SaaSの次。データを分散させたままに、現実に沿った仕事の在り方へ代謝させていく時代へ
ITは、記録を残すためのものや人間にとっての操作をデータに反映する存在から、事業が現実と同期し続けるためのものへ変わっていきはじめています。
「SaaSが終わる」とかの話ではなく、いいデータ構造を持った各種業務システムは、これからも業務の重要な記録場所であり続けると思っています。

変化の背景にはいつも必要性があり、今回のITの役割変化の背景にある問題は以下だと感じています。
"こんなにも沢山のITサービスを活用した事業運営であるにもかかわらず、実際の現実とは簡単に乖離してしまう。最新のやり方や事情と同期し続けていないこと"
ワークフローや仕事のやり方は、簡単に崩れて変わってしまうわりには、最新の事情や実態に即してくれません。
どの現場も仕事に鬱陶しさを感じてしまう背景だとも言えるように思います。
それを解決できる前提が揃ったから生まれている動きだと思います。
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四象限で見るIT/SaaSの進化
IT/SaaSの進化を二つの軸で整理してみます。
一つ目の軸は、データのあり方。
分散しているのか、集中しているのか。
二つ目の軸は、価値の中心。
固定することに価値があるのか、代謝することに価値があるのか。

1つ目
分散 × 固定
紙、口頭、ローカルファイル、個人メモの時代。
情報は現場にあるが、バラバラで、組織的に扱いにくい。
2つ目
集中 × 固定
ERP、基幹DB、業務システムの時代
現実をデジタルな台帳に変え、業務上の事実をシステムに集約した。
3つ目
集中 × 代謝
SaaS、BI、DWH、CDP、KPIの時代
集めたデータをクラウド上で活用し、分析、可視化、改善に使うようになった。
4つ目
分散 × 代謝
LLM + API、メタインターフェース、AIエージェントの時代
データを一箇所に集め切らなくても、分散したまま意味を読み、業務や事業資産を更新できるようになりつつある。
最初の分散と最後の分散はまったく違う。
最初の分散は、ただバラバラな状態。
最後の分散は、LLMとAPIによって接続され、意味として扱える状態だけど、居場所は分散している状態。
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重要な補足:進化の流れがスキップされるわけではない。
トレンド変わったからいきなりみんな分散で代謝だよーって話にはならないです。
現場が1なら次は2、2なら次は3。
3に至れたあとに4にもなれる前提が揃ったよ!
って書いてます。

記録も何もないならまずは残るようにすることですしね。
ただ昔と比べればどの段階の現状からでも、素早く1〜4へ移行するためのインフラがめっちゃあります。
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デジタル化、クラウド化、スキーマレス化
この四象限の移行を、三つの変化として見れます。

1→2は、デジタル化
ここで起きたことは、現実の台帳化。
2→3は、クラウド化
台帳がクラウドに載り、複数人で使いやすくなり、外部ツールとつながり、ログが溜まり、分析できるようになった。
3→4は、スキーマレス化である。
ここでいうスキーマレス化とは、スキーマ(ツールや人間同士の受け渡しの方法論)が不要になるという意味ではないです。
きれいに整ったテーブルや共通項目に載っていない情報も、意味として扱えるようになるという意味。
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スキーマレス化の背景
これまでデータを活用するには、先に形式をそろえる必要がありました。
カラム設計、イベント定義、ID統合、データマート、KPI定義、ETL/ELT。
これらは今後も重要です。
ただし、それだけでは扱いきれない情報が事業には元からたくさん存在していて、その情報をよく知る人たちはデータベースやスキーマの統一性を図ることは流石に難しいです。
商談メモ、問い合わせ、Slackの会話、議事録、採用面談メモ、LPの文面、FAQ、営業資料、顧客インタビュー、SNSの反応。
LLMは、こうした非構造な情報を意味として読める。
各サービスに当たり前に開放されるようになったAPIは、それぞれのSaaSにデータを移さずアクセスし、必要に応じて書き戻せる。
つまり、データを一箇所に集め切らなくても、分散したまま読める。意味づけできる。更新に使える。
これが第4象限に至り始めた前提です。
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OSとコックピット

CRMには顧客情報が残る。
会計SaaSには取引情報が残る。
CMSにはページが残る。
採用管理には候補者情報が残る。
Slackには会話が残る。
NotionやGoogle Docsには議事録や企画が残る。
ただし、人間がそれぞれのSaaSを個別に開き、手作業で横断し、頭の中でつなぎ合わせる。
これには元々限界があって、大変な仕事になるほどに人の中でも個人差が生まれている。
そこで必要になるのが、仕事を進めるためのルールや知性を含んだOS(オペレーティングシステム)
これは、特定のSaaSの代替ではなくて、複数のSaaSにまたがる情報、会話、判断、資料、タスク、顧客理解、学習履歴、更新履歴を扱うための上位レイヤー。
claudeもその1つだと思います。
第4象限では、何かの発生やズレの検知を元に、何を更新すべきかを示し、必要な文章やデータや入力行為や構成案を作り、各SaaSに反映する流れが生まれる。
ここでもう1つ必要になるのが、人が全体を扱うためのコックピットになると思います。
単なるダッシュボードではないです。
事業の状態、顧客理解の変化、勝手に行われている仕事達の様子、それらを観測する。
自動処理から人間に対するエスカレーションを対応する。
そうした機械労働力と人的労働力の双方への指揮命令を統括する座席のようなもの。
みたいな感じかなと思います。
(仕事によってはコックピットに座る存在がAIという場合もあるかと。)
OSが仕事の流れを支え、コックピットが人間の認識と判断を支えつつ、公的な法人としての品質維持や責任を全うしている証拠を残すことになる。
この二つが、第4象限の中心になりはじめているとおもいます。
現に肉体労働の比率が高い生産ラインと同様の進化ではありますが、それ故にその組織の変化速度は、経営と従業員の態度次第で差分が大きく出るような気がします。
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腐るとは何か、代謝とは何か
以下の図でしれっと代謝という表現をしていたので、改めて書いておきます。

ここでいう「腐る」とは、そのフローそのものが腐り切って使えなくなるというよりは、最新の実態としての現実との同期が切れている業務フローやワークオブジェクトを指しています。
LPが腐るとは、顧客の関心や不安が変わったのに、昔の訴求のまま残っている。
業務マニュアルが腐るとは、実際の運用が変わっているのに、古い手順だけが残っていたり。
仕事においてそのオブジェクトが腐るというのは現実からズレること。
代謝とは、現実の変化を受け取り、業務、資料、導線、関係性、判断、働き方が更新され続けること。
様々な組織を経験しましたが、「結局、何ができなくて現場も経営も困っているのか。何ができていないから問題が未解決なままに膨らむのか。」に一つだけ回答できるならば、自分は代謝だと答えます。
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ITの次の役割
各SaaSに散らばったデータ、資料、会話、顧客理解、関係性、判断履歴を横断し、業務全体が腐らないように更新するレイヤーが必要になる。
これからのITは、データの置き場所を作るだけではなく、仕事全体が現実に合わせて代謝し続ける状態を作ること。
そのために生まれてくるサービスを使ってもよい。内製して代謝を構築してもいい。元気があればとりあえずはみんなで時間をとって資料を更新してもいい。
業務遂行をしながら、大きな組織も小さな組織も代謝しながら進んでいける可能性がある始めての時代だと思う。
代謝をデザインするためにも、
AI任せで勝手にいい感じになる状態まで辿り着くには、全体を理解している人間による強いリーダーシップを発揮する必要はあると思っています。
なぜなら、その状態に向かうために必要なことは
代謝していく流れが機能しているのかをレビュー出来るような視力と解像度を持っていること
肉体労働関係での生産ラインの工業化と同様に、従業員や関係者への理解と協力を作れること
この2点だと考えているからです。
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あとがき
代謝の仕組みが搭載された事業が回り回っていく世界をイメージすると、価値生産ラインそのものが1つの生き物のようになっていく感じがします。
突出した速度でその状態に至る会社もあれば、自分たちなりの速度と手順で進んでいく会社もあって然るべきだと思います。
全体の何%かがそうなっていった時、とある会社の事業と別の会社事業、それら同士が話し合って成長している構図にもなり始める気がします。
それがディストピアかユートピアかはさておき、どの現場にもまだまだ残っているブルシットジョブを確かに無くしていくことは人の健康にとって望ましいんではないかと自分は考えています。
