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hoshilaumi
掌編小説|冷めたお茶 (朗読可)
概要
▷文字数約 370文字|朗読時間目安1〜2分
話すことが癒しになるとは限らない。むしろ言葉にした瞬間に、壊れてしまうこともある。だから、沈黙は時に何かを守るための癒しだと思います。
あらすじ
母との何気ない会話のなかで、ひとつの過去を思い出す。
冷めたお茶
「だから言ったでしょ」
お茶を淹れながら母が言った。
テレビでは昔の出来事を振り返っている。
誰かにとっては、まだ終わっていない出来事だ。
「行かなくてよかったのよ」
そうかもしれない。
当時、母は反対していた。
勝手に話を進めたのは叔母だった。
知らぬところで話が進んでいて、
気づいたら終わっていた。
その結果が今なら、
たしかに
運はよかったのかもしれない。
母はテレビから目を離さない。
僕は頷く。
否定する理由もない。
今、
「でも、似たようなことはあったよ」
と言ったら、どうなるだろう。
母は黙るだろう。
思うよりずっと長く。
その沈黙を想像できてしまうから言わない。
きっともう僕は、誰にも言わない。
テレビでは誰かが泣いている。
母は眉をひそめる。
僕は冷めたお茶を飲む。
いつもより、少し苦い。
苦いまま飲み込むのは
昔から得意だ。
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