1時間で足場図面はできた。それでも、安全の責任は軽くならない
昼前、知り合いの社長から、ビルの正面写真を足場図面と概算見積りへ変えられないかという、短い相談が突然私の手元へ届いたのである。私はChatGPT Workを開き、幅17メートル、高さ13メートルの画像を、白い作業画面の中央へ静かに置いて処理を始めた。それからわずか1時間後、3種類のDXFと2つのJSON、数量表までが、同じ作業フォルダの中へ静かに並び始めていたのだった。
画面は、もう完成した顔をしていた
会議を開いたわけでも、誰かへ外注したわけでもなく、61歳の一人会社が、その場で組み上げた小さなPoCである。少し出来すぎた画面を眺めながら、私は成功を喜ぶより先に、どこで止めるべきかをしばらく静かに考えていた。
仕事は速いほうがよく、1日かかる作業が1時間になる差は、小さな会社にとって数字以上に大きな意味を持つ。ただ、図面と数量がきれいに揃うほど、まだ途中の仕事が、もう完成した顔で静かにこちらをまっすぐ見つめてくる。長く開発に関わってきた私は、その整った顔をそのまま信じない癖だけは、今になってもなかなか抜けなかった。

図面より先に、戻り道をつくった
そこでAIには完成したDXFだけでなく、そこへ至る途中にある4つの成果物も、すべて同時に出力させた。完成品だけを受け取れば確かに速いが、途中が見えなければ、間違いを見つけても人は直す場所を正しく選べない。
最初に作ったのはOpenCVを呼び出し、写真の傾きや台形のゆがみを補正する画像解析プログラムだった。次に建物の幅や高さ、階の境界、開口部や障害物を記録するFacade JSONを、建物側の帳面として分けた。さらに足場のスパンや段数、階段、開口、部材配置を記すScaffold JSONを、足場側の帳面として作った。
4つの成果物が、1時間で並んだ
最後にScaffold JSONを読み、座標を計算して、ezdxfで編集可能なDXFを描く生成プログラムまで作った。画像から直接図面を起こさず、途中に人が手を入れられる場所を、最初からいくつも意識してあえて残しておいた。
0件のエラーが、安心にはならなかった
建物だけ、足場だけ、両方を重ねた3種類のDXFができ、補正画像や部材数量表も同じ場所へまとめて出力された。生成したDXFは再びプログラムで開き、単位やレイヤー、寸法合計、数量との一致まで1つずつ順番に調べた。監査結果は0件で、画面だけを見れば、1時間の仕事としては少し出来すぎていると自分でも感じるほどだった。


それでも私は完成とは書かず、単価表がなかったため、金額を埋めないまま数量表でいったん静かに手を止めた。地盤や敷地境界、庇の出幅、電線までの正確な距離は、正面写真の外側に答えのないまま静かに置かれていた。
幻覚は、完成図の手前に潜んでいる
幻覚が入り込むのはDXFだけではなく、その手前にあるコードや2つのJSONの中も、まったく同じである。画像補正が少しずれれば建物全体が傾き、Facade JSONの誤りは、そのまま次の足場計画へ渡っていく。Scaffold JSONが違えば数量まで狂い、描画プログラムのバグは、正しいデータさえ別の形にする。
速く作れた人ほど、止まる責任が残る
だから間違いが見つかっても、DXFの線を直接つまみ、見た目だけをその場で直すだけの運用にはしなかった。建物の情報ならFacade JSONへ戻り、足場の条件ならScaffold JSONへ戻って、人が中身を直す。
その後は座標計算、DXF生成、数量計算、検証を、同じルールでもう一度最初から順番どおりに走らせていく。1時間でここまで作れたことは、率直に言えば、長く開発をしてきた私自身にも少し驚くほどの速さだったと思う。
速く作れた人ほど、最後にどこで止め、誰が責任を引き受けるかを、より静かに深く問われるのかもしれない。
