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熊を知る、100年前の教訓(北海道苫前町)

今年、全国各地で熊の出没数が過去最多を記録し、環境省の発表によると上半期だけで2万件と、昨年1年の出没件数を超え過去最多となった。
街中での被害も後を絶たず、特に東北地方では深刻な状況となっている。
被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。
連日報道されるニュースに不安を覚えている方も少なくないと思うが冷静な対応と対策によって被害を最小限に抑えられると思う。今回は100年前実際にあった事件を考察し、熊と人の共存について考えてみる。

事件の経緯

北海道苫前村三毛別(現苫前町三渓)で7名が犠牲となるヒグマによる襲撃事件が起きた。
当時の三毛別村は230人ほどの集落で主にじゃがいもや豆類を収穫する農村であった。

大正15年11月、納屋に保管されていたトウキビが食い荒らされており、村人は近くに熊がいる脅威を感じ始めた。
最初の襲撃は12月9日、村民の内縁の妻と養子に迎える予定だった6歳の男子が襲われた。男子はその場で死亡、妻の姿は毛髪と衣服の一部を残し行方不明となった。
翌日、村民による捜索隊が結成され木の根元にある妻の足を発見した。
同日夜、持ち帰った足と男子の遺体をもって葬儀が実施されたが葬儀の最中に熊が現れ、棺桶を荒らされるなどの被害があった。幸い人的被害はなかったが葬儀が行われた家から500メートルほど先の家に避難していた参列者とその家の住人が再び襲われ、胎児を含め5人の命が奪われた。

体長2メートル70センチ、体重は380キロを超える巨体だった

12月という時期は農閑期なので多くの男性は出稼ぎに出ており、犠牲になったのは主に女性や子供だった。
翌々日、事態を知った警察は討伐隊の組織を結成し三毛別に向かった。何度か熊と遭遇するも駆除には至らず、旭川にある陸軍の投入も検討されたが、警察と共に行動していた熟練のマタギが経験と感を頼りに射程に捉え、心臓に一発、頭部に一発の銃弾を撃ち込み、事件はようやく収束した。

市街中心から葛折の坂道を登ったところが現場。慰霊塔が建っている。

当時の北海道開拓は政府主導で進められ、十分な準備や知識がないまま入植した人々が多かったことが事件の遠因の一つと言われている。

事件から得られる教訓


□熊は一度手に入れた獲物を守ろうとする本能がある
最初に襲われた女性の足を持ち帰ったことで、熊はそれを自身の食糧と認識し、取り戻すために葬儀式場に現れたと考えられる。このことから熊のテリトリー内で不用意に獲物を放置することはさらなる襲撃を招く危険性がある。
□熊は本来は臆病な動物である
時に鹿などの野生動物を捕食するが普段は木の実を好んで食べる。しかし一度人間を襲ってその味を覚えると再び人を襲う可能性が高まる。
□開拓域と熊のテリトリーの折衝
当時三毛別には15戸ほどの集落があったが、これが熊の生息域とラップした可能性がある。当時は熊の生息域についても十分な調査がされていないまま集落が出来上がったと思われる。
□対策の不備
開拓民の多くは内地からの入植者で、北海道固有種であるヒグマに対する知識や銃器などの装備も不十分であった。

現代の被害との比較と対策


□温暖化と里山の荒廃
近年、地球温暖化の影響でドングリなどの木の実の不作が頻発しており、熊が餌を求めて人里に下りてくるケースが増加している。また過疎化や高齢化による里山の後輩により熊の生息域と人間の生活圏が近接し遭遇の機会が増えている。
事件が発生したのは12月で、熊は冬眠に入る時期であったが、当該の個体は「穴持たず」と言われる冬眠しそびれた個体と思われる。
昨今の熊被害は温暖化の影響か熊の冬眠時期が遅れているのも要因かと考える。
□行政の取り組みと情報共有
個体数管理のための狩猟許可制度だけでなく、リアルタイム出没状況発信アプリ、捕獲と駆除の意味の理解など共有し注意喚起を行う、また熊と人の生息域を緩衝する地帯のゾーニングや電気柵の設置補助などに加え個人が取り組める熊よけ鈴や撃退スプレーの配布も検討すべき。

幸い私は野生の熊とは遭遇したことはないが、つい先日も以前住んでいた家の近所に現れたとの映像が流れており、決して他人事ではないと思うようになった。
熊は基本的にはおとなしい動物だが、遭遇した際に驚いてパニックになるとその巨体ゆえに思わぬ事故につながる可能性がある。
人と熊が共存するためには、まず私たちが熊の生態を理解し、適切な対策を講じることが不可欠である。具体的には出没状況を常に確認し、不用意に山に立ち入らない、入山する際は熊よけ鈴などを携行する、ゴミを適切に処理して熊を誘引しないといった行動を一人ひとりが心がける必要がある。

この事件は北海道の知人に聞いて知ったものです。
これ読んでみ、と言われた参考文献はこちら↓








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