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旅情コラム[村上モトイの旅に出よう]🎵Mama,Do you remember

日本海新聞隔週連載
絵と文/村上モトイ
提供/湯村温泉朝野家

ミスするめ

「はいはい。成る程。要するに『日本海観光物産』様が、日本海虎鐘社(うち)に相談があるってことですね?それで、すぐに事務所に戻って来い、と。承知しました。すぐ戻ります」

課長からの連絡を受けた僕は、その日取材をしていた

「ミスするめ@日本海」

Westerners' image of Miss Surume

の発表会を終えて急いで会社に戻りました。

日本海観光物産は、古びた、あ、失礼、ひなびた雰囲気がいい感じを出す旅館と、そこに隣接する蒲鉾(かまぼこ)工場を経営される、地元ではそれなりの歴史を誇る日本海虎鐘社のお得意様であります。

日本海観光物産は、ひなびた雰囲気が逆に“映(ば)える”と話題の旅館と、そこに隣接する蒲鉾工場を経営しており、地元で長年親しまれてきた日本海虎鐘社の得意先です。

IT化の波、そしてメタバース!?

「ええ?僕が講師ですか?それもテーマは

AIとメタバース

ですかあ?」そんな無茶言われても・・・そりゃあ確かに僕は日本海虎鐘社のDX業務の担当ではありますが、人様にお教えするなんてとんでもない!

そんな課長に無茶な業務命令に関して詳しくたずねると・・・なんでも、我が日本海虎鐘社も多角経営というか、IT化(笑)の波に乗って新規事業を始めるんだそうです。今更「IT化の波」とか、もう全然まったくもって最早“あれ”ですけどね。苦笑。

まあ、それこそが日本海的なゆったりのたりとした時間の流れ。大阪や東京、ましてやNYなんて言う丁々発止、生き馬の目を抜くような都会とは違った良さがあると言うものです。

This kind of work used to be the specialty of economic animals.

しかし確かに今やホテル・旅館予約はインターネット予約はもちろんのこと、疑似宿泊体験ができるなどの工夫がデファクトスタンダードというやつで、この波は家族経営の旅館や民宿が中心である我が社の顧客の元にもやって来ております。

そこで、今回は僕が講師になって、日本海観光物産の蛸山社長に、いまさらPCの使い方なんぞをお教えして、それから蛸山社長の経営される

『瀬戸際ホテル』のAIの導入とメタバース概念の導入

に関して打ち合せをするという、そういうお話です。

「蛸山社長!ご無沙汰しております。日本海虎鐘社の村上でございます」

「おお。ムラカミ君か。今日はご苦労やったな。ちょっと待ってな。そっち行くわ。先座って昆布茶でも飲んどいてえや」

隣接する蒲鉾工場で作業中の蛸山社長に声をかけて、僕は先に『瀬戸際ホテル』の事務所へと入ります。

A treasure trove of delicious flavors! Kombu that heals both body and mind!

PCもAIも「買うてきた」社長

経理担当の女性にお茶を出していただいて座って待っていると、真っ赤な糸で左胸に

『一家に一本!蛸印の蒲鉾(かまぼこ)』

のキャッチコピーが刺繍されたグレーの作業服に、蛸印のプリントも鮮やかな真っ赤な作業帽子を被った蛸山社長が現れました。

「ムラカミ君。今日はありがとう。早速やけどな、このPCやねん。昨日豊岡の上新電気まで買いに行ってきたんや。設定言うのは上新電気にやってもうた」

「ほお。これですか?いやいや。最新式ですやん。張り込まはりましたね。社長」

「うん。あれやで。AIチャット言うのも買うてきたからな」と自慢げな蛸山社長。

It was humans who drove HAL crazy

「え?!えっ!?AIチャットを購入?それ、何兆円かかりましたん!?」とか突っ込んでやろうかと思いましたが、瀬戸際ホテルのしょぼい事務所には不釣り合いな感じの燦然と光り輝く無線LANルーターと最新式のPCに免じて、ここは許しておいてやりました。

「ほら、上新電気で買うてきたPCや。おまけに阪神タイガースのレプリカユニももろたわ。AIも入っとるらしいで」

OK、ぐるぐる

いつのまにか作業着の上に黒と黄色のユニフォームを羽織っている社長。

「AIまで?すごいですね、社長。それ、ChatGPTかGoogle Geminiですか?」

社長が

「OK、ぐるぐる、瀬戸際ホテルのおすすめ言うてみぃ」

と話しかけるたびに、AIが元気に返事をする様子は、どこかほほえましくもありました。

おなじみの芸

さてさて、瀬戸際ホテルの事務所で僕は約一時間、蛸山社長にPCの使い方を教えます。

「はいはい。そこ、そうポインタを合わせてクリックしてください」「どこや?どこに合わせるんや?」

「あ、マウスを動かして、そこに合わせてください」と言うと、もうお約束の古くさいOAボケの伝統芸のように・・・蛸山社長は、右手に持ったマウスを直接PCのモニタに合わせようとします。

Kamaboko is also in the DX era.

「おいおい。社長。ボケが古い・・・」と僕が突っ込もうとすると、社長が「わかったわ。なるほど。ムラカミ君教えるの上手いな。ほんまやわ。動いた動いた」

人間万事塞翁が馬。結果オーライ。

モニターがタッチパネル仕様になったものだから、マウスをモニタに当てたら、きちんと作動してやがる。

そんなこんなで蛸山社長に簡単にPC操作をお教えした上で、今度はホテルのメタバースの導入などの説明をすることとなりました。

噂の“第一応接室”

「その話は予約担当部長も入ってもらうし、隣の第一応接室でやろうか?ちょっと着替えてくるわ。第一応接室で待っといて」

そう言われて、僕は瀬戸際ホテルにひとつしかない応接室である“第一“応接室に移動して、予約担当部長と一緒に蛸山社長を待っていました。

作業服と作業帽を脱いでスーツに着替えた蛸山社長が登場。「いやあ、社長。帽子脱いでスーツに着替えはったら、なかなか貫禄ありますね

One reception room, the first reception room, that's not wrong

べりべりべり・・・

「ふふ、そうか?まあ、お茶飲み。今度はお客さん用の高いやつ淹れておいたから」あれ?作業帽を脱いだはずの蛸山社長が、また別の帽子を被っておられることに気づきました。

とても手の込んだ細工の帽子でいかにも高級そうです。

素材は人毛によく似た素材。

「チミ、失礼だなあ。人前に出るのに帽子を被ったままなんて!取りたまへ!」などと怒鳴りつけることが“できない”、そんな非常にデリケートな問題を内包する帽子でした。

もう駄目です。

打ち合せなんて一切耳に入らない。僕の視線は蛸山社長の、その人毛にそっくりな素材で精巧に細工された帽子に釘付けです。

なんとかかんとか打ち合せを終えた後・・・

第一会議室を後にする蛸山社長が頭部に頂く、その人毛にそっくりな素材で精巧に構築された見るからに高級そうな帽子から僕が目線を無理矢理剥がした時は、

BeriBeriBeri

べりべりべり

とまるでガムテープを剥がすような音がした気がします。

Mama,Do you remember
the old straw hat you gave to me
I lost the hat long ago flew to the foggy canyon
Yeah Mama,I wonder what happened to that old straw hat
Falling down the mountain side out of my reach like your heart
Suddenly the wind came up
Stealing my hat from me yeah
Swirling whirling gusts of wind
Blowing it higher away
Mama,that old straw hat was the only one I really loved
But we lost it,no one could bring it back like the life you gave me
Like the life you gave me

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