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沢田太陽の2026年1〜3月の10枚のアルバム

どうも。

では、3ヶ月に1度の企画、沢田太陽の10枚のアルバム10選、行きましょう。今回が2026年1〜3月の分です。

以下のようになりました!

では、早速見ていきましょう。

It's The Long Goodbye/The Twilight Sad

まず選んだのがザ・トワイライト・サッド。スコットランドを拠点とするポストパンク系のバンドです。この人たち、注目したのはこの前作くらいなんですけど、とはいえそれが2019年。パンデミックよりも前ですよ。で、その時から「芸歴自体は古い」と言われてた人たちで。イメージとしては「ジョイ・ディヴィジョンの影響の強い、遅れてきたインターポールみたいなバンド」という感じだったんですけど、今やシューゲイズ・ギターやチェンバー・ポップの応用の仕方が絶妙にうまく、スケール感のかなり大きなばんどになってますね。こう言うと悔しいですが、近年、成長が殆ど感じられないインターポールよりいいバンドになってます。

Secret Love/Dry Cleaning

続いてはドライ・クリーニング。今年の3月に出たサード・アルバムですね。この人たちは、デビューのときから各パートの音色のキレのかっこよさと、アンニュイ美女フローレンス・ショーのかなり低いけだるい美声から放たれるポエトリー・リーディングが売りで、そのワン&オンリーな芸風が早くから確立していましたが、ケイト・ル・ボンをプロデュースに迎えたこのアルバムでは歌心がぐっと上がりましたね。リズムのファンキー度が全体に上がり、とりわけトム・ダウスの金属質なギターから放たれるリフ、これがメロディックかつかなり多彩になりました。フローレンスのポエムも遊び感覚に溢れた鼻歌が交じるようになり、良い意味でより余裕が出てきたと言うか。得意の型が最初からある分、かなり有利なバンドとの印象を受けてましたが、なおも進化は止まっていないようです。

Singin' To An Empty Chair/Ratboys

続いてはラットボーイズ。シカゴを拠点とする4人組のインディ・ギターバンド。ものによってはオルタナ・カントリーと称すものもあるんですけど、それはどちらかというと、80年代のREM以降に顕著だった、フォーク・ロック・テイストなんだけど、ストレートなギター・ロックみたいなUSインディ・ロックあったでしょ?西海岸のペイズリー・アンダーグラウンドみたいなもの。あれの現代進化版みたいな感じですね。2023年の前作が割と年間ベストとかにもあがってたので気にして聴いてみたら、そのギターのロックンロールの切れ味と、フォーキーな枯れ具合との対比が更に鮮やかになってより独自性が増してましたね。フロント・ウーマンのジュリア・スタイナーのハイトーンの甘えた感じがしながらも力むとかすれる瞬間もなんともセクシー。ウェンズデーと共に注目したいインディの良心的存在です。

Play Me/Kim Gordon

続いてはインディ界の大重鎮。元ソニック・ユースのキム・ゴードンの新作です。この人、ソニック・ユース解散してソロになってからの実験性と業の進化ぶりがすごいですね。ロック聴いて半世紀近くになりますけど、まさかそのうちに、70代に突入した女性アーティストが、ヒップホップのトラップのビートをノイズとかき混ぜて初期衝動的な歪として応用させながらロックを先に進ませる世の中がやってくるなんて、想像したことさえなかったですよ。しかも彼女の場合、その手法が板についてくれば来るほど、曲がより練れてきて強度を増してくるから恐れ入ります。ソニック・ユースに関しては、解散の理由になったのがサーストンの浮気であり、そのサーストンがキムに女性蔑視まがいの発言なんかもしたりして「サイテー!」とかって思ってるんですけど(笑)、それもあって断然キム推しですね。

U/Underscores

続いてはアンダースコアズ。サンフランシスコ生まれの25歳、エイプリル・ハーパー・グレイの1人プロジェクトの3枚目のアルバムです。彼女ですけど、このアルバム、ここ最近出たハイパーポップもののアルバムの中だとこれがベストですね。SlayyyterとかFcukersとかも良かったんですけど、総合力だとダントツかな。この人、リズムのカットアップとか、グリッチ・ノイズの畳み掛けるような攻撃的な入れ方とかの技巧部分もエッジィでカッコいいんですけど、根本的なソングライティングがすごくよく出来てるというか。シティ・ポップ風味のライト・ソウルの曲で良いの書くんですよね。Tell Me (You Want It)とかBodyfeelingといった曲はアンセムになれるポテンシャルも秘めてるし。それを誘う彼女の声もまた良くて。月並みな言い方しちゃうと「CharliXCXに対する次世代アメリカからの回答」なんて見方も出来そうな気がしてます。

Trying Times/James Blake

続いてはジェイムス・ブレイクなんですが、彼のアルバムが僕のこの企画に浮上してくるの、いつ以来なんでしょうか?!僕、2017年からこの企画やってるんですけど、相当前な気がしますね。というのも、彼が「Limit to Your Love」をはじめとしたシングルでダブ・ステップのシーンを騒然とさせたのが2011年くらいで、時代の寵児だったのそこから数年でしたからね。そこからプロデューサーとして重宝もされてはいたものの、どこか「ダブ・ステップのビートと、ディープなファルセットのシンガーの双頭使い」の定型パターンに陥りすぎて「そこからこの人、どう行くんだろう?」というのが見えないまま10年くらい来ちゃった印象ありましたからね。それが今作ではビートの浮遊感と空間スケールが広がり、SSW的な部分ではデッドな音空間でのアコースティックを活かせるようにもなって、ここに来て表現の幅が広がった印象を与えます。新たな時代をここから刻みそうな予感を抱かせます。

The Mountain/Gorillaz

そして、ゴリラズもこれ、かなり久々の会心作でしたね。彼ら、というかデーモン・アルバーンによるこのプロジェクトも、最後に本当に面白かったアルバムって、2010年の「Plastic Beach」で、その後もコンスタントに作品は発表してきた訳ですけど、どうもデーモンによるオルタナティヴ・ヒップホップのキュレーション・アルバムみたいな、あたかも「フォーマット」が先にありきのプロジェクトみたいな感じになってきてて、そこがすごく物足りなく「だったらブラーやってよ」と思ってさえいました。ところが本作は、そんなデーモンがゴリラズの当初の異議を思い出したかのように、「彼自身が心からやりたいことをやる」感じに回帰。インドの伝統楽器シタールの名プレーヤー、ラヴィ・シャンカールの実娘アヌーシュカ・シャンタールによるシタールを全面的にフィーチャーしたデーモン印のインド音楽を聴かせてくれています。こういうグローバルな鼻のきかせ方はもはやポール・サイモンの域にも足しいてますね。

Arirang/BTS

そして、ここでBTSです。このアルバムについては先週書いたばかりなのでそちらの方を読んでいただいたほうが早くはあるのですが、このアルバム、何が良いかって、Dynamite とかButterでシングルでビルボードの1位になったときのような「みんなから愛されるバンタン」みたいな、いわば「鳩」みたいなイメージを一旦脇に置いといて、まるで1からキャリアを再構築するような挑戦的なアルバムを作ってきたことですね。初期の彼らを思い出させる攻めのヒップホップの連続に、これまで聞かせたことのなかった本格的なロック、さらにスローかつ実験的なものさえあったR&B。コアファンでさえいきなり聞かされると「えっ!」となるようなことを反発恐れずに堂々とやってきた。しかもそれが全然不似合いになってなく、これまでと地続きでかつ今後に繋がることもやってきた。マイナスに解釈するポイントが個人的に見えないんですよね。

Nothing's Happen About Me/Mitski

そして続いてミツキです。彼女のすごいのはその安定感ですね。2014年の出世作の「Meet Me At Makeout Creek」以降、今作まで6作ありますけど、その間、外したアルバム、ないですからね。どれも高い水準のまま推移してて。このアルバムは前作「The Land Is Inhospitable And So Are We」に続いて基本は南部移住後のフォーク/カントリー路線ではあるんですけど、それこそ「Meet Me」の頃のようなグランジ・ギターを呼び戻した初期路線も徐々に復活させてきて、それを「その後のミツキ」とうまくかけ合わせたりもして。このアルバムでは前作のような「My Love Mine All Mine」みたいな大きなシングル・ヒットは出てませんが、あの曲のヒットに創作リズムを狂わされることなく、自分のアーティストとしてのクリエイティビティを冷静に保ったまま次に進めているのは良いサインだと思いますね。

This Music May Contain Hope/RAYE

そして、出たばかりのRAYE。ここ数年、イギリスでの女性R&Bの活躍が目立ってて、去年はそれがオリヴィア・ディーンで顕著になりましたけど、元々それを引っ張ってた印象の強かった彼女が、これはまあ、規格外のすごいアルバム作りましたね。2023年の前作「My 21st Century Blues」の時から「エイミー・ワインハウスの正統後継者」的なアプローチはしてて、ライブも一貫して60sスタイルのライブレビュー・スタイルでやってたりするこだわりを見せてましたが、今作はそこを基礎としながらもスケールを一気に広げ、アルバム1枚通してコンセプチュアルなソウル・ミュージカルを仕立て上げました。この時代に、シングル・ヒットの物量作戦的なものではなく、アルバム・トータルで聞かせる一つの大きな単位を作ったのにも感心しますが、見事な作曲能力でそれがとっ散らからず、ハンス・ジマーのストリングスからアル・グリーンの渋みあるゴスペルまで含めた「希望のサウンド」を60分以上飽きさせることなく聞かせられているのは見事です。それこそエイミーが草葉の陰で「自分が作りたかった」と嫉妬しそうだし、ビヨンセでもガガでもミュージカル経験はあるものの作ってこなかった。デビュー前の不遇につき長らく裏方であることを強いられた経験をこういう形で転化させることの出来た彼女を祝福したいですね。

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