【旅のラゴス】無職転生のモデル。日本SF小説最高傑作
ある男が旅を始めて死ぬまで。ラゴスの一生を不思議な超能力的現象とともに描ききった、筒井康隆の連作SF小説『旅のラゴス』
これを読み終わった時にまず浮かんだ感想は、『無職転生』ルーデウスの一生はこれをモデルにしたと考えると納得だということ。そして、これが筒井康隆の小説かということ。
筒井康隆作品とのファーストコンタクトは『最後の喫煙者』であり、エログロすぎて中学生の俺の脳みそをぶっ飛ばしやがった。
セカンドコンタクトは『時をかける少女』であり、SF小説のお手本のような小説だったので、筒井康隆こんなもんかとなった。
そしてサードコンタクトに『旅のラゴス』。なるほど筒井康隆という人物像に合点がいった。この人は日本小説家の常にパイオニアとして開拓し続けてきた、”巨匠“と呼ばれるに相応しい人間なのだと。
『最後の喫煙者』を最初に読んだのが悪かった。あの小説はキケン過ぎた。筒井康隆中毒必至な小説だった。
『旅のラゴス』という作品ではなぜ人々に超能力が備わっているのか。旧時代の最新技術が滅んだからこそ、ニンゲンが原始回帰し、本能的な欲求とともに第六感が発達したからだという、現代の便利すぎる世界へのアンチテーゼ。俺こういう物語大好き。だって、本来のニンゲンのチカラって絶対こういうの備わってると思うもん。
そうそう、『無職転生』がモデルにした作品だと思った理由が必要だよね。
中世ヨーロッパらしい社会。奴隷に身をやつすやるせなさ。いろんな女性と結婚する生涯。自分で超常現象を解析する研究脳。現代の科学技術を唯一知る特異性。
そして結末が、ヒトガミを追うのか最愛の者を追うのかの違いはあれど、穏やかな死を迎える。
なんかこうやって書き出すと違うような気もしてくるけど、読んだら絶対『無職転生』だと思ってくれるはず。百聞は一見にしかずだね。
というか、この本は指数関数的におもしろくなっていて、珍しくもど真ん中あたりのストーリー『王国への道』が一番おもしろいって構成なんだよね。最初は状況把握が難しすぎて読みづらいけど、読み進めていくごとに出会えたことを喜べる小説になってる。
そして、読み終えたときにはラゴスが大好きになっていて、感情移入してしまい、理想の人物にもなっている。
だってさ、ラゴスのちょっとスカしてなんでもできちゃう万能感、そりゃあ厨二心をくすぐられますよ。それでモテまくるんだし。しかも自分が老いることも気にせずに、自分がやりたいこと・やらなければならないことをただひたすらにやり続ける。
かたや何年にもわたって大好きな読書・知識吸収に耽り、かたや奴隷になっても目的のため何年もの間虎視眈々とやるべきことをやる。さらには好奇心が刺激された地には、遠回りになってでも実際に足を踏み入れる。
一生という時間は限られているから、つい私たちは焦ってしまう。けれど、一生の価値を理解しているラゴスは、歳をとることに恐怖がない。ただひたすらにやりたいことに熱中し続ける。これは何十年単位で見通しつつも、現在を生きてなきゃできない生き方だもんな。マジでカッコよすぎるぜ。
なんにせよ、好きな小説ベスト10に入る一冊になった。本気で読むことをオススメしたい。この本は何時間かかってでも読む価値がある。
ぜひ読んでみてくれ。
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