックは完全に電話受付を閉じます。当然です。先生方もお昼を食べる時間が必要だし、午後の準備もある。 でも、薬剤師さんの仕事はこの時間も止まりません。むしろ、午前中の外来で出た処方箋を、お昼にまとめて調剤している薬局も多いのです。 そして、疑義が見つかる。
電話してみる → 留守番電話。 14時に再トライ → まだ留守番電話。 14時45分頃、患者さんから「まだですか?」と問い合わせ。 やっと15時に電話が繋がる → 医師は午後の診察直前で5分しか時間がない。 急いで疑義を伝える → 「ちょっと待って、確認します」と保留 → 午後の最初の患者さんが入ってきて、医師は電話を切らざるを得なくなる。
これ、昼休み明けは構造的に解決不能なのです。
そして、もっと辛いのが、休診日前の午後。
土曜午後の疑義照会も同じです。 「日曜日を挟むので、月曜日までお待ちいただけますか」 この一言を、薬剤師さんは何百回、何千回と言ってきたはずです。
そして、医師である私たちも、月曜日の朝、診察前のわずかな時間に金曜午後分の疑義照会の折り返し電話を5件も6件もかける現実があります。月曜の朝の診察開始がギリギリになる、あれです。 正直に言って、これが今の日本の医療現場の、誰も語らない悲鳴です。
お互いに、相手にストレスをかけたくないから、ますます言えなくなる
そして、こういう状況が続くと、何が起きるか。
お互いに、相手にストレスをかけたくないから、ますます疑義を上げづらくなる。
「これくらいなら、まあ、聞かなくてもいいか……」
「先生も忙しそうだから、今日は確認をスキップしよう……」
「土曜の午後だし、月曜まで待たせるのも忍びないから、自己判断で進めよう……」
これ、患者さんの安全にとっても、決していい状況ではないのです。
本来は確認すべきことが、コミュニケーションの摩擦のせいで省略されてしまう。 医療の現場で、こんなことが許されていいわけがない。
ビデオで見ていただきたいのは、その「諦め」が要らなくなる世界
NYAUW疑義照会アプリの本質は、実は「電話を置き換える」ことではないのです。

「お互いに諦めなくていい」状態を作ること。 これが、私が本当に伝えたい価値です。
非同期だから、昼休みでも、休診日前の午後でも、いつでも送れる。 医師は、診察と診察の合間、お昼休みの片隅、診察前の少しの時間に、自分のタイミングで返せる。 休診日でも、空いた時間に確認・返信できる(これ、現役開業医として実は本当に楽なポイントです)。
*もちろんカルテを見ないとわからないこともありますが、まずは疑義が発生しているとお互いに認識しておくことが大切なのです
薬剤師さんは、繋がるかどうかわからない電話を握りしめずに済む。 医師は、診察中に受付から声をかけられても申し訳なく思わなくていい。
両者がそれぞれのペースで、お互いを尊重したまま、必要なやりとりだけが完結する。

最後に、皆さまへのお願い
ビデオが完成したので、これから、これまでアプローチしてきた医師会・薬剤師会・薬局グループの皆さまに、改めてビデオ付きでご案内を送り直していこうと考えています。
そして、Noteを読んでくださっている全国の医師・薬剤師の皆さまへ。 もし「ちょっと興味あるな」「うちの地域でも検討してみようかな」と思っていただけましたら、まずはビデオを見ていただくだけでも結構です。 1〜2分です。お忙しい中、それだけのお時間で、現場が変わる可能性をお感じいただけると思います。
特に、医師会・薬剤師会・調剤薬局の経営層の皆さま。 ビデオは、会員さま・スタッフさまへの説明資料としてもそのままお使いいただけます。 研修会、勉強会、地域連携の会合などでご活用いただければ嬉しいです。
ご興味のある方、強いセールスはいたしません。「見ていただくだけ」で結構です。
そこから先のご検討は、貴会・貴社のペースで、ゆっくりとしていただければ何よりです。
現役開業医として、最後にひとこと
私は、商売っ気のあるベンダーではありません(笑)。 眼科の開業医として、毎日診察をしながら、合間にこのプロジェクトを動かしています。
なぜそんなことをやっているかというと、「電話に出られなくてごめんなさい」と心の中で薬剤師さんに謝りながら診察を続ける、あの胃の痛い瞬間を、現場の人間としてなくしたいからです。 そして、休診日前の午後、患者さんと薬剤師さんに「月曜日まで待ってください」と言わせる構図も、ゼロにしたい。
ビデオを通して、その諦めが要らなくなる世界を、ぜひご覧いただきたいのです。
長文、最後までお読みいただきありがとうございました。 皆さまの現場が、もっと「お互いに諦めなくていい」関係になりますように。
📩 ご連絡先:tokyoeyeasagaya@hotmail.com 井手 武(東京ビジョンアイクリニック阿佐ヶ谷 院長 / NYAUW代表)
(音声もないシンプルなものです)
今日はここまで
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