ベトナム公演まで24日:7つの滝と、ソロの神様
東伊豆の旅、2日目。
まずは近場で「朝市」があるというので、みんなで出かけてみた。
漁港にある道の駅のような施設と並んで、週末などに開催されるという市には、思いのほか、多くの観光客が訪れていた。
おいしそうな土産物としては、干物が多い。
どれも買いたいが、町の家では干物一つ焼くにもなにかと気を使うので、面倒なんだよな⋯⋯
無難に、やきのりをいくつか購入。
これもおいしいはず。
朝市をのんびり楽しんだあとは、いざ、昨日行きそこねた滝へ、ということで走り出したのだが。
途中、ペーターが興味を示し、いきなり車を停めた。
以前から気になっていたという、地元で伝統として継がれてきた、お雛様の「つるし飾り」のお店へ。

店主が親切に、飾りの意味や由来などを解説してくれる。
見るからに外国人であるペーターが、結構日本文化に詳しい感じで質問を返すのが嬉しかったらしく、店主の語り口調に熱がこもり、話が弾む。
楽しくお話が聞けて、結局、全員がそれぞれ気に入ったものを購入した。
私は、母が好きそうだと思った二品を選択。
次回の帰省の手土産にしよう。

解説によると、うさぎは神様の使いで、人間の願いを長い耳で受け止め、神様のところまで飛んで届けてくれるのだという。
豆は、「まめまめしい」などのよい意味があり、健康に過ごせる縁起ものだとのこと。
と、お店の人は言っていたし、どちらも聞いたことのある説だから本当なのだろうけれど。
これ結局、どちらも子沢山の象徴だよね。
雛祭りの飾りだから、伝統的にはそう言う要素はあるだろうと思う。
母親への土産としてどうなのかとチラッと思いはしたが、まあいいや。
子に恵まれてるのは間違いないだろ(?)。
店主のお話をお腹いっぱい楽しませてもらって、私としてはもう引き返してもいいくらいの充実を感じてはいたが、当初の目的通り「河津七滝めぐり」へ。
「ちょっと滝があるらしいから見に行ってみる?」
くらいの軽い気持ちでいたのだが、思ったより人が多くて驚いた。
例の、川端康成の小説でも舞台になったのかな? 銅像があり(訪れた観光客たちがその価値を認めていたかどうかはやや疑わしい)、入口周辺は蕎麦屋や土産物屋などいくつもあって、ちょっとした観光地としてこしらえられてはいた。

ただ、その実態は、片道約1時間の、かなりガッツリしたハイキングコース。
めちゃくちゃ歩いたし、階段を登った。









スマホがパンクするほど写真をとりながら、ふと気づく。
私はどうやら、山道の風景が好きらしい。
多分、川も好きだ。
以前、「砂の女」の決起集会か何かだったと思うが、みんなでどこかの山に登ったときも、ひたすら写真を撮りまくっていた。
普段は別に、何を撮ることもない。プロレスやなんかを見に行っても、体験を重視する思いが強く、スマホを構えることはめったにしない(このブログを始めてからは多少意識していろいろ撮ってはいるが)。
にも関わらず、こういうときはテンションが上がるようだ。
小説で描くシチュエーションとして、参考になると考えているのかもしれない。
なにしろ堪能した。
連れてきてくれたペーターや、同行してくれた容子さん、まなみさんには感謝である。
つるし飾りのお店で引き返さなくて良かった⋯⋯!
帰り道。
また、道の駅のようなところに立ち寄って、女性陣がわさびソフトクリームなどを食している間、私はこれからどうするかを考えていた。
一旦別荘に戻り、夜にみんなと車で帰るか。
駅で降ろしてもらって、一人旅に移行するか。
(ペーターは3日に勤め先で会議があるため、もともと一泊の予定)
そもそも、今回の旅は5人になる予定だった。
ペーターの車に5人詰めで東京―東伊豆3時間ドライブはしんどいだろうということで、一番かさばる誰より自由を愛する私が電車で帰るという話になっていた。
それはそれで、3日は風の向くままどこへ行こうと、私は楽しみにしていたのである。
ただ、結局、一人が来られなくなって、車の問題がなくなった。
また、私自身、こちらへ来る途中、都心部の連休の人混みで辟易させられ、いまいち一人旅へのモチベが落ちていた。
さらに、七滝が思いのほか充実したスポットだったため、みんな心身ともに「今日はもういいよね」という気分になりつつあった。
だから、このままみんなといっしょに行動でもいいのではないか? という選択肢がかなり有力なものになっていたのである。
だが、なんだろう。
私の中に、それでも離脱したい欲求がうずうずしていた。
別に、ペーターのことが嫌いなわけでも、容子さんまなみさんから離れたいと強く願っているわけでもない(⋯⋯)。
実際に、この一泊二日は純粋に楽しかったし、別荘も伊豆の地も過ごしやすいし、嫌なことはまったくなかった。
予定や、特別行きたい場所があるわけではないし、一人旅でなければ実現できないことがあると説明できるものなど何もない。
だから、このままみんなで夜まで過ごして東京に帰って、明日は明日で好きに過ごせばそれでいいだけの話だと、論理的にはほぼ結論が出ていた。
だが、なんだろう。
なんか、迷いが晴れない。
もやもやする。
そんなふうにして、道の駅の土産物(わさび〇〇とか、わさび△△とか、わさび□□とか)を見るともなく見て回り、うろうろもだもだしていたのだが。
その時、突如〝ソロの神様〟が顕現した。

でも…」

これだ。
キャンプではないが。
私はやっぱり、好きなのだ。
一人で動き回るのが。
それだけのことだ。
理屈で理由なんてつけなくても、証明なんてしなくてもいい。
好きなんだから、そうすればいい。
思えばハロウィンからこっち、「みんなといる楽しさ」を満喫してきた。
それはいずれもハッピーな時間だったが、私にとってどこか不自然な状態でもあったのだと思う。
せっかくの休みだ、好きにしよう。
少なくともペーターは、この状況で私に我慢を強いるような、そういう関係性ではない。
よし、分かった。
そんなわけで、私はここで離脱。
再び踊り子号に乗って、このあとどうするのかも考えず、とりあえず神奈川・東京方面へ向けて走り出した。
