かぼちゃプリン🎃
復、カフェに来た。
ショッピングモールに来ている。食品売り場とは少し離れた区画に、ひっそりと営業している。
入り口横のショーケースにはケーキが並んでいる。一際目立つのはショートケーキだ。たかだかともられた白のホイップクリームに、鮮やかな生の苺が飾られている。中面にはカットされた苺が断面を此方に向けられきちんと美しく、芸術品の域である。
お値段もなかなかの高さだ。
貴婦人の帽子の様に、クリーム達のデコレーションの高さと比例するのだろうか。
他にも芸術品の数数。
一瞬目移りするが、今日の私は
此れ、と、決めた。
かぼちゃプリンだ。
かぼちゃプリン、という名の、かぼちゃで出来たケーキだ。
かぼちゃプリンを、オーダーする。
勿論、ホット珈琲と一緒に。
店内は空いていた。日曜の夕方。
席を決め、身なりを調え、いただく。
かぼちゃプリンは、素朴な外見だ。
実直なタルト生地にかぼちゃフィリング、そして上からホイップされた生クリームが覆う。まっ白い。僅かにおうとつのデコレーションがほどこされている。
ほぼ2色。優しい山吹色と、乳の白。
やわらかな潔さを感じる。
口に運ぶ。
素朴だ。味も。
決して派手じゃない。味の中心を担うかぼちゃフィリングは、凄く地味だった。南瓜そのもの、に、少しだけ味を調える為だけの材料、を感じる。見た目どおり一面均一にマッシュされており味はまんべんない。
生クリームは、動物性の油脂から来るこくを感じた。こちらは甘味をしっかり感じたので砂糖を混ぜているようだ。かぼちゃフィリングの味が派手ではないのでバランスを感じる。
そしてタルト生地は第一印象どおりやはり実直な味だった。バター、小麦、塩気とたしかな甘味。どっしりとと迄は形容しないが、重さが有る。たしかな。
珈琲をはさむ。たしかなそれらの味が、馴れた苦さと相まり口の中でバランスが完成。よき。
こういうのがいいんだよ。
こういうので、いい。
華やかさを求める場面も有るだろう。
しかし今日のわたしは、後悔無い。
此れがよかった。
これで、よかった。
ちなみにお値段も素朴だった。ショーケースの中のカットケーキのうち最も安価だったかも知れない。
肩肘はらずにいただけた。
時折、こうした事が有難い。
涙がでる程に。
僕たちは、つかれている。
何時でも、がんばるなんて無理だ。
がんばらずにいただける物。
そういうものを、僕は大事にしたい。
君のことも、そうだ。
君のことは、僕のことだ。
少なくとも僕にとってはそうだ。
君は、僕とはちがう。
ちがうけれど、君は僕なんだ。
君がかなしいと、僕もかなしい。
君が微笑むと、僕は笑う。
こうかくが、しぜんとあがるんだ。
君はどうだろう。
僕が下を向いていると、かなしいのだろうか。
じゃあ、とたち上がる。
君がそう言うなら、顔を上げよう。
君が悲しいと、僕もかなしくなる。
君の悲しい顔は、僕にはつらい。
だから、君は僕のことなんだ。
君のことは、僕のこと。
あの日のかぼちゃプリン、みたいで
いいんだよ。
ショートケーキにならなくて、いいんだ。僕のまえでは。
君はがんばり屋さんだから、ショートケーキや、他のきらきらしたケーキに成ろうと、必死かも知れない。
為らなくてはいけない時もあるだろう。
世の中の大半の人は、君がどうやって
ケーキになったかなんて、知らない。
有るからいただく。
其れだけだ。
でも、僕にとって君は
大切だから
かぼちゃプリン、が、いいな。
がんばり過ぎて欲しくないんだ。
もう、緊張しなくていいよ。
僕たちは、かぼちゃプリン。
君だって、かぼちゃプリン。
其れで、いいじゃないか。
それで手打ちにしないかい?
かたくなに励む君もすきだけど、
もう、いいよ。僕のまえでは。
僕にとって君は
僕のこと、だからさ。
ご馳走さまでした。
御代はもう、払ったから、行くね。
店を後にして、生活の空間へ戻る。
かぼちゃプリン、は
僕と君、の秘密だよ。
◯1590字
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