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週3日営業でも大人気。コッペパン専門店を7年営む1児のママにサステナブルな働き方を聞いてみた

「仕事も育児も全力でがんばりたい」そう思いつつも、現実では時間に追われ、「やりたいこと」を後回しにしている方は多いのではないでしょうか。

東京都多摩市でコッペパン専門店『apricot(アプリコット)』を7年営む女性オーナー 山田夏紀さん(以下:夏紀さん)は、無理なくやりたい仕事を続けるために「週3日営業」でお店を切り盛りする1児のお母さん。

コロナ禍や妊娠・出産を乗り越えてもなお、毎朝4時半起きで経営を続ける夏紀さんには、「生きているうちにやりたいことをやろう」「後悔したくない」という強い想いがあると言います。

今回はそんな夏紀さんに、「サステナブルな働き方」をテーマにお話を伺いました。ワーキングマザー・ファザーはもちろん、仕事も趣味も自分らしく楽しみたいすべての人に役立つヒントをお届けします。


山田夏紀さん
1989年生まれ、八王子市在住。東京都多摩市に生まれ育ち、2018年4月地元多摩市南野に、コッペパン専門店『apricot(アプリコット)』をオープン。コロナ禍や出産・育休を乗り越え、週3日営業でも連日売り切れの人気店へ。1児の母。休日の趣味はパン屋さん巡り。
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がん検診を機に日本一周旅行へ。コッペパン専門店『アプリコット』開店までの道のり

——私も『アプリコット』のコッペパンが大好きでよく通っています!開業のきっかけは、日本一周自転車旅とのことですが、動機は何だったのでしょう?

夏紀さん:
23歳で受けた健康診断で、がんの疑いがあるとわかりました。限りある自分の人生を考えてみたときに、「やりたいと思ったことはやる人生にしたい」と思い立ったんです。がん検診から3年後に仕事を退職して、「いつか挑戦してみたい」と周りにも公言していた日本一周へ出かけることを決意しました。

旅先では手軽に買えて持ち運びができるパンの魅力を再発見して。もともとパンは好きでしたが、旅が終わったら何しよう?と考えたときに自然と「パン屋さんをやりたい」と思いました。

——「やりたいことをやる」決心と「パンが好き」な想いが開業へとつながったんですね。

夏紀さん:
そうですね。それに、今のアプリコットがある場所は、生前の祖父がコンビニ経営をしていた場所なんです。跡地が何年もそのままになっていたのも気がかりだったんですよね。『アプリコット』の店名も、祖父のコンビニ店から引き継いでいます。

それに加えて、パンに挟むもの次第で食事にもおやつにもなる「コッペパン専門店」があれば地元の人にも喜ばれるのでは?と思ったのも開業のきっかけです。

——お祖父様の想いも一緒に引き継がれているのですね。とはいえ、お店を一からはじめるのは大変ではなかったですか?

夏紀さん:
当初はひとりで営業するつもりでいたのですが、いざ開店準備を進めると、パン作りから調理、接客までひとりではとても手が回らなくて…。

開店に向けて、家族をどんどん巻き込む形になりました。母も姉も祖父のお店の跡地が気になっていたこともあり、「いいね!パン屋やってみよう!」と前向きに協力してくれて。

現在は父も加わり、家族4人でお店を経営しています。バスの運転手を早期退職した父は接客担当。コンビニ店時代からお店に立っていた母は、コッペパンにサンドするおかずの調理担当。主婦歴も長く料理上手なので助かっています。調理師免許を持つ姉は、調理・衛生管理の面でとても心強い存在です。

家族の協力なくては『アプリコット』は続けて来られなかったので、本当に感謝ですね。


育児と仕事の両立の難しさを痛感した産休明けの再オープン日

——開店からしばらくしてコロナ禍に入りましたが、日本テレビ『news every.』出演がきっかけで大人気店になりましたね。当時のお話を詳しくお聞かせいただけますか。

夏紀さん:
アプリコットが家族経営かつ祖父のコンビニ跡地で、地元に根付いたお店ということで、取り上げていただきました。TV放送直後から問い合わせが殺到し、翌日にはお客さんが列を作って開店を待ってくれていて。それからはもう、100%コッペパンに力を注ぎ、ひたすら焼き続ける日々でしたね。

TV出演がきっかけで、コンビニ時代には高校生だったお客さんが大人になり、お子さんを連れて来てくれたときは感激でしたね。一晩でこんなに状況がガラっと変わるなんて「テレビってすごい!」と驚きましたし、当時のことは今でも鮮明に思い出せます。

——大人気のなか夏紀さんの産休で、開店後初めての長期休業に入ります。前例のないなか、産休のタイミングは悩みましたか?

夏紀さん:
そうですね。家族と話し合い「体を第一に考えて、出産予定日の2ヶ月前には休もう」と産休のタイミングを決めました。私もはじめての妊娠・出産で不安でしたし、当時はいつお店を再開するかなんて考える余裕はありませんでしたね。

でも、いざ産休に入ると「お客さんが離れてしまうのでは」という不安が頭から離れなかったです。「早くお店を開けたい」と焦りが募るばかりで、結局、子どもの保育園が決まった産後約1年で復帰しました。4月の入園だったので、まずは数ヶ月前から週1回程度で営業を再開しようと。

——再オープンの朝、再開を待ちわびたお客さんたちが早朝から行列を作っていたそうですね!当時の心境はいかがでしたか。

夏紀さん:
実は、この日に限って子どもが発熱してしまい、私は店頭に立つことは叶わなかったんです…。「まさか再オープン日に熱が出るなんて」と正直思いましたし、「子育てしながらお店を続けるのって想像よりも大変なのかもしれない」と痛感しました。悔しい気持ちがありつつも、お店のことは父・母・姉に任せるほかなかったですね。

子どもと病院に行った帰りに、どうしてもお店の様子が気になって、車でお店の様子を見に行ったんです。外をぐるっと一周したら、すごい行列ができていて…。1年間再開を待ってくれていたお客さんがこんなにいてくれたのだとうれしい反面、その場に居られない歯痒さは忘れられないです。

ただ、「これからは家族に任せながらでも続けていくぞ」という、新たな決意の後押しにもなりました。


今は、週3日営業がちょうどいい。無理のないワークライフバランスでサステナブルに働く

——お子さんがいると以前と同じように働くのはなかなか難しいですよね。再オープンにあたり、営業スタイルに変化はあったのでしょうか?

夏紀さん:
出産前は「できることは自分で!」と思っていたのですが、守るべきものが増えたときに、今は家族に素直に甘えさせてもらおうと思えました。もともとコッペパンを焼くのは私の役割でしたが、再オープン後は姉にお願いしています深夜1時に起きて準備してくれている姉には感謝しかないです。

——お子さんができたからこそ、働き方を見直されたんですね。アプリコットは「週3日営業」スタイルかと思いますが、現在のワークライフバランスはいかがですか。

夏紀さん:
ワークライフバランスは「ちょうどいい」ですね。余白があると、急な子どもの発熱にも対応できますし、気持ちにも余裕が生まれます。一緒に働く家族にも、土日は必ずお休みしてもらっていますよ。

もちろん、売り上げを考えると営業日を増やしたい気持ちもありますが、これから子どもが成長して手が離れたときに、営業スタイルを変えればいいかなと。今大切なのは、長期的に無理なく働き続けることだと思っています。

——すてきですね!無理なくサステナブルに働いていくために、夏紀さんがとくに意識されていることはありますか?

夏紀さん:
「無理をせず人に頼る」ことが何より大切だと思います。あとはしっかり息抜きする時間を取ることですね。

最近は、早起きしてドラマを1本観ながらひとりでもくもくと洗濯物をたたむ静かなひとときが、ひそかな息抜きです。

休日は夫に家のことをお任せして、ひとり時間を満喫させてもらうこともあります。“行きたいパン屋さんリスト”があるので、「ここ行った!おいしかった!」とスタンプラリーみたいに記録して、何度も見返しては楽しんでいます。

「やりたい」と「できる」のバランスで細く長く働き続けたい

——「好き=パン」を仕事にして、夢を叶えた夏紀さん。お店をやっていてよかったと思うのはどんな瞬間ですか?

夏紀さん:
自分たちの作ったコッペパンを味見して、心から「おいしい!」と思えたとき。「大丈夫!」と自信を持ってコッペパンを提供できることが、お店をやっていてよかったと思う瞬間ですね。

——最後にアプリコットのモットーと、夏紀さんの今後の目標を教えてください。

夏紀さん:
「細く長く」経営を続けていくことがアプリコットのモットーです。

週3日の営業スタイルもそうですが、何事も「やりたい=理想」と「できる=現実」のバランスを大切にしています。

お客さまから「こういうパンが食べたい」とリクエストをもらうこともありますが、そういうときも「無理なく続けられるか」を考えるようにしていますね。家族と相談しながら「これならできるよね」を形にしています。

私個人としては、いつか世界中を旅して、自分の五感で世界を感じたいですね。というのも、「やりたいことをやるのに年齢は関係ない!」を体現している方に感銘を受けたんです。その方は日本一周中に出会った方で、70代になってから世界一周旅行を実現していて。

私も年齢を理由にせず、やりたいことを叶えて、年を重ねていきたいです。

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病気をきっかけに人生を見つめ直し、「生きているうちにやりたいことをやろう」と覚悟を決めた、夏紀さん。お祖父様の想いを引き継いでアプリコットを復活させ、サステナブルな経営を続けています。

お話を伺うなかで、臨機応変に周りに任せる柔軟さ、ご家族の絆、「やりたい=理想」と「できる=現実」のバランスを取ってしなやかに働く姿勢が印象的でした。

子育て中の方も、心に実現したい夢がある方も、夏紀さんのリアルな働き方がひとつの道標になるはずです。さっそく今日から、この先の人生をどう過ごしたいか一緒に見つめ直してみませんか。

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老若男女に親しまれる定番メニューと、旬の食材を取り入れた季節限定メニューが人気のコッペパン専門店『アプリコット』。

地域の憩いの場として多摩市にお住まいの方はもちろん、遠方から訪れるファンもいるほど。売り切れ次第終了の営業スタイルで、食品ロス削減にも取り組んでいます。

多摩市にお立ち寄りの際はぜひ一度、訪れてみてください。

※2025年11月の期間限定メニュー

コッペパン専門店『apricot(アプリコット)』
住所:〒206-0032 東京都多摩市南野2丁目3−9 コーポM
営業日:不定休、9時~売り切れ次第終了
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公開時点での情報のため、変更になる場合がございます

〈取材・文・撮影=小嶋絵美/編集=はせがわみきいしかわゆき

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