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「優しい人ほど気をつけて」─急いで距離を縮めてくる人との付き合い方

うつ病やHSPなど、心が繊細な人の中には、人との距離感に悩みやすい方が少なくありません。

「嫌われたくない。」
「相手を傷つけたくない。」
「困っている人を助けたい。」

そんな優しさを持っているからこそ、相手のペースに合わせすぎてしまい、あとになって心が疲れ切ってしまうことがあります。

私はこれまで仕事や作業所などで、さまざまな精神疾患を抱えた方と関わってきました。

もちろん、大半の方は穏やかで思いやりがあり、素敵な方ばかりです。

しかし、その一方で、ごく一部ではありますが、知り合ったばかりにもかかわらず急速に距離を縮めようとする方にも出会いました。

初対面に近い段階で、自分の病気や家庭環境、恋愛、トラウマなど、とても深い話を次々と打ち明けてくる。

そして、

「あなたはどうなの?」
「家族は?」
「病気は?」
「昔はどんな人だったの?」

と、こちらにも同じような自己開示を求めてくるのです。

最初は「信用してくれているのかな」と思っていました。

けれど、経験を重ねるうちに、これは必ずしも信頼とは限らないのだと感じるようになりました。

今回は、その背景にある心理と、繊細な人が自分の心を守るために知っておいてほしいことを書いてみたいと思います。



距離を急いで縮める人の心理とは

自己開示そのものは、人間関係を築くうえでとても大切なものです。

少しずつ自分を知ってもらい、少しずつ相手を知る。その積み重ねが信頼になります。

しかし、まだ十分な関係ができていない段階で深い話を一気にする人は、「早く安心したい」という気持ちを強く抱えていることがあります。

その背景には、幼い頃の愛着形成(愛着スタイル)が影響している場合があります。

子どもの頃に安心できる人間関係を築きにくかった人は、大人になってからも「嫌われるのではないか」「見捨てられるのではないか」という不安を抱えやすいと言われています。

そのため、本来なら時間をかけて育てる信頼関係を、短期間で作ろうとしてしまうことがあります。

また、トラウマを経験している人は、人との距離感が極端になりやすいこともあります。

「すぐに心を開く」「逆に誰にも近づけない」という両極端な状態になりやすく、その結果、急激な自己開示という形で表れることもあります。

もちろん、これらは精神疾患が原因というわけではありません。

精神疾患の有無にかかわらず、愛着や生育環境、これまでの人生経験によって起こる対人関係の特徴なのです。


なぜ相手にも自己開示を求めるのでしょうか

「私はこんなに話したのだから、あなたも話して。」

こうした空気を感じたことがある人もいるかもしれません。

この背景には、承認欲求や見捨てられ不安、そして境界線(バウンダリー)の曖昧さが隠れていることがあります。

健康な人間関係では、「話したくないことは話さなくてもいい」「相手には相手のペースがある」という感覚があります。

ところが、人との境界線が育ちにくかった人は、その感覚がわかりにくいことがあります。

相手を知れば知るほど安心できる。

相手にも深い話をしてもらえれば、自分だけが心を開いているわけではないと安心できる。

そんな無意識の確認作業になっていることも少なくありません。

ただ、その行動は相手にとっては「質問攻め」「踏み込みすぎ」と感じられ、負担になってしまうことがあります。


ときには「コントロール」へ変わってしまうことも

さらに、ごく一部ではありますが、このような関わり方が相手をコントロールする方向へ向かってしまう人もいます。

例えば、

「私はここまで話したのに。」

「私だけ信用してくれないの?」

「そんなことも話せないの?」

このように罪悪感を刺激しながら、相手に自己開示を促すケースです。

最初は無意識だったとしても、「もっと相手を知りたい」「相手をつなぎ止めたい」という気持ちが強くなりすぎると、結果的に相手を自分のペースへ引き込もうとする関係になってしまうことがあります。

心理学では、このような関係が続くと共依存につながることもあると言われています。

「私しかこの人を理解できない。」

「あなたには私しかいない。」

そんな関係は、一見すると深い絆のようですが、お互いの自由を少しずつ奪ってしまうこともあります。

ここで大切なのは、「精神疾患だからこうなる」と考えないことです。

支配的な関わり方や境界線の曖昧さは、精神疾患そのものではなく、その人の性格や生育環境、愛着形成、これまでの対人経験など、さまざまな要因が重なって生まれるものです。


優しい人ほど「境界線」を持つことが大切です

HSPやうつ病の方は、人の気持ちを敏感に感じ取る力があります。

だからこそ、「ここで断ったらかわいそう」「期待に応えなければ」と思ってしまいがちです。

ですが、人には話したくないことがあって当然です。

「まだそこまでは話せません。」

「もう少し仲良くなってからお話ししますね。」

そんな言葉を伝えることは、相手を拒絶することではありません。

自分の心を守るための健全な境界線です。

本当に信頼できる人は、その境界線を尊重してくれます。

もし、その一言で怒ったり、不機嫌になったり、さらに踏み込もうとしたりするのであれば、その関係は少し立ち止まって考えてもよいサインかもしれません。

信頼関係は、急いで築くものではありません。

少しずつ相手を知り、少しずつ自分を知ってもらう。

その積み重ねが、本当に安心できる人間関係につながります。

優しい人ほど、「相手を大切にすること」と同じくらい、「自分の心を守ること」も大切にしてください。

その境界線は、冷たさではなく、あなたがこれからも穏やかな人間関係を築いていくための、大切な土台になるはずです。

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