【短編小説】『この星に 君が消えてしまっても』第10章
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あの夜から、三つ目の朝を迎えた。
夏の光はやわらぎ、空には秋の気配が少しずつ混じり始めていた。
それでも、あの夜の星空は、まだ胸の奥に鮮やかに残っている。
梓川こども園の一角。
晴哉は、木陰のベンチに座り、子どもたちの笑い声を聞いていた。
美月が水遊びの準備をしている。濡れた髪の毛が陽に透けて、まるで宵の星を溶かしたみたいだった。
「ねえ、せんせー!」
一人の女の子が、ぴょんと走ってくる。
「これ、あげるっ」
手渡されたのは、折り紙で作られた流れ星。小さな手で一生懸命に折られた、ちょっといびつな五芒星の先に、細長い帯が揺れている。
「願いごと、書いたの。『だいすきなひとが、ずっとそばにいますように』って」
女の子は、恥ずかしそうに晴哉を見上げていた。
晴哉は目を細めて笑った。
「大丈夫。ずっとそばにいるからね」
小さな手のぬくもりが、心の奥まで届くようだった。
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園の帰り道、美月とふたり、川沿いを歩く。
風が吹き、梓川の水面にさざ波が立つ。
あの夜、銀の弾丸を撃った瞬間のことを、ふたりはまだ言葉にできずにいた。
でも、それでよかった。
すべてを語る必要なんてない。
大切なのは、今ここにいること。
そばにいること。
見上げた空に、同じ光を見ていること。
「晴哉さん」
「うん?」
「ありがとうね、消えなかったでしょ。私、忘れないから。これからも」
「俺も……君と、 ずっと生きていたい」
ふたりの影が、夕陽に長く伸びていた。
まるで、消えた存在たちがふたりに寄り添っているかのように。
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夜。
晴哉の部屋。
彼は机に向かってペンを取り、封筒に手紙を綴っていた。
あの夜、君を救えなかったこと。
それでも、生きることを選んだこと。
美月と出会えたこと。
どれもすべて、愛のかたちだったんだと思う。
澪、
俺はようやく、「生きていていい」と思えるようになったよ。
ありがとう。
そして、さようなら。
封を閉じて、そっと引き出しにしまう。
もう、その手紙を出すことはないだろう。
けれど、それは晴哉の中で、確かに届いた「返歌」だった。
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窓を開けると、夜空にはまだ幾つかの星が瞬いていた。
流星群はもう去った。
それでも、星はそこにいる。
犠牲を必要としない愛が、確かにそこに、灯っている。
『Love Doesn’t Need Any Sacrifice』(愛に犠牲などいらない)
心の中で静かに流れ出したあの曲が、ゆっくりと夜の風に乗って、空へと昇っていった。
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