樹齢1000年の御神木が教える、「急成長」の危うさ
旅先で、大きな木を見上げた。
幹に、しめ縄が巻かれている。
案内板には、
樹齢は1000年をこえる、
と書いてあった。
ぼくが生まれるずっと前から、
江戸時代よりもっと前から、
この木はここに立っている。
正直に言うと、若い頃のぼくは、
こういう木を見ても、なんとも思わなかった。
それより、ぐんぐん背を伸ばしていく
若い木のほうが、かっこいいと思っていた。
でも、経営を長くやってきたいまは、
あの1000年の木を見ると、
なぜか背筋が伸びる。
あの「遅さ」の中に、
とんでもない強さが詰まっている気がするからだ。
早く伸びた木ほど、あっけなく折れる
木の世界には、けっこう残酷な事実がある。
早く、大きく育った木ほど、
中身がスカスカで、もろい。
ぐんぐん伸びる木は、年輪の幅が広い。
ぱっと見は、立派に見える。
でも、その分だけ組織が粗くて、
台風が来ると、あっけなく折れたり、
根こそぎ倒れたりする。
逆に、ゆっくり育った木は、
年輪が細かく詰まっている。
硬くて、締まっていて、簡単には折れない。
1000年の木が1000年もっているのは、
「早く伸びなかった」からなんだよな。
早さと強さは、むしろ逆だったりする。
ぼくも、早く伸びたかった
でもな。偉そうに書いてるけど、
若い頃のぼくは、完全に
「早く伸びる木」に憧れていた。
同世代で、さっさと成功する人がいる。
若くして稼ぐ人がいる。
話題をかっさらう人がいる。
それを見るたびに、焦った。
「オレは、何をやってるんだ」って。
だから、無理に背伸びした。
数字を追った。
ぐんぐん伸びている「ふり」をした。
あなたも、身に覚えがないかな。
いま思うと、あの時期のぼくは、
年輪の幅だけ広くて、
中身はスカスカだった。
ちょっと風が吹けば、たぶん折れていた。
年輪は、遅い年ほど詰まっている
面白いのは、年輪って、
いい年ばかりじゃ作れないってことだ。
雨が少なくて、寒くて、育ちにくい年。
木にとっての「つらい年」ほど、
年輪は細く、硬く、詰まる。
逆に、なんの苦労もない年は、
ゆるくて、広い年輪になる。
木の強さは、うまくいった年じゃなく、
うまくいかなかった年が作っている。
これ、人も同じじゃないかな。
ぼくのいちばん硬い部分は、
たぶん、いちばん苦しかった時期に、
こっそりできていた。
早さを羨むのは、脆さを羨むこと
だからいまのぼくは、
「早く伸びること」を、
あまり羨ましいと思わなくなった。
もちろん、
早く結果が出るのは、気持ちいい。
でも、早く伸びた木が
そのあとどうなるかを知っていると、
手放しでは羨めないんだよな。
大事なのは、
伸びる速さじゃなく、年輪の詰まり方だ。
単価も、信頼も、実力も、
けっきょく「幅」じゃなく
「密度」で決まる。
幅だけ広げても、風が吹けば、折れる。
ゆっくりでいい、
と言いたいわけじゃない。
でも、「詰まった一年」を重ねているなら、
それは遅れているんじゃなくて、
強くなっている。
ぼくの幹にも、
スカスカの年輪が、何本もある。
でも、そのすぐ隣に、
いちばん苦しかった年の、
いちばん硬い年輪もある。
あなたの今年は、
広くてゆるい年輪と、
細くて硬い年輪。
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