お遍路の風景 “発心の阿波” 九日目
「更紗のデザイン」
梅雨に落とされた枯れ花だけど
南国の服のデザインのよう
ちょっとシックで華やか

「長屋門」
四国には大きな家が多い
それも長屋門が付いた家が多い

「おむかえ大師」
今まで歩いて来た中で
座られているお大師様は初めて

お遍路の風景 阿波の九日目
(2024年6月18日)
今日は雨だ。覚悟をして支度し、宿の前の道をひたすら下る。
脇にあった川が昨日までの清流とは打って変わって濁流になっている。山からの水が道路を流れ、道路も川のように流れてガードレールの隙間から下の濁流に流れ落ち危ない。早くここを越して穏やかな一般道に辿り着きたい。しかし中々町並みは見えない。
何か変、と気付いたのは30分位経ってから。携帯で道を確認すると北に向かい下っている。
思い込みだった。今日は下山から始まると信じて宿の前の道をひたすら下っていた。実は宿から次の宿に向かい下るには、一旦上る逆方向に向かわなくてはいけなかった。土砂降りの雨の中を、川のように流れる道をもう一度登る。間違いを恥じる余裕もなく出発した宿に戻った。
食堂でコーヒーを入れてもらい一休みする。「いつもなら外まで出て見送るので気付いたけど、大雨だったからね。」と慰められた。
失敗したらやり直せば良い。でも、やり直しが出来ないくらいの失敗をすると何とかしようと無理をする。無理をすれば必ず何かが壊れる。ここで一休みして出直せるのは幸せだ。
確かに失敗はしないほうが良い。でも失敗しないと肌身に沁みて分からないことも多い。少し弱くなった雨の中をまた歩き始めた。
四国はトンボが多い。小さいときによく見かけたイトトンボがいる。いろいろな色のイトトンボを見かけ、つい写真を撮ってしまう。
山道には雨で落とされた花びらがインド更紗の模様のように散らばる。咲き終わり散り撒かれた枯れ花をきれいと思うのはおかしいだろうか。何か甘い香りがしたような気がした。見ると傍らの木にまだ白い花が残っていた。梔子だ。地面に散って黄色くなった花びらは梔子の花だった。
空が開け、平地に出た。雨の上がった里の道は心地よい。
四国を歩き始めて気付いたのは、大きな家が多いこと。それも長屋門の付いた家が多い。そこを住宅としてリノベーションと言うより、長屋門の形に真新しく別棟を建て直しているものもある。全く新しい建材で建てた長屋門だ。この形が昔からのステータスなのかも知れないし、あるいは生活形態に丁度合うので長屋門の改修のときに、また長屋門の形で建て替えしたのかも知れない。
家の屋根の組み方も、神社仏閣の屋根のように幾重にも垂木と軒桁などを組み合わせた重厚な構造の家もある。結構見栄っ張りなのか。本当にお金持ちなのか。
宿に着くとKさんが待っていてくれた。押し付けでもなく、普通のことのように。
ここに荷物を置いて二十二番札所の平等寺に二人で向かった。
平等寺では道の前に座られたお大師様が、迎えてくれた。
夜も更けて鳴き交う蛙遍路宿
蛙の合唱を聞きながら眠りについた。
