障害者トライアル雇用ってなあに?メリットデメリットは?
障害者雇用で就職を目指すようになると、「トライアル雇用」という言葉を聞いたり見たりする事があるでしょう。知らないよ?って人もそれはそれでおかしくない。そんなに世に知られてない感あるので……
トライアル。「お試し」って意味ですから、お試し雇用……??ってなりますよね。誰が誰を試すの?ともなる。
これはですね、労働者側も企業側もです。
双方に、お試しする期間を設けるという制度です。
ちなみにこのトライアル雇用、ブランクがあるとか短期離職が多いという、いわゆる健常者でもありがちな就職が上手くいってなくて困ってる人向けの「一般トライアル」と、病気や障害で困ってる人向けの「障害者トライアル」があります。
今回の記事では、「障害者トライアル」のみを扱います。
あと、基本、労働者側の話として解説していきます。
何のための、どういう制度?
病気や障害があると、就職って不安ですよね。
「病気や障害の理解ある職場だろうか」
「病気のせいで働いた事ないんだけど、私はきちんと働けるんだろうか」
「入ってみてダメだったらどうしよう」
ってありますよね。
一方で、障害者を雇うというのは企業側も不安があります。福祉や医療が専門職って事は、一般の人はあんまり知識ないんですよ。たとえ障害理解をしようという心意気があっても、というかあるからこそ「障害って人それぞれらしいけど、うちで対応できるもんだろうか……」ってなる。
他にも
「配慮しないといけないというけど、それで現場が負担になりすぎて仕事回らなくなったらどうしよう」
「精神が不安定な人って勤怠も不安定じゃない??」
「ていうか、以前障害者雇ったらマジで何もできないし周囲に嫌な事言うしでも雇用契約結んじゃったから契約期間終わりまで耐えるしかなかったしマジ酷い目に遭った」
とか、不安とか、あるいは障害者雇用で痛い目を見た経験とかから、障害者雇用に踏み出せない企業もあるわけです。
え?マジで何もできないってそれは出来ることを企業側が見つけて持って来いよって?周囲に嫌な事言うのは多分特性理解してもらえなかったからだから配慮が足りないって?
そういうのを言い出すと「あ、じゃあもういいです。障害者を雇うとそこまで現場に負担がかかり、下手な事したら障害者差別って言われて殴られるんですよね。大人しく、障害者雇用率未達成の罰金払いますね」ってなっちゃうんです。企業は存続を賭けて商売してますからね、不利になるし損益になるが受け入れろ、って言われたら無理ですよ。
それに、それって障害を持つ人側にも良くないですよね。もしそんな負担を全て呑み込んで企業が雇用をするってなると「障害者は誰も彼も役に立たないけど、人道的保護が必要なので社会的責務のみで雇います」ってなる、それって自尊心もへったくれもないじゃないですか。
えー、前置きが長くなりました。
でもここは大事なんですよ。
企業側もリスクを取り、負担を覚悟して、障害者雇用をやっているのです。
ということで、当事者の不安。企業の不安。
それを軽減しようというのがトライアル雇用制度。
労働者も辞めやすく、企業も無理だと思えば期間終了したらそれで終わりに出来る。継続雇用は両方が合意しないとダメ。
ってするものです。あと、トライアル雇用で対象者を雇うと、企業に対して補助金が出ます。そうやって、国としては、障害者雇用を応援していきたいわけですね。
障害者トライアル雇用の対象になる条件の人
障害者トライアル雇用、実は制度上は、障害者手帳は必須じゃないんです。
けど障害者雇用率に入れるには手帳が要るから結局、ほぼ必須ではあるのですが……なのでこの辺の話は省きます。
対象になる条件の人は簡単に言うと、
期間雇用とかじゃなく長く働きたいと思ってる人で、お試し制度だから本雇用にならない可能性も理解してる人。
そして、次の条件のどれかに当てはまる人。
就職した事のない職種の仕事に就こうとしてる。
2年以内に退職2回以上してる、もしくは転職2回以上してる。
働けてない期間が6ヵ月超えてる。
重度身体障害もしくは重度知的障害。あるいは、精神障害がある。
正確な記述はこちらの引用。
対象労働者
次の[1]と[2]の両方に該当する者であること[1]継続雇用する労働者としての雇入れを希望している者であって、障害者トライアル雇用制度を理解した上で、障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している者
[2]障害者雇用促進法に規定する障害者のうち、次のア~エのいずれかに該当する者
ア紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する者
イ紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者
ウ紹介日前において離職している期間が6か月を超えている者
エ重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者
ここで重要な事の一つは、
精神障害を持つ人は、他の条件全部無視でいい。経験した仕事に就こうとしてても、離職を繰り返してなくても、仕事辞めて1ヶ月でもいい。
これは、社会の偏見なども考えた結果の条件なのでしょう。
「精神障害者って暴言吐いたり暴れたりするんでしょ?」みたいな、残念なイメージを持っている人は今も居ます。そしてもっと悲劇的なんですが実際にメンタル不安定を会社で起こして不適切発言するくらいまでは時折あるんです……。支援員が飛んでいってお詫び入れた事とかもあります……。
そんな人ばかりじゃないって?ちゃんと病状も寛解して就職訓練もしてる人も沢山居るって?
もちろんです。でも、人間は悪い方を考えるものです。だから、その不安を払拭するために、精神障害を持つ人に対しては利用条件が緩いわけです。同じく偏見もあるだろうし、実際就職が中々ハードル高いであろう重度身体障害、重度知的障害についても他条件を不問にしてるわけですね。
どうやって利用するの?
まず一番シンプルなのが、ハローワークの障害者求人を見て
「トライアル併用求人」と書いてある求人です。
他の表記もあるかと思いますがとにかく「トライアル」とか「短時間トライアル」とか書いてるはずです。
それから、特にそういう事を書いていない障害者求人に対して応募する時、あるいは内定した後の条件調整の時に「トライアル雇用しませんか?」って提案してみることです。
これを労働する本人から言うのはなかなか難しいと思うので、就労移行支援事業所などを利用していれば支援員に交渉をお願いするのがいいでしょう。
他にやる事ある?っていうと、あんまりないです。
この制度で手続きがめんどくさいのは、企業側だけです。
もちろん労働者側も「トライアル雇用って事でOKだよね」「期間終了後、本雇用されるとは限らないよ」みたいな書類へのサインは必要になるかと思いますが、その準備も企業がやる事です。
障害者トライアル雇用のメリットは?
労働者側のメリットとしては、とにかく無理なら辞めやすいということ。
それから、就労移行支援などの就労支援サービスを使っている場合、トライアル雇用期間は「就職」ではなく「まだ訓練中」として扱える(施設外支援と言います。まあこの辺の事務処理は支援員がやることなので……)という事です。
トライアル期間はだいたい3ヵ月から6ヵ月になりますが、その間サポートを受け相談しながら仕事ができるわけです。そして更に、就労支援サービスには基本、就職後も6ヵ月間職場定着の支援をするため、サポートを受けて働ける期間が延びます。
そしてこれは、実感はしにくいメリットですが「企業側にも安心感がある」という事です。つまり、「トライアル制度が使えるなら、ちょっと求人出してみるか」とか「トライアル制度を使えば支援員がガッチリ支援してくれる期間が長くなるのか」と思って、求人を出してくれているということ。
更に、つまりは、障害者トライアル雇用制度というものを理解してそれを使おうとする企業というのは、障害者雇用への知識をある程度持っているという事。つまりトライアル形式で求人が出てる事、トライアル制度を活用しようとしてくれること、それ自体がメリットとも言えるのです。
じゃあデメリットは?
これは、やはり「本雇用にならない可能性がある」ですね。
試用期間ってだいたい1か月、長くて3ヵ月ですが、特に精神障害者向けのトライアルは6ヵ月になりやすく、場合により1年まで延長したりもできる。(期間延長、企業側のメリットはあんまりないので珍しいとは思いますが)
それは支援を受けられる期間が長いというメリットでもありますが、「企業判断で本雇用しない事にできる期間が長い」ということでもある。
え、本雇用確約じゃないの?じゃあやだな、という考えが出てくるのも当然だとは思います。
ただ、先に書いたようにこの制度は「企業側の不安を払拭するため」という要素が強いものです。この制度に納得するかどうか、というところですね。
「トライアル併用求人」の場合、普通の雇用がいい!って交渉もできます。交渉が通るかどうかは企業側の判断にはなりますが。
まとめ
労働者側としては、障害者トライアル雇用求人だからと言って、そんなに違いはありません。
ただ、この企業はこの制度を知ってて活用しようとする、障害者系の制度を調べようとする企業なんだなーという安心は一定あるかと思います。
また、通ってる通所施設の支援員さんが手厚くて、なるべく長くその支援を受けたいという場合もおすすめできますね。
しかし、そこまで広く知られていない制度でもあるし、企業側の事務処理は割とめんどくさいようなので、やらない企業も多いかと思います。トライアル求人を選ぶとすごくいいよ!というわけでもない。
ご自分の考えと、そもそもトライアルかどうかだけでなくその求人自体に魅力があるかどうか、というところを考えつつ、知っておいて、求人を選ぶ条件の一つとして考えるといいのかな、と思います。
