『火星の人』が近代SFなのに名作とされる理由を考察してみた
すごいとしか言えない。背景知識を得たうえではよりロマンを感じるが、内容だけを見てもただただ引き込まれる“名作”と呼ばれるにふさわしいSFだった。
さすがに21世紀に突入してから出た海外SF小説に“名作”と分類するのはいかがなものかと思って読み始めた。
そりゃ“名作”の予感がするとかだったらわかるよ。だけど、“名作”ってヤツは何年も何十年も経て愛され続ける、時代を変えるほどの深みのある1冊なんじゃないのかと。そんなに軽い気持ちで言ってもいいのかと。
いいんですね、コレが。だって、SF小説の歴史を変えちゃったんだから。
内容は他のどのSFと比較しても、ムズカシイ。理系大学に進んだ自分ごときじゃチンプンカンプン。地学を学んでたって、大半を理解することは1周するだけじゃ不可能だね。
ムズカシイSFって、フツーなら買っても機械的なところとか専門用語が出てくるところとか、読み飛ばしちゃうじゃん。ていうかそもそも、フツーはSFに慣れ親しんでなかったら、そんな小説買おうとすらしない。
『夏への扉』みたいに、嚙み砕かれてより文学的なSF小説ならまだしもね。
それなのに、はじまりは日本でいうと『なろう小説』みたいなノリで、ウェブサイトに投稿していた初期の原作から。そして、熱狂的なファンからの要望で、皆さんご存じのKindleに公開。ここがヤバくて、無料公開ができなかったからってことで、最低価格の99セントで販売。円安とか最近ではあるとはいえ、100円ちょっとで買える。
だからこその3ヶ月で35000ダウンロード...。
今どきの売れ方らしいっちゃらしいけど、だからこそSFファン以外もこぞって購入していって、
そして、あれよあれよと言う間に書籍化・ハリウッド化。映画『オデッセイ』になる。

これこそ近代の名作SF『火星の人』
いや、流行りモノを“名作”って安直すぎるってー!
そう思いますよね?ね?
もちろん作者のアンディ・ウィアーにも根強いルーツがあって、深みがないように出てるんですね。
幼いころから名作SFを読み漁って、挙句の果てには若干15歳にして国立研究所に雇われるってね。
しかもね、なにがおもしろいって、火星に一人取り残された物語とて、ベタに隕石衝突とか火星人との接触みたいな、ロビンソン・クルーソーばりの外的危険が襲ってくるストーリーじゃない。つまり、自分とNASAのうっかりミスで死にかけることが多々あるだけ。
火星に取り残されたから、主人公にとってはリスクを犯そうと犯すまいと死の危機がある。だから原子力と隣り合わせで寝るのもお構いナシ。それに対してNASAはヒヤヒヤもの。そんなNASAを主人公はうざがったり、ありがたがったり。
そんなうっかりの繰り返しを飽きさせない工夫こそが、この名作の真髄。
主人公は火星にひとりぼっちになってしまったその日から、鬱にもならずにふざけてひとりごち続ける。
このひとりごとがマジでおもしろい。
シリアスなときこそ、不謹慎ながらも噴き出してしまう。
カフェインの錠剤をお湯に溶かしただけの飲み物を“火星コーヒー”だと言い張り、何百日ぶりの浅いお風呂に「あああー-ー」とだけ言い、そして死ぬ自虐ネタも映えに映える。
そんなふざけた主人公を楽しむために読もう!って言いたいけど、やっぱり話がムズカシイ。だからオススメできるのは、SF・ラノベ・シュールギャグが好きな人。
結末もちょうどよくダレないのが自分好みだった。
言うなれば、SF界の『ハリー・ポッター』かな。
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