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中国の人口、実は8億人台?——誰も言わなかった「キノコ型人口ピラミッド」の真実【連載第1回】

中国の人口は14億人。この数字を、あなたはどこまで信じているだろうか。

まともなビジネスマンや政治家であれば、中国政府の公式統計を額面通りには受け取っていない。GDPしかり、失業率しかり。そして人口もまた、その例外ではない。

中国統計が信頼できない構造的理由

中国では、地方政府が中央に数字を報告する際、補助金や政治的評価のために「大きく見せる」インセンティブが常に働いている。これは個人の悪意の問題ではなく、制度設計そのものの問題だ。積み上げれば実態より膨らむのは必然である。

起点:1978年の「比較的信頼できる数字」

中国の人口統計の中で、比較的信頼できる起点がある。1978年末の公式発表だ。

この時点での中国の人口は9億7523万人(約9.75億人)と記録されている。その後1982年に国連の支援を受けて実施された国勢調査では、初めて10億人を超えて10億818万人が記録された。この1982年の調査は国際機関が直接関与した最も信頼性の高い調査として知られている。

つまり1978〜1982年の中国の実態人口は、おおむね9.7〜10億人の範囲にあったとみるのが妥当だ。

人口動態から逆算すると何が見えるか

この起点から、その後の人口動態を積み上げると何が見えてくるか。

1980年に一人っ子政策が開始され、出生率は急落した。政策が段階的に緩和されても回復しなかった。日本や韓国の例が示す通り、経済発展と都市化が進むと、規制がなくても出生率は下がり続ける。中国の場合、「政策による強制的な抑制」と「経済発展による自然な少子化」が重なった。実質的には50年近く、出生率の低下が続いている。

さらに2022年末から2023年初頭にかけて、中国でコロナウイルスが急速に拡大した。医療アクセスが乏しい農村部を中心に、公式発表をはるかに超える超過死亡が発生したと複数の研究者が指摘している。

これらを構造的に積み上げると、2022〜2023年時点の実態人口の推計範囲は8.8〜9.9億人となる。1978年の起点から大きく増えているどころか、ほぼ横ばいか減少している可能性が高い。

2022年、ハッカーが暴いた数字

そしてこの推計と符合する具体的な証拠が存在する。

2022年7月、「ChinaDan」と名乗るハッカーが、上海国家警察データベースから23テラバイトものデータを盗み出し、ダークウェブ上で売りに出した。その中に含まれていたのは、10億人分の個人情報——氏名、住所、身分証番号、携帯番号、犯罪記録など——だった。

Wall Street Journalの記者が実際にリストに載っている数十人に電話をかけ、9人が情報の正確性を確認した。Binance CEOも「10億件の住民記録の流出」を公式に認めた。中国政府はこの件を一切公式に認めず、国内SNSでは関連キーワードが即座に検閲された。

上海という一都市の警察データベースに、10億人分の記録が入っていた。

ここで注目すべきは、この10億件という数字が、人口動態から積み上げた推計値の上限(9.9億人)と驚くほど近いという点だ。全く異なる方法論が、同じ範囲の数字を指し示している。もちろん重複レコードや古いデータが含まれている可能性はある。しかしこのハッキングデータが「14億人」という公式発表と大きくかけ離れていることは無視できない。

ただしこの10億件をそのまま「実態人口=10億人」と解釈してはいけない。この数字には後述する水増し分が含まれている可能性がある。10億件は実態人口の上限として読むべきだ。

水増しと未登録——二つの歪みを整理する

ハッキングデータの10億件をそのまま実態人口と読んではいけない理由がある。

地方政府が補助金目的で人口を水増し登録した場合、死亡届が出されない限りその記録は永遠に残り続ける。幽霊人口だ。中国の人口統計研究者・ウィスコンシン大学産婦人科研究員・易富賢の研究によれば、この種の水増し・過大計上は約1億3000万人規模に達する。

「では、未登録者が1〜2億人いるから実態はもっと多いのでは?」という反論がある。しかしこれも中国政府自身のデータが否定する。

2015年12月、習近平は一人っ子政策違反などで戸籍を持てなかった「黒孩子(ヘイハイズ)」に戸籍を付与するキャンペーンを実施した。公式発表では新規登録が約1300〜1400万人とされているが、この数字もまた同じ政府が出したものだ。「未登録者が多いと統計の信頼性が問われる」という政治的インセンティブがある以上、この数字を額面通りに受け取るわけにはいかない。実際の登録数はこれより多かった可能性があるし、キャンペーン時に登録しなかった人も一定数いたはずだ。それらを考慮しても、現実的な未登録者の規模はせいぜい数千万人程度が上限だろう。「1〜2億人の無戸籍者がいる」という主張とは、一桁違う。

そもそも戸籍のない人間は中国社会で何ができないか。学校に通えない。病院で保険診療を受けられない。銀行口座が作れない。正規雇用に就けない。鉄道・航空機に乗れない。AlipayもWeChat Payも使えない。世界最高水準の監視社会で、数千万人を超える規模の人々が隠れて暮らすことは構造的に不可能だ。

この二つの歪みを差し引きすると:

項目規模ハッキングデータ約10億件水増し・幽霊人口(易富賢推計)マイナス約1.3億人新規戸籍登録(2015〜2016年)プラス約0.13〜0.14億人調整後の推計約8.7〜8.8億人

二つの方法論が同じ範囲を指し示す

  • 人口動態からの積み上げ推計:8.8〜9.9億人

  • ハッキングデータから水増し分を差し引いた推計:約8.7〜8.8億人

完全に独立した二つの方法論が、同じ範囲——8〜9億人台——を指し示している。これは偶然の一致とは言いにくい。

キノコ型人口ピラミッドという現実

構造的な推計に基づいて人口ピラミッドを描き直すと、一般的な「逆三角形」や「壺型」とはまったく異なる形が浮かび上がる。それがキノコ型だ。

傘の部分——50〜60代が最も膨らんでいる。高度成長を支えた世代が、今まさに一斉に引退・高齢化しようとしている。

茎の部分——1980年の一人っ子政策開始を境に、40代以下が急激に細くなる。その細さは一世代分ではなく、複数世代にわたって続いている。

根元の部分——現在の若年層・新生児に向かうほど、さらに急激に細くなっていく。回復の種となるはずの世代がほぼ存在しない。

このキノコは、根元に行けば行くほど細くなっている。パキッと折れそうな状況だ。そしてこれは中国そのものの姿でもある。

まとめ:「14億人市場」という幻想に乗り続けるリスク

14億人という数字を前提に、中国市場への投資や事業展開を続けている企業や投資家は多い。しかしその前提が大きく崩れているとしたら、すべての試算が狂う。

人口動態からの推計(8.8〜9.9億人)。ハッキングデータから水増し分を差し引いた推計(約8.7〜8.8億人)。そしてキノコ型人口ピラミッドが示す構造——これらはバラバラな事実ではなく、一つの同じ現実を異なる角度から照らし出している。

傘は重く、茎は細く、根元はさらに細くなっている。この形が示す帰結から、目を背けることはできない。

次回:【連載第2回】なぜ人民元は両替できないのか——中国経済「本当の設計図」


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