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【掌編小説】触れられない光のもとで

月が、やけに明るい夜だった。

風はなく、音もなかった。
周囲を取り囲む林は静まり返り、遠くの街灯すら届かない砂地に、ぽつんと僕たちはいた。 

君は、僕の上着を羽織っていた。
華奢な肩に、ふわりと。
それは少し大きすぎたけれど、君は気にするふうでもなく、いつものように笑っていた。

「寒くない?」

僕が問うと、君はただ首を振って、「だいじょうぶ」と答えた。
それだけのことが、なぜか今も胸に残っている。
君の声の温度、目元に浮かぶ光、上着の裾を握りしめる指先の白さ。 

 あの夜が最後になるなんて、思ってもみなかった。

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