ビジネスモデルを成功させる4要因
ビジネススクールに通っていた15年ほど前、ハーバード・ビジネス・レビューで目にした「ビジネスモデルの4要素」という考え方があります。
様々な経営理論やフレームワークがありますが、今振り返ってみても、ビジネスの本質はこの4つに集約されているように感じます。
優れた製品は、いずれ競合に模倣される可能性があります。しかし、ビジネスモデル全体の仕組みは簡単には真似できません。
今回は、持続的に利益を生み出す企業に共通する4つの要素について整理してみたいと思います。
ビジネスモデルを構成する4要素
成功するビジネスモデルは、次の4つの要素で構成されています。
1.顧客価値の提供(CVP:Customer Value Proposition)
2.利益方程式(Profit Formula)
3.カギとなる経営資源(Key Resources)
4.カギとなるプロセス(Key Processes)

重要なのは、それぞれを個別に最適化することではなく、4つが連動して機能していることです。
1.顧客価値の提供(CVP)
まず重要なのは、「誰の、どんな課題を、どのように解決するのか」という顧客への提供価値(CVP)です。
そのためには、顧客を深く理解する必要があります。
マーケティングでよく使われる言葉に、
「顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい」
というものがあります。
さらに言えば、顧客が欲しいのは穴そのものではありません。壁に絵を飾りたいという目的を達成したいのです。
つまり顧客は製品そのものではなく、「目的達成」という結果を買っています。
強い企業ほど、自社製品の機能を語るのではなく、顧客が本当に解決したい課題に焦点を当てています。
2.利益方程式(Profit Formula)
どれだけ素晴らしい価値を提供していても、利益が出なければ事業は継続できません。
そこで必要になるのが利益方程式です。
利益方程式は主に次の4つで構成されます。
(1) 収益モデル(売上)
(2) コスト構造(原価)
(3) 利益率(売上-原価-販管費)
(4) 資源回転率(投下資本回転率)
起業や新規事業の失敗事例を見ると、「やりたいこと」や「提供したい価値」ばかりに目が向き、利益方程式の設計が後回しになっているケースが少なくありません。
特に見落とされがちなのが、資源回転率です。
同じ利益率でも、在庫回転率や設備稼働率、投下資本回転率が高ければ、企業はより大きな利益を生み出すことができます。
利益は結果ではありません。
利益は、事前に設計されるべきものなのです。
3.カギとなる経営資源(Key Resources)
CVPと利益方程式を実現するために必要となるのが経営資源です。
例えば、
・人材
・技術
・ブランド
・設備
・情報
・販売チャネル
・パートナーシップ
などがあります。
ただし、VRIO分析でも語られるように、本当に重要なのは量ではなく「模倣困難性」です。
例えば、
・長年蓄積された技術ノウハウ
・強力なブランド
・独自の販売ネットワーク
・膨大な顧客データ
などは、競合が簡単には真似できません。
経営資源そのものに価値があるのではなく、それが競争優位の源泉となるかどうかが重要なのです。
4.カギとなるプロセス(Key Processes)
最後は、企業が価値提供を継続的に実行するための仕組みです。
例えば、
・商品開発
・調達
・製造
・マーケティング
・採用
・人材育成
・ITシステム
などが該当します。
経営学の言葉で言えば、バリューチェーンそのものです。
創業期は、優秀な人材の属人的な努力によって成長することができます。
しかし、事業規模が大きくなると、それだけでは限界が訪れます。
ベンチャー企業のままで終わる会社と、サイバーエージェントのように大規模な組織へと成長し続ける会社との差は、このプロセス構築力にあるのだと思います。
個人の経験や勘に依存していたものを仕組みに変えられるかどうか。
ここに企業の成長余地が表れます。
なぜ模倣が難しいのか
ビジネスモデルの面白いところは、これら4つの要素が独立して存在しているわけではなく、相互に依存している点です。
例えばターゲット顧客が変われば、必要な経営資源も変わります。
経営資源が変われば、業務プロセスも変わります。
そして、それらが変われば利益方程式も変わります。
つまり、ビジネスモデルとは一つのシステムなのです。
競合が製品だけを真似しても成功できないのは、このシステム全体を再現できないからです。
永続的な競争優位性とは、まさにこの模倣困難なシステムそのものなのだと思います。
まとめ
企業戦略というと、新製品や新規事業ばかりに目が向きがちです。
しかし本当に重要なのは、製品そのものではなく、それを支えるビジネスモデルの構造です。
成功する企業は、
・顧客価値(CVP)
・利益方程式
・経営資源
・プロセス
の4つを整合的に設計し、それぞれが相互に補完し合うことで競争優位を築いています。
100年以上続く日本企業の中で働いていると、日々の業務の中では組織の課題や非効率ばかりが目につくこともあります。
しかし、100年にわたって事業を継続できているという事実そのものが、この4つの要素を機能させる仕組みを構築してきた証でもあります。
企業分析においても、仕事においても、目の前の製品や業務だけを見るのではなく、その背後にあるビジネスモデル全体を俯瞰して見る視点を持ち続けたいものです。
そんなことを改めて考えた週末でした。
おわり
