ラスボスが、泣きそうになった夜
たまに行くガールズバーに、ラスボスみたいな雰囲気の女性がいた。
40代で美人。存在感がある。仲良しのキャストの子に「あの人は誰?」と尋ねたら、「この店のオーナーです」と教えてくれた。なるほど、と思った。
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ある夜、仲良しの子がこっそり打ち明けてくれた。
「私がここで働いている理由は、オーナーの人柄に惚れたからですよ」
忖度のない、何気ない一言だった。
この手の店でキャストが漏らす本音は、大抵が悪口だ。
でも、その子が何の屈託もなく言ったその言葉には、うそ偽りの無さがにじみ出ていた。
しばし飲んでいると、そのラスボスが、私の席にやって来た。
「いつもご来店ありがとうございます。ご一緒していいですか」と。
しばし雑談した流れで、キャストの子がポロっと漏らした言葉を伝えてみた。
オーナーは少し間を置いて、「泣きそう…」と言った。本当に目が潤んでいた。
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正直、意外だった。
この手の店のオーナーとキャストは、もっとドライな関係だと思っていた。雇う側と雇われる側、ビジネスライクな距離感。しかも親子ほど年が離れている。
でも、キャストが何気なく漏らした本音に、オーナーは涙ぐんだ。
「人柄に惚れる」ということの温かみを、少しだけ垣間見たような気がした。
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ラスボスみたいな雰囲気の人が、泣きそうになる。その落差が、なんだか微笑ましかった。
先入観というのは、たいてい現実より貧しいものだ。
