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ひつじ雲ホテル ―3つのお題に空想のひらめきを

 気付くとひつじ雲ホテルにいた。友人から噂に聞いていたホテルにいつの間にか来ていた。

 ふわふわという擬音を体現したかのような全身真っ白なフロントスタッフが私を出迎えた。
「お疲れ様でございます」
 柔らかく弾みのある声だった。
「ここは?」
 一応訊ねてみた。
「柔らかなおもてなし、ひつじ雲ホテルでございます」
 フロントスタッフの女性はにこっと笑ってみせた。
「ご予約はもうお済みでしょうか?」
「たぶん・・・・・・してないです」
「一度ご確認しますので、お名前を教えてください」
「布和です。布和、凛です」
 予約などしているはずもない。でも咄嗟に自分の名前が口から飛び出した。
「布和凛様ですね」
 彼女は手前に置かれた画面をゆっくりと見た。

「ありました。すぐにお部屋へご案内しますね」
 ぺこっと彼女は頭を下げる。
「不思議なホテルですね」
「皆さん、そうおっしゃいます」
「あと私、予約した記憶ありませんよ」
「でも、ご予約は既に承っております」
「こんなことってこのホテルでは良くあるんですか?」
「よく分かりませんが、時々そんな方もいたり、いなかったり?」
 そんな会話をしながらふわふわした柔らかな廊下を二人で進んだ。

「こちらが布和様のお部屋です」
 そういって彼女が部屋のドアを開ける。
「ここって?」
「ひつじ雲。乗ってみます?」
 その部屋には見渡す限りのもこもことしたひつじ雲が広がっていた。
「落ちないんですか?」
「落ちる? そんなことあるわけないじゃないですか」
 そういって彼女はひつじ雲に飛び乗った。それからぼよんぼよんと気持ちよさそうに弾んだ。
 私も意を決してその雲に飛び乗った。
「意外と弾力あるんですね」
「そうなんですよ。当ホテル自慢のひつじ雲ですからね」
「これ、ちぎったりできるんですね」
「はい、ご自由にお使いくださいね」
 そう言い残し女性スタッフは部屋を出た。

 ひつじ雲で飛び跳ねて遊んでいるとだんだんと眠くなる。そこでこの雲をちぎってベッドを作ってみた。
 寝心地は控えめに言って最高だ。
 すぐに私の意識はまどろみの彼方へと消えた。

 起きるとそこは自室だった。
 夢を見ていたのかとも思ったが、体がまだあのひつじ雲に乗った時の心地よい浮遊感を覚えている。

 うっすらと歌詞のない穏やかなメロディーが自室には流れていた。
 そうだ、眠りにつく前に私がかけたんだっけ。

 友人が囁いた噂は本当だった。
「この曲を聴くと必ずひつじ雲ホテルに行ける」




最後まで読んでいただき
ありがとうございました。

こちらの企画に
参加させていただきました。

*イラストも片桐みかんさんのものを使用させていただきました。

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